社会福祉法人青森県コロニー協会(青森県青森市)

フリーペーパー「グルッポ」の発行で、事業活性化を図る青森コロニー印刷

社会福祉法人青森県コロニー協会の概要

青森県コロニー協会は、青森コロニーセンター(入所支援・生活介護・就労移行支援・就労継続B型)、青森コロニーソレイユ(就労移行支援・就労継続B型)、セルプステーション青森(就労移行支援・就労継続B型・就労継続A型)、青森コロニーリハビリ(身体障害者入所・通所授産施設:新制度未移行)で構成される社会福祉法人である。

青森コロニーセンターや青森コロニーソレイユにおいてクリーニング事業を営んでいるが、基本的には印刷が法人の中心的事業である。セルプステーション青森と青森コロニーリハビリを合計すると、障害者定員数は115人となる。二つの施設の法定基準の職員25名に、独自に雇用する健常者職員計41名(法人職員や営業マンなど)を加えるというゼンコロ加盟施設ならではの特殊な運営法により、福祉施設とは思えないダイナミックな事業展開を図っている。

青森県内の印刷会社としては、売上、従業員数、機械設備共にトップクラスを誇る。1時間に菊判12,000枚を印刷する超高速オフセット輪転機、自動製本ラインシステム等々、同業社もうらやむような最新整備を自主財源で次々に導入してきた。まさに本格的な印刷事業をおこなう福祉事業体なのである。

青森市内全戸配布という驚くべきフリーペーパー

そんな青森コロニーが、フリーペーパー「グルッポ」の発行を始めたのは、2004年4月のことである。もともと同名のフリーペーパーをある編集プロダクションが発行しており、青森コロニーはその印刷を仕事として請け負っていた。しかしたった2回の発行で資金繰りが悪化し、発行がストップしてしまう。当時担当営業であった布施卓実営業部長補佐(45歳)が、「このまま廃刊してしまうのはもったいないメディアだ」と営業部内で意見を同じくする同士を募り、青森コロニーが発行元となることを法人に提案したのである。

当時、冊子型のフリーペーパーというのは青森県内では珍しかった。多くはタブロイド判であり、メディアというより広告チラシというイメージだった。布施氏らが注目したのは、あくまで広告を集めたチラシでありながらまるで雑誌のようなデザインと実用性を兼ね備えた「グルッポ」独特の形態であった。印刷会社自らがこれだけ本格的なフリーペーパーを発行するというのも全国的に例がないことだ。こうした提案が評価され、「とりあえず一年やってみろ(横内正秋理事長)」の決済で、若手営業マンたちを中心に「グルッポ」が再生されることになったのである。

新生「グルッポ」は、A4版16ページ・オールカラー印刷という基本仕様は変わらないが、発行部数を13万部とバージョンアップした。これは青森市内のほぼ全戸数という数字である。「市内全戸配布」を謳い文句にして、毎月必ず家庭で読まれるフリーペーパーを目標とする。11万部はポスティングによる配布、2 万部は市内のホテルやコンビニ等に設置して配布してもらう。一冊に収録している広告数は、約50社。広告の制作や印刷データの作成は事業を受け継いだ編集プロダクションにそのまま委託し、青森コロニーでは広告集めと印刷製本、そして冊子の配布を担当することにした。

「グルッポ」の最大の特色は、読者にお得なクーポンを積極的に打ち出している点だろう。クーポンは毎号表紙の裏(表2)にあたる部分に集約させており、全クーポンを切り取って毎月お財布に入れている読者も多いという。ネットとの連動も新生「グルッポ」の売り物だ。フリーペーパーのみならず、インターネット上の「グルッポ」サイトや携帯サイトにも店の広告が出稿されるので、より多くの顧客にアピールできるようになっている。

広告にはほとんどQRコードを掲載していて、お店の情報を簡単にケータイでも見ることができる。たとえクーポンを忘れた人でも、ケータイサイトにアクセスして携帯電話を店の人に見せればサービスを受けることが可能だ。(一部、携帯サービスに未対応の店舗もある)フリーペーパーといっても、読み物記事等は基本的になく、広告だけを寄せ集めた冊子に過ぎない「グルッポ」だが、かえってお得情報に特化した「便利マガジン」であることが人気に火を付けた。発行から7年が経つ現在では、いつの間にか市内でもっとも有名なメディアとして認知されるまでになったという。

お店からも圧倒的に支持される「グルッポ」の魅力

広告を出稿するユーザーからの反応はどうなのだろうか? 「創作タパスBOSSA」「カフェディナーFISH or MEAT」「ダイニング&パーティTSUBAKI」等、市内に3店舗を展開する八甲田ガーデンチャペル聖パトリック協会の木原靖崇氏は、広告効果についてこのように語っている。

「『グルッポ』は、青森市民なら誰でも知っているメジャーな媒体。そこに私たちが広告を載せるという意味は大きいですね。結婚式場を運営する当社が、市内に飲食店をオープンさせたのはここ数年ですので、まずはみなさまに店の存在を知ってもらわないといけませんから。店の認知度アップが、広告を出している一番の理由です。実は自社でもフリーペーパーを発行しているのですが、発行部数や広告効果等、比較になりません。もちろん、クーポン効果も大きいです。ドリンククーポンは、来店者のほとんどが利用しているのではないでしょうか。『グルッポ』が発行されると、クーポンを貼った伝票が山のようにたまりますから(笑)

手作りらーめん店を経営する有限会社あやの屋代表取締役の今彩乃さんも、広告メディアとしての「グルッポ」を評価する一人だ。

「つきあってもう6年近くなりますか? ほとんど創刊時からのお付き合いになりますね。4年前から年間契約に切り替えました。現在でこそなんとか店は順調になりましたけど、一時は売上が落ちてしまって苦しいときがありました。『グルッポ』に出稿してから、少しずつ上向きになり、始めたときから比較すると来客者数は約2倍にアップしています。クーポンの効果はすごいんですよ。月によってもちろん差はありますけど、多いときでは1ヶ月に300枚も集まることがあります。それだけ来店していただけるということですからね。ホント、『グルッポ』さんには、いつも感謝しているんですよ(笑)。」

どのユーザーもメディアとしての「グルッポ」を、お世辞抜きで青森市内のナンバーワンの存在として認めている様子であった。

広告制作は、営業マンがユーザーと一緒に

「グルッポ」に掲載している全ての広告は、基本的に毎回オリジナルだ。どのような切り口で店を紹介するのか、キャッチコピーの書き方、デザインレイアウト、商品の撮影に至るまで毎回細かい打ち合わせを顧客とおこなって、一つずつの広告が制作されていく。制作スタッフは外部メンバーだが、もちろん打ち合わせには毎回営業マンが立ち会って一緒に「より効果のある」広告作りに参加していく。

このことが本体の印刷営業そのものに良い効果を及ぼさないわけがない。印刷営業というのは、ともすると地味な仕事である。お客様からいただいた原稿をいかに早く、正確に印刷物にして納めるか、その時間管理をするのが主たる仕事であると思われている。青森コロニーにおいてもそうだった。提案型の営業というより、受け身の営業に徹していた傾向があることは否定できない。しかし、「『グルッポ』の仕事をやるようになって、営業マンの資質が格段にアップしました」と木下かなめ営業第1課長補佐は胸を張る。

「小さいとはいえ、一つ一つがお客様にとっては大切な広告です。そんな広告づくりに毎回営業マンが関わるわけですから、クリエティブな思考に自然となっていきますよ。最新号ができると、営業部内ではそれぞれの広告についての品評会が自然とおこなわれていますから。みんなの普段の印刷の仕事にも、この経験は活かされていると思います」

「グルッポ」が素晴らしいのは、印刷会社が一つのメディアを作り上げていることに尽きるだろう。もともと印刷物というのは多くの人々に情報を発信するメディアである。しかしそのメディアを使ってビジネスをおこなうのは、あくまで出版社や広告会社の役割であった。印刷会社の仕事は、単に紙にインクを乗せて刷るだけの職人仕事であると思われている。

青森コロニーは、この常識に風穴を開けた。印刷会社自らが企画力を持ち、広告を集めることができれば、印刷機を持っている自分たちこそが本来はメディアの中心人物になることができるのだと。布施営業部長補佐は、語っている。

「とりあえず1年やってみろと理事長に言われて始めたこの事業ですが、私の中では成功するという自信はありましたね。全くのゼロからスタートしたわけではなくて、基本的な枠組みはすでにできあがっていたわけですから。もちろん広告を取るなんていう仕事は、みんな初めての体験です。初めて飛び込みで営業して一枠5万円の広告をゲットしたときは、100万円の印刷物件を受注するより嬉しかったのを覚えています(笑)。」

「グルッポ」が、印刷事業に及ぼす影響力

青森コロニーは、県内で最大規模の印刷会社であることは周知の事実だが、やはり全国的に有名な大手印刷会社と比較するとマイナーな存在であることは否めない。とくに地方においては、企画コンペに参加しようとしたときにこうしたネームバリューが大きく左右する。その意味で、「グルッポ」がメディアとして市内でここまで有名な存在になったのは価値があると、布施氏は言う。「大きなプレゼンテーションでは、イベント告知などのタイアップ企画として『グルッポ』に無料広告掲載案を打ち出すことが良くあります。メジャーなメディアであり、広告効果も高いと評価されているので、お客さんの食いつきはいいですね」

今では「グルッポ」が、部内でも印刷営業の一つの商材としてきちんと捉えられているようだ。印刷会社としてはもちろん広告よりも、何万部も印刷するチラシ印刷の方が仕事として有り難いわけだが、個人の店舗となるとそれだけの費用を定期的に投資するのは難しい。「それならせめて5万円の広告を年間契約でいかがでしょうか?」という提案が、各営業マンから自然と出るようになってきたわけである。

広告によって売上を伸ばした店舗の実例や詳細データはすべて用意されている。資金力のあるユーザーには、広告ではなくて独自のアピール力があるチラシを提案する場合も、もちろんある。「大切なのは広告効果を考えて、お客さんにとって一番メリットのある商品を提案することです(木下課長補佐)」。ここまでくると、印刷営業も広告代理店の営業と同等の域まで達したと言っていい。

新しモノ好きの若手営業マンたちによって、印刷事業の根幹ともいえるメディアを創造した青森コロニー印刷。全国的に印刷事業が非常に厳しい情勢を迎える中、この施設とてもちろん例外ではない。しかし布施氏らの話を聞く限り、まだまだ新しい可能性を求めて印刷事業を追求していきたいという強い意欲を感じることができた。「グルッポ」は、今後もそんな彼らの動きの中心であり続けるに違いない。青森を訪れた際には、ぜひ一度この冊子を手にしてみてほしい。市内の有名ホテルやコンビニには、ほとんどもれなく設置されている。滞在時に便利なお得情報が、必ずやゲットできることは間違いないだろう。

(写真・文/戸原一男)

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。