社会福祉法人飛山とびやまの里福祉会(栃木県宇都宮市)

地域や施設との連携のあり方を模索する「宇都宮市泉が丘ふれあいプラザ」

飛山の里福祉会の概要

飛山の里福祉会 ファッサード

飛山の里福祉会の概要は、宇都宮市泉が丘ふれあいプラザ(就労移行支援事業、就労継続支援B型事業、生活介護事業、地域活動支援センター:宇都宮市からの指定管理施設)、ハート二宮(就労継続支援B型事業、生活介護事業)、ハート飛山(就労継続支援B型事業、生活介護事業)等の障がい者就労支援事業を行う社会福祉法人である。

また、真岡ハートヒルズ(施設入所支援事業、生活介護事業)、はーとらんど(生活介護事業、児童発達支援事業、放課後等サービスデイ事業)、7か所のグループホームを運営し、2012年からはサポートセンターきりん(各種相談支援事業)と宇都宮圏域障害者就業・生活支援センター(栃木県からの委託事業)を相談支援課として一体化するなど、相談支援体制の強化にも乗り出している。

その他にも、飛山交流センター「絆館」や、クリニック・デイサービス・地域交流スペース・地域密着型特別養護老人ホームなどを併設した「田井の里」(共生型医療福祉複合施設)を運営する。1987年に無認可福祉作業所「飛山生活センター」を開所してから、約30年。「人としての未知なる可能性を信じお互いに助け合う」「清々・伸び伸びと安心して暮らせる地域を創る」「いつでも誰でも、気軽に利用できるサービスを提供する」という法人理念に則って、さまざまな事業を展開してきた結果、現在のように大きな組織に成長した。

宇都宮市泉が丘ふれあいプラザのパン事業

宇都宮市泉が丘ふれあいプラザの主力事業、製菓・製パン

法人内でもっとも活発に就労支援事業を展開しているのは、宇都宮市泉が丘ふれあいプラザ(以下、ふれあいプラザ)である。その主力は、製菓・製パン事業だ。食パン・バターロール・フランスパン・くるみパン等の他、あんぱん・クリームパン・チョココロネ・サクサクメロンパン・アップルデニッシュ・あんクロワッサン等の菓子パン、カレーパン・コロッケパン・焼きそばパン・ピザパン・ソーセージパン等の総菜パン、さらにはシフォンケーキ(プレーン・イチゴ・抹茶)・ソフトケーキ・シュガーラスク・クッキー等の焼き菓子など、多種多様なアイテムを用意し、年間で約1,200万円を稼ぎ出す。

販売先は、ほとんどが出張販売だという。東武百貨店の社員食堂、宇都宮市役所内の売店、足利銀行社員食堂、市内各種スーパー、高速道路サービスエリア内売店、市内の保育園・幼稚園等々、取引先はざっと数えただけでも30か所を超えている。早朝から一気にパンの製造が始まり、お昼の販売をめざして専門スタッフが各所に配達していくことになっている。

こうした生産体制を可能にしているのが、大量生産には欠かせない特殊な機械の存在である。生生地を30個も自動で小分けしてくれるという分割機や、パイ生地を平均的に平らにしてくれるパイローラー等々。他の施設では滅多に見かけないような整備を導入しているため、非常に高い生産力を誇っているわけなのだ。直井修一理事長は言う。

  • ふれあいプラザの主力事業、製菓・製パン
  • 優れた環境で、利用者たちの作業参加率が高める

「ふれあいプラザは指定管理施設であるため、建物だけではなくて備品・設備もすべて宇都宮市が用意してくれました。こんなに広大なスペースで、立派な機材が揃っているのはそのためです。非常に理想的な環境なので、とちぎセルプセンターや日本セルプセンターの製パン製菓事業の研修会場としても当施設はよく使われるのですよ。優れた環境のメリットは、利用者たちの作業参加率が高まることですね。講習に来てくださった先生からは、『利用者たちがこれだけ製造作業に参加できている施設は、非常に珍しい』とお褒めの言葉をいただきました。利用者主体の施設であるためにはとても大切なことですから、これからもこの点は大切にしていきたいですね」

農福連携事業に大きな期待を寄せる

住宅地にあるふれあいプラザと違い、ハート二宮やハート飛山の二つの事業所は、市街からは少し離れた地域にある。そんな二つの事業所が現在力を入れているのは、近隣農家からの農作業受託事業だ。以前は事業所独自に椎茸栽培などを実施していたのだが、最近ではむしろ近隣農家へ利用者たちが出向いていって農作業の手伝いをするという仕事にシフトしつつあるのだという。この理由を、直井理事長は次のように説明する。

「二つの施設の周りには、田んぼや畑も多く、たくさんの農家があります。どこも高齢化が進み、働き手がいなくて困っているところばかり。これまではシルバー人材センターを活用してなんとか対応してきたそうなのですが、本当はもっと体力のある若い働き手を探していました。そこで私たち障がい者の就労施設に白羽の矢が立ったというわけです。当初は知的障がい者がどこまで農作業の役に立つのか半信半疑みたいでしたが、試しに取り組んでみたら予想以上の成果がありました。今では、飛山が7軒の農家、二宮が1軒の農家と年間契約してもらえるようになっています」

  • 近隣農家と協力した農福連携事業
  • 稲育苗作業

障がい者の就労事業の作業科目として農作業に注目し、人材不足に悩む全国の農家とマッチングさせるという取り組みは、農福連携事業と呼ばれている。日本セルプセンターでも「平成25年度/平成26年度 都市農村共生・対流総合対策交付金(広域ネットワーク推進対策)」を受託し、全国の障がい者就労支援施設約1,700か所に対し、農業の取り組み状況についてのアンケート調査や農福連携の優良モデルとなる施設への現地調査などを行ってきた。直井理事長は、こうした全国の動きが地方の施設にとって格好のモデルケースになるはずだと農福連携事業に大きな期待を寄せている。

「作業としては、田植えの準備や収穫補助、そして収穫後の雑務などです。何百枚とある苗床をつくってハウスの中に並べたり、収穫物が入った何十キロの袋を運んだり、タマネギの根切りをしたり、皮むきするような作業の数々。膨大な作業をこれまでお年寄りたちが必死になってこなしてきましたから、私たちが代行すると本当に喜んでくださいます。自分たちは収穫に専念できるため、非常に農作業の効率が上がるのです。普通の若い人ならとても続かないような体力的にきつい仕事でも、利用者たちは文句一つ言わずに淡々と続けてくれる。収穫した作物でカレーを作ってくれてお昼ご飯をご馳走になるなど、農家の人たちとは親密なお付き合いができるのも嬉しいですね」

これこそまさに、日本セルプセンターが「『農』と『福祉』の連携ねっと」で唱えた「農と福祉が地域内で連携することでそれぞれの役割が明確となるような地域づくり」の典型的な事例だろう。顔の見える地域レベルでのつながりによって、障がい者も地域の一員として経済活動に参加しているという自覚をもつ。それが、彼らの働きがい・生きがいが持てる仕事づくりへとつながり、経済的自立にも結びついていく......。そんな理想の実現のためにも、直井理事長は「農福連携事業」に積極的に取り組んでいきたいのだという。ハート二宮やハート飛山だけでなく、いずれはふれあいプラザでも少しずつ農作業受託事業に参加していく予定だ。

さらなる事業拡大のために大切なこと

さまざまな事業を展開している飛山の里福祉会で、つねに大切にしていることがある。それは、地域住民、企業、農家、さらには他施設との積極的な連携だろう。直井理事長は言う。

「ふれあいプラザのパン事業も、ピーク時からは少しずつ売り上げを下げてきています。このまま手をこまねいていれば、どんどん数字が悪化していくのは明らかでしょう。つねに新しい企画を仕掛け、話題になる取り組みに挑戦して周りから注目されないといけません。高い工賃実績を達成する施設というのは、どこでもそうした話題づくりが上手ですよね」

ふれあいプラザでも、これまでに多くのプロジェクトに参加してきた。代表的な例は、栃木県のご当地キャラクター・とちまるくんを使った「クッキープロジェクト」である。これは、直井理事長がとちぎセルプセンターの動きとして発案した企画とのこと。県内の約6事業所が集まって、とちまるくんをあしらったオリジナルクッキーを開発する。共同受注・共同生産が可能な製品として、大々的に売り出しを図ったのである。複数施設と人気キャラクターのタッグによる企画は大いに盛り上がり、地元メディアでも頻繁に取り上げられた。現在でも、コンスタントに年間で約2,500個(ふれあいプラザのみの実績)を売り上げるヒット商品となっている。

さらには、宇都宮市のご当地キャラクター・ミヤリーを使って市内7つの障がい者施設が共同でクッキーを作る企画や、市授産品創造開発研究会(市内9施設が参加)による共通ブランド「黄ぶなの贈り物」なども生み出している。

「黄ぶなの贈り物」シリーズとして、ふれあいプラザでは栃木県名産のイチゴ「とちおとめ」を活用した「いちごらくす」を開発。宇都宮市役所内にある障がい者施設製品販売店「わくわくショップU」を初めとして、東武宇都宮百貨店のふるさとギフトコーナーでも取り扱われるなどの成果を上げている。複数施設が「共通のブランド」を生み出して製品づくりをするという発想が、注目すべきポイントだろう。

  • 栃木県名産のとちおとめ(イチゴ)を活用した「いちごらくす」を開発
  • 直井修一理事長

直井理事長は、もう一つ大きな動きを計画中である。それは、製品の販売拠点を自分たちでつくり出すというものだ。280坪もの広大な土地を入手し、直売所を建設する。そこで近隣農家から仕入れた新鮮な野菜や、地域の複数施設で製造するパンやクッキーなどの販売も行っていく。完成すれば、「道の駅」クラスの販売拠点を独自に運営できることになる。これもまた、農福連携事業の新しいスタイルと呼べそうである。「常に新しいことを考え、取り組んでいくことが事業拡大のためには不可欠」と語る直井理事長の、次なる動きに関係者の期待は大いに高まっている。

(写真・文/戸原一男)

Website URL

社会福祉法人飛山の里福祉会(栃木県宇都宮市)
http://tobiyama.org

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。