社会福祉法人ほっと福祉記念会(福島県郡山市)

福島県内の施設とのコラボによって新製品を生み出した「Sweet hot」

ほっと福祉記念会の概要

ほっと福祉記念会は、福島県郡山市内におけるさまざな分野(児童・障がい者・高齢者)の福祉サービス事業を展開する社会福祉法人である。「人と人をつなぐ架け橋を創造する」のが法人理念であり、ほっと(あたたかい心、新しい感覚)な想いを地域の中に注ぎ続けることを目指して活動している。

障がい部門では、アクティブ東山(就労継続支援B型事業)、Sweet hot(就労継続支援A型事業)、からふる(就労移行支援事業/生活訓練事業)、からふる+(生活介護事業)、ふっとわーく(就業・生活支援センター/相談支援事業)、楽(グループホーム)などの事業所がある。

ほっと福祉記念会を代表する障がい者就労系事業所が、就労継続支援A型事業所のSweet hotだろう。郡山駅から車で五分程度の道路沿いに建っているオシャレなカフェレストランであり、「福祉色」を廃した店舗として関係者の間では評価が高い。地域からも「美味しいランチやスイーツとコーヒー」を求めて、毎日多くの人たちが店にやってくる。まさに町のホットステーションとなっているのである。

  • ほっと福祉記念会 ファッサード
  • 「ほっと」な福祉サービス事業を展開

地域の人たちが気軽に立ち寄れるカフェレストラン

Sweet hotがオープンしたのは、2008年のことである。障害者自立支援法に基づく新体系への移行の際に、アクティブ東山の菓子製造部門がA型事業所のカフェレストランとして独立することになった。岡部早苗所長(41歳)は、店の方針を次のように語っている。

「とにかく『福祉』っぽくない店をモットーに立ち上げました。客席のテーブルやソファ、陳列棚、厨房の様子がガラス越しに見ることができるオープンキッチンなど、当時の常識では考えられない発想をたくさん盛り込んでいます。今では全国にたくさん素敵な障がい者施設のレストランがオープンするようになりましたけど、福島県内ではとても斬新な店として多くの方から注目していただきました」

岡部さんの考えた店のコンセプトは、4つのキーワードに集約されている。一つ目が、「ホット」。これは、法人の理念でもある「あたたかい心、新しい感覚」のことである。次に、「エンジョイ」。仕事を楽しく、お客さんも楽しくなるような空間作りをめざす。三つ目は、「ナチュラル」。メンバーたちによる自然体のおもてなしを指している。そして最後が、「リアルライフ」。店を地域コミュニティの場とし、地域に福祉情報を発信するという考え方である。

Sweet hotでくつろぐお客さんたちの姿を見ていると、アットホームな店の雰囲気を満喫していることが理解できる。

「私は、この店の大ファンなの。店員さんたちの独特のムードが心を癒やしてくれるので、時間があるとつい遊びに来たくなっちゃうのよ(笑)。コーヒーもスイーツもとっても美味しいしね」とにこやかに話してくれる年配の女性。「小さい子どもたちを連れてきても周りに気を使わないですむのがいいですね。子どもたちもこの店のピザが大好きなのですよ」と語ってくれる親子連れ。多くの人にとって、この店は地域の大切な拠点となっているようだ。

アロマワークショップ、絵本の読み書かせ、裁縫教室など、さまざまなイベントも定期的に開催されている。こうした企画の多くは、店を訪れたお客さんと岡部さんとの会話の中から生まれていくという。取材当日は、午後から20名定員のアロマワークショップが開催されることになっていて、店内はその準備に追われていた。

  • カフェレストラン「Sweet hot」調理作業風景
  • 福祉っぽくない店を目指した店内

復興支援のプロジェクトに、次々参加

地域とのより深いつながりを求める岡部さんは、東日本大震災以降増えている各種の「復興支援プロジェクト」への参加にも積極的だ。その中でも代表的なのは、AAR Japan(NPO法人難民を助ける会)が主催した「売れるお弁当作り」プロジェクトだろう。人気料理研究家である浜内千波さんが、岩手・宮城・福島の東北三県にある障がい者事業所を対象とした料理教室を開催。そこで学んだレシピをもとにして、Sweet hotでは「25box(にこボックス)」と名付けた塩分控えめのヘルシー&美味しいお弁当を開発して発売することになった。25種類の食材を、素材の味がもっとも感じられるという1%の塩分で調理したオリジナル弁当である。

「浜内先生は実際に何度かこちらまで足を運んでいただいて、具体的な調理法を手取り足取り教えてくださいました。とっても忙しい方なのに、障がいのあるメンバーと一緒になって指導してくださる姿に感激しましたね。福島県は震災による被害も大きかったのですけど、震災がなければあり得なかった出会いもたくさんありました。浜内先生は、その代表的な一人。味付けは感覚でなくて、理屈で覚えなさい。つねに同じ味が提供できるように、調味料の計量はきっちりと行いなさい。そんなことを繰り返し教えてもらいました。これからも、先生の教えを大切に守っていきたいと思います」

と、岡部さん。1日10食限定のお弁当は人気料理研究家・浜内千波が監修したということもあり、毎日あっという間に売り切れてしまう。弁当をきっかけにして、カフェレストランSweet hotのことを知る人も多いという。浜内さんの紹介によって、週刊誌「女性自身」のカラーグラビア「至福のお取り寄せ」にクッキーセットが掲載されるなど、メディアへの露出が増えると通信販売などでの売り上げも今後はますます期待がもてそうだ。

  • 女性自身の至福のお取り寄せで紹介されたクッキー
  • カフェレストラン「Sweet hot」のコーヒー

Hibicaプロジェクトでは、福島県内の施設とコラボ

日本セルプセンターが主体的に動いているHibicaプロジェクトにも、もちろんSweet hotは関わっている。被災地緊急支援事業の一環として、2014年10月〜11月に東北三県の施設を対象に開催された「商品販売力向上研修会」に参加したところ、菓子部門の監修として参加してくれたショコラティエ・野口和男氏にその製菓技術が高く評価された。その結果、同じ福島県内の工房ひろせとのコラボ企画を持ちかけられたのである。岡部さんは言う。

「野口シェフは、工房ひろせさんのポン菓子にチョコレートをコーティングするというアイデアを思いついたのですが、ある程度の製菓技術がないと製品化は実現できません。そこで私たちが、その大役を担うことになったのです。日本を代表するショコラティエに技術指導してもらえるなんて、滅多にないチャンス。本当に貴重な体験になりました。障がい者メンバーも、新しい取り組みに目を輝かせていましたね」

  • コラボ製品 ポン菓子のロッシェ
  • 「ポン菓子のロッシェ」製造風景

完成したのが、「ポン菓子のロッシェ」である。福島県内の2施設「工房ひろせとSweet hot」によるコラボ製品だ。パフパフのポン菓子と、サクサクのクッキーをチョコレートで合わせた一口サイズの高級菓子。もちろんポン菓子に使われているのは、放射能検査で安全が確認された福島産のコシヒカリである。この商品には、風評被害の続く福島県産の作物を少しでもイメージアップさせたいという願いも込められている。

岡部さんは、今後の夢としてチョコレート事業も展開したいと語っている。

「せっかく教えてもらった一流の技術です。『ポン菓子のロッシェ』だけでなく、私たち独自の商品づくりにも、積極的にチョコレートを取り入れていきたいですね。バレンタインシーズンにはオリジナルショコラを販売してみたいですし。カフェとは別に、お菓子の専門工場ができるように頑張りたいと思います」

その夢が実現したときには、郡山にまた一つ新しい名物スイーツが誕生するのかもしれない。Hibicaプロジェクトの参加施設としてはもちろんのこと、優れた食品事業を展開する就労継続支援A型事業所としても、Sweet hotの今後の発展に期待したい。

(写真・文/戸原一男)

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。