社会福祉法人山形県身体障害者福祉協会(山形県山形市)

丸ごと大豆飲料「優豆生(ゆうとうせい)」を商品化した、山形県リハビリセンター

山形県身体障害者福祉協会の概要

山形県身体障害者福祉協会は、身体障害者授産施設(通所・入所)「山形県リハビリセンター」、身障者福祉ホーム「ふれあいの家」、身体障害者保養所「東紅苑・友愛センター」、視覚障害者情報提供施設「点字図書館」等の福祉施設を運営する社会福祉法人である。もともとは点在する身体障害者団体のまとめ役として、制度改善・法律制定・生活サポートに携わる団体として機能しており、山形県内の「駐車禁止除外ステッカー」条例制定や、「障害者のお見合い大会」、「障害者チームの山形花笠祭への参加活動」、全国初の「障害者専門保養施設設立運動」等を次々実行してきた実績がある。

そんな法人の活動の延長線上として、「就職支援」というテーマの実現のために、自らが授産施設を建設することになった。それが「山形県リハビリセンター」である。設立当初は主に聴覚障害者が働く場として構想され、箪笥の合板を製造する木工作業を中心に事業展開していった。木工以外にも病院の白衣などを請け負う縫製事業や、印刷事業、企業の下請け(家庭用モップの清掃や紙箱組立等)、さまざまな事業を実施してきている。

現在もっとも力を入れている作業は、大豆飲料やパンなどの食品製造である。奥羽山脈の山並みを一望することができる大自然の中で、県内産の食材にこだわった本物志向の食品事業をモットーとする。とくに山形県産大豆を100%使用して開発された「優豆生(ゆうとうせい)」という大豆飲料は、かつてない製法による健康食品として注目を浴びている。

「優豆生」は、栄養満点の健康飲料だ。

それでは「優豆生」のどこが、新しい製法なのだろうか? 一見、いわゆる「豆乳」にしか見えないこの製品、実は大豆を丸ごとそのまま細かく砕いたパウダーを水に溶かして攪拌したものだという。そのため豆乳を絞り出すときに捨ててしまう食物繊維(いわゆるオカラ)が「優豆生」には丸ごと含まれており、栄養満点の大豆飲料となっているわけだ。

「豆乳」ではなく「大豆飲料」とあえて書くのには、わけがある。不当表示防止法に基づく「豆乳類の表示に関する公正競争規約」によると、豆乳類の表示は「大豆から熱水等によりたん白質その他の成分を溶出させ、繊維質を除去して得られた乳状の飲料であって、大豆固形分が8%以上のもの」と定められている。つまり大豆の粉末を水で溶いたものは、脱脂したもの同様に「豆乳」とは表示できないように定義されているのである。

しかし脱脂した大豆の残り汁と違い、豆そのものを粉砕したパウダーを水で溶いた「大豆飲料」が、繊維質を除去した豆乳よりも栄養的に優れているのは明らかだ。事実、一般的な豆乳と比較した場合に、カルシウムが約2倍、ビタミンEが約5倍、食物繊維が約10倍も含まれていることが、食品分析によって明らかとなっている。

繊維質を含んでいることにより、動脈硬化の予防に効果があるとされるレシチン、血液を浄化してくれる大豆サポニン、整腸・美容・老化防止に効くおから栄養素等々も、たっぷり残されている。大豆パウダーからつくった「大豆飲料」を毎日飲めば、血液サラサラ、メタボ解消、見違えるほどに若返って元気になることが十分に期待できるわけである。

法人設立35周年を機に、新たに作り出された食品事業

山形県リハビリセンター(以下、リハビリセンター)が、「大豆飲料」事業をスタートさせたのは、約4年前のことである。法人設立35周年を迎え、新しい時代に対応した事業の開発が求められていた。これまでは主に企業の下請け作業が中心であったためである。そんな中、岡田久一常務理事(74歳)が、「大豆パウダー」の存在を知ることになる。

それは、大豆を丸ごと10ミクロンという極微粒に加工した製品である。このパウダーを使えば、大豆の栄養をそのまま残した健康飲料を比較的簡単に作り出すことができる。この「大豆パウダー」を世界で初めて成功した食品会社の社長と出会うと、「技術を提供するので、健康飲料を手掛けてみては?」という提案を受けたというのだ。

当時リハビリセンターの利用者と接する中で、脳血管障害など生活習慣病によって障害者となってしまう人が多いことを痛感していた岡田常務理事は、「健康に役立つ商品を何かつくれないか」という考えを持っていた。そこにこの「大豆飲料」の話である。大豆なら、山形県内で安心・安全に栽培された優良なものが手に入る。ここ数年の減反政策によって大豆に転作した農家が多いし、生産過剰のために大豆自体の商品化が地元でも課題となっていた。リハビリセンターが「大豆飲料」事業を始めることは、「地産地消」という観点からも重要なことだったのである。

まったく新しい「大豆飲料」であったため、市場にインパクトを与えられるように商品のネーミングにも苦心した。「優豆生」という名前は、法人職員全員から公募して決めている。「大豆の優れた栄養分を毎日採って、健康的な体になってほしい」という願いが込められた名前だ。本格的な事業展開を見据え、スタート時から商標登録も済ませている。もちろんパッケージやチラシにも凝り、山形県の名産品として恥ずかしくない商品作りをおこなっている。

「優豆生」を使った豆腐が、大ヒット

事業スタートから約五年。「商品力には自信があったのですが、なかなかその魅力を伝えきれず、当初は営業活動が苦戦しましたね」と、佐藤施設長が語る「優豆生」であったが、年々その製品の魅力は広まってきて順調に売上は伸びてきているようだ。発売当初は賞味期限が3日しかないとか(現在は10日)、時間が経つと粉が沈殿してきてしまうといった技術的問題が発覚したが、さまざまな専門家の協力を得て解決していった結果、ようやく製品としても一般市場で勝負できるものに仕上がった。

「大豆飲料・優豆生」の魅力をもっと一般の人に知ってもらう商品として、飲料そのものを固めた豆腐を開発したのも大きい。「優豆生」はたしかに健康食としては最高のものだが、少しマニアックな製品でもあるためだ。よほどの健康フリークか、料理好きな人(豆乳鍋などに使っているらしい)でないと、定期的に購入するのは難しい。しかし美味しい豆腐なら、毎日でも食べたいと思う日本人は多いわけだ。

「優豆生とうふ」の場合、大豆そのものを粉砕した粉からできている豆腐だから、当然その味は濃厚である。市販のどんな高級豆腐と比較しても遜色はない。高級豆腐と比較すると価格も比較的リーズナブルということで、やっと顧客の心にヒットする商品となった。核家族化が進む家庭環境に合わせ、パッケージはまるでプリンのような小さな容器にしたことも成功した。そのまま食べても美味しいし、お湯で暖めれば簡単に湯豆腐にもなる。野菜と絡めてドレッシングをかければ、簡単に豆腐サラダの完成である。

さらに若い女性たちの感性は恐ろしい。甘く濃厚な豆の味がする「優豆生とうふ」を、野菜スイーツとして捉えた食べ方が広まっているらしい。メープルシロップやブルーベリージャムをかけると、これまでにない感覚のスイーツに変身するというのである。「大豆飲料・優豆生」の時には考えられなかった顧客層の広がりが、「優豆生とうふ」の発売によって可能になった。現在では山形県内だけでなく、近隣県の生活協同組合のチラシにも掲載されるようになり、一万個単位の発注が寄せられるという。

「優豆生とうふ」に引き続いて、「優豆生とうふプリン(キャラメル)」も製品化した。これは大豆飲料の味が苦手な人でも気軽にその栄養素を楽しんでもらうために企画されたホンモノの大豆スイーツだ。菓子でありながら甘さ控えめな優しいキャラメル味のこの製品も、若い女性たちへの口コミによる広がりが今後ますます期待されている。

「粉」にこだわる発想で、パン事業もスタート

山形県リハビリセンターでは、「優豆生」事業に引き続いてパンの製造販売も始めている。こちらも地元産の小麦粉や米粉にこだわる「地産地消」事業という位置づけだ。季節に応じたバラエティ豊かなパンをつくるというのも基本方針で、全部で約100種類にもなるという製品群を季節ごとに作り分けている。春なら、よもぎパンやイチゴクロワッサン。夏には、マンゴーパンや焼きカレーパン。秋には、お芋タルトやメイプルおさつ。冬には、チョコクロワッサンやチョコロールなど。ひな祭りの時期にはひな人形の形をしたパンとか、5月の節句には鯉のぼりパン。いつでも飽きずに定期的に購入してもらえるような製品作りに力を入れているのである。

食品科の総括責任者である岩松剛さん(36歳)は、「食品偽装の問題が騒がれている現在だからこそ、しっかりと本物志向の商品を作っていきたいですね」と、商品作りの基本方針を語っている。「『優豆生』で培ってきた製粉技術を元にしたパンの開発も、今後の課題です。具体的には、リンゴやラ・フランスを粉砕化してその風味を活かし、パンやシフォンケーキをつくれないかと検討中なんですよ」。

どんな野菜や果実の粉も施設内で製造できるように、粉砕器や製粉機の設備も導入した。さすがにミクロ単位の精密さを必要とする大豆パウダーまでは作れないが、菓子の原材料となる製粉ならば問題なく対応できる。生食では売り物にならない山形県産果物の製粉化を製菓・製パン事業と連動させることができれば、新たな地産地消事業としてさらに注目を浴びることは間違いない。

山形には、「日本一美味しいラスク」として全国的に有名になった「麦工房シベール」という名店がある。大豆の味と栄養を存分に活かした画期的な製品である「優豆生」シリーズや、製粉技術を活用した新しい菓子群が、ラスクに負けない知名度をあげることは決して不可能ではないだろう。「真心絶品」への掲載も含めて、今後の山形県リハビリセンターの食品事業の展開に大きな期待を寄せていきたいと思う。

(写真・文/戸原一男)

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。