社会福祉法人宮城県身体障害者福祉協会(宮城県仙台市)

オリジナル製品七夕ストラップの成功が事業を変えつつある「第二啓生園」

三つの柱で事業を組立

宮城県身体障害者福祉協会は、啓生園(生活介護事業・施設入所支援事業・短期入所事業)、第二啓生園(就労継続支援B型事業)、杏友園(生活介護事業・施設入所支援事業・短期入所事業)、不忘園(生活介護事業・施設入所支援事業・短期入所事業)、オアシス(障害者相談支援事業)等の障害者支援事業を経営する社会福祉法人である。この他、宮城県障害者福祉センター、宮城県障害者総合体育センター、幸町ウェルフェア温水プールなどの福祉施設も行政から管理運営を委託されている。

第二啓生園は、法人内における唯一の就労系施設である。作業は、印刷班とオリジナル製品包装箱折班の二つに分かれている。売上数字の大半を占めるのは印刷であり、古くから事業の根幹を支えてきたのだが、昨今の印刷不況によって近年では事業バランスの見直しを余儀なくされている。高齢化・重度化が進む利用者の多くが作業に参加できる箱折りや、アイデア次第で可能性がいくらでも広がるオリジナル製品の開発に力が注がれているのである。

第二啓生園 ファッサード

印刷事業のウリは、特殊な点字印刷

もちろん現在でも、印刷事業は第二啓生園の年間売上の約80%を占めるメイン事業だ。名刺、案内状、冊子、記念誌など、多様な印刷物を手がけ、文字入力からデザイン、印刷、製本までを一貫しておこなう丁寧な仕事ぶりは、ユーザーからも高く評価されてきた。しかしここ十数年の間におこっているデジタル革命の波は、第二啓生園のような小規模印刷業者の仕事を一挙に奪いつつある。高度なカラー印刷や大部数のチラシ・冊子等の印刷物以外は、オフィスのプリンターで十分対応できるようになってしまったからだ。

第二啓生園のサービス管理責任者・寺澤洋さんは次のように語っている。

「大規模な印刷機を保有していないので、メインの仕事は町内会の資料や小学校等の広報がほとんど。大きな仕事が受注できたとしても、外注に出すこともあります。官公庁に目を向けても、優先調達法が施行されたとはいえ、福祉課以外ではまだまだ理解が進んでいないのも事実。価格競争も非常に厳しいため、印刷事業は今後も苦戦が予想されますね」

ただし第二啓生園が手がける点字印刷に関しては、対応できる業者が少ないために希少な事業者として評価されているのだそうだ。印刷班には、亜鉛の点字板を紙に刻印できる特殊な点字印刷機が三台も設置されている。この機械に用紙をセットし、点字を打ち込んでいく。県や市が発行する広報誌の点字版や点字名刺が主流だが、選挙時には投票用紙、立候補者の氏名掲示、選挙公報などの仕事が続々とやってくる。一般印刷と比較しても利率は高めであり、印刷事業の土台を支える貴重な収入源となっているらしい。

「点字印刷は、印刷全体の仕事量の二割を占めるまでになっています。今や、点字印刷がなければ印刷事業は成り立たないといってもいいかもしれません。機械の老朽化が激しいのが難ですが、今後も点字印刷に関しては安定した受注が見込まれると思います」と、寺澤さん。

  • 点字印刷作業風景
  • 点字印刷は、印刷全体の仕事量の二割を占める

大ヒット商品となった、「七夕ストラップ」

そんな中、第二啓生園の新たな名物として全国から注目が集まっているのが、オリジナル製品包装箱折班が生み出した「七夕ストラップ」だ。もともとこの班では、樹脂粘土を加工した動物マグネット、和調プリント柄を使った布人形などのファンシーグッズの製造を手がけてきた。メイン作業は、ウォッシュクリーンと呼ばれる布ふきんの縫製作業である。そんな彼らが、どうしてストラップをつくることになったのであろうか? 担当者の後藤あい子指導員に聞いてみた。

「やはり、売れる製品をつくりたいと思ったからですね。これまでウォッシュクリーンの製造を中心にやって来ましたが、最近では少しずつ売上も停滞気味。他のグッズも、マイナス分をカバーできるだけの売上は確保できません。どうせなら第二啓生園の目玉製品になるようなヒット商品を作ろうと、職員・利用者が一丸となってアイデアを出し合って生まれたのが七夕ストラップなのです」

第二啓生園のある仙台市の観光名物といえば、やはり伊達政宗の時代から続くとされている日本一の七夕祭りだろう。仙台市内の中心部や周辺商店街が、豪華絢爛、色鮮やかな七夕飾りで埋め尽くされる。祭りが開催される8月6日から8日には、毎年全国から200万人を超える観光客が集まるという。七夕ストラップは、七夕飾りの中心的存在でもある吹き流しをモチーフにし、ビーズとリリアンの糸で再現したオリジナルグッズなのだ。

  • 七夕ストラップ
  • 七夕ストラップを手にする、後藤あい子指導員

当初はさっぱり売れなかった、七夕ストラップ

現在でこそ、さまざまなメディアで注目され、仙台七夕祭りの新たな名物として認識されつつある第二啓生園の七夕ストラップだが、開発当初はさっぱり売れなかったのだという。後藤さんは、当時のことを笑いながら語ってくれた。

「デザインももっと地味でしたし、パッケージも色紙に『七夕ストラップ』と商品名をコピーしただけの単純なもの。いかにも福祉施設でつくった製品というイメージはぬぐえませんでした。デザインを変えるきっかけとなったのは、鳴海屋(七夕用紙製品の販売を手がける市内の大手紙商事会社)さんの山村蘭子さんからアドバイスをもらったことが大きいです。山村さんは地味な私たちの商品の可能性に目を付け、もう少し派手なつくりにして価格もアップさせる(300円→600円に)ことにより、必ずヒット商品になると言ってくださったのです」

アドバイス通りデザインを一新して、パッケージも変更。祭りの土産としてふさわしい仕様に変更してみたところ、予想以上に反響を呼んだ。仙台七夕祭りが開催される三日間の間、仙台駅コンコースでの出店では、なんと1,500個も売れたのだという。それ以後も、秋保温泉のホテル、塩竃や松島の土産物店等々への販売委託が次々と決まり、現在では年間6,000個を販売できる大ヒット商品へと成長した。取扱を希望する代理店等も多く、後藤さんたちですら知らないうちに市内の有名店で販売されているケースも多いらしい。

「1個600円のストラップなんて売れるのかな?なんて半信半疑でしたけど、やはりプロのアドバイスは的確でした。価格が安すぎることがかえって、価値を下げていたらしいのです。これだけ売れると製造するのも本当に大変ですが、やりがいがあります。毎年、七夕シーズンに向けて、利用者たちは張り切って制作に励んでいます」

  • デザイン・パッケージも一新された、七夕ストラップ
  • 利用者さんによる縫製作業風景

今後は、オリジナル製品の開発に力を入れたい

七夕ストラップの大成功を機に、第二啓生園では今後の事業展開の中心を自主製品販売に切り替えていく機運が生まれている。目標工賃達成指導員の斎藤博さんは、次のように語っている。

「七夕ストラップを市内の観光地に営業しに行くと、喜んで取り扱ってくれるのです。単純な製品ですが、類似製品は存在していません。しかも仙台名物としてお客さんにアピールしやすい。販売店としても格好の仙台土産と評価してくれているのですね。このように良い製品を生み出せれば、どんどん販売先も増えていく。非常に明快な構図となっています。価格競争に巻き込まれて苦しむ印刷の仕事とは、明らかに違います。今後も計画に沿って目標工賃を達成していくためには、少しずつオリジナル製品の販売事業にシフトしていくことが必要かもしれません」

最近では、仙台・宮城観光PRキャラクターの「むすび丸」グッズの一つ、バッジ&ストラップの販売事業まで手がけるようになっている。製品の製造そのものは企業がおこなっているのだが、七夕ストラップの営業力が見込まれて販売代理店として指名された。そのため第二啓生園は「企画・制作」社として、堂々と観光地に営業に行けるわけである。今後、キャラクターの人気が少しずつ高まっていけば、急速な販売アップが期待できるかもしれない。七夕祭りそのものも仙台だけでなく、日本全国で開催されている。販売先を県内に限らず、七夕祭りをおこなっている全国の地域にまで広げれば、可能性はまだまだ広がることだろう。

  • 仙台・宮城観光PRキャラクター 「むすび丸」ストラップ
  • 左から、寺澤洋さん、山崎嘉子施設長、斎藤博さん

最後に山崎嘉子施設長に、施設の今後の展開について伺ってみた。

「ちょうど建物も老朽化で建て替え時期にきています。それを機に、新しい事業への転換が必要かなと考えているところです。これまでのように印刷事業にずっと頼るわけにはいきませんからね。食品事業への挑戦も、もちろん検討中。どこの施設でも取り組んでいるような内容ではなく、せっかくなら私たち独自の商品を生み出すことに挑戦していきたいですね」

七夕ストラップの成功で生まれたチャレンジ精神は、きっと第二啓生園の新しい事業をつくり出していくことだろう。その昔、荒廃した世俗の世直しが目的で始まったとされている七夕祭りのように、新たなチャレンジが大きく派手やかなものに成長していくことを期待したい。

(写真・文/戸原一男)

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。