社会福祉法人戸田わかくさ会(埼玉県戸田市)

抜群の美味しさのどらやきが各方面から注目されている「福祉作業所ゆうゆう」

戸田わかくさ会の概要

戸田わかくさ会は、わかくさ(就労継続支援B型・生活介護支援)、福祉作業所ゆうゆう(就労継続支援B型)、福祉作業所かがやき(就労移行支援・就労継続支援B型)等の障害福祉サービス事業を展開する社会福祉法人である。

この他にも、グリーングラス(共同生活援助)、障害者生活支援センターわかば、戸田市障害者就労支援センター、障害者就業・生活支援センターみなみなども運営している。

福祉作業所ゆうゆう(以下、ゆうゆう)はもともと戸田市が設置し社会福祉協議会が運営していたデイケア施設だったが、2006年より戸田わかくさ会が指定管理で受託運営するようになり、2009年に就労継続支援B型事業所となった。重い障がいのある利用者が多く在籍するが、少しでも高い工賃を実現するためにさまざまな事業展開を図ってきた。

現在の主な作業種目は、和菓子(どらやき等)製造、戸田公園駅前清掃、リサイクルフラワーセンター業務(施設外支援)、室内軽作業となっている。蕨戸田衛生センター組合により運営されているリサイクルフラワーセンターと戸田環境整備事業協同組合より受託の戸田公園駅前清掃の業務は最低賃金が保障されているため、ゆうゆうの全体月額平均工賃を引き上げる要となっている。

  • 福祉作業所ゆうゆう ファッサード
  • ゆうゆうショップ 和菓子販売コーナー

餡からすべて手づくりのどらやき

ところでゆうゆうの代表的な看板商品といえば、どらやきである。この製品は、戸田わかくさ会がゆうゆうの運営を社会福祉協議会から引き継いだ後に生まれたものだと、サービス管理責任者の浜田知奈さん(41歳)は説明する。

「法人の3施設が分担して、戸田、北戸田、戸田公園駅の清掃業務を請け負っていたのですが、それだけでは工賃確保が難しい状況でした。何か新しい作業を検討していたときに、ボランティアに来ていた方の中で和菓子職人がいて、どらやきの作り方を一から教えてくださったのです。最初はまったく試験的な取り組みでしたので、ホットプレートの上で皮を焼くような状況でした(笑)

恐る恐る作り始めたどらやきだったが、製品の製造から包装に至るまでさまざまな工程があり、利用者の仕事としても取り組みやすい。さらに製品自体が非常に好評だったこともあり、製餡機、生地ミキサー、生地充填機、銅板プレート等の機械整備を導入し、本格的に事業をスタートさせることになったのだという。

  • どらやきの生地に餡を詰める利用者さん
  • どらやきの鉄板焼き風景

季節ごとのバリエーション製品で、安定的な売上を確保

ゆうゆうのどらやきの特徴は、なんといっても甘さ控えめの手作り餡にある。原価は高くなってしまうが、十勝産の北海道小豆にこだわって餡を練るところから始めている。初期に作り方を指導してくれた和菓子職人の味を、いまでも忠実に守っているのだ。もちろんどらやきの皮も1枚1枚手焼きである。埼玉県産小麦を使い、保存料などの人工添加物は一切入れていない。手作り餡と手焼きの皮、まさに職人技の結晶である。

どらやきというと夏場は売上が下がってしまうのでは?との懸念にも、しっかり対応策が考えられていた。通常の「つぶあん、栗どら焼き(一粒栗)、ごまどら、カフェオレどらやき」の他にも、季節製品として「さくら(春)、抹茶(初夏)、紀州青梅(夏)、マロン(秋)、イチゴ(冬)」と、さまざまなバリエーションを用意している。この他にも、季節限定の水ようかんや、アイスどらやきなども作っているのだ。とくに夏場のイベントで、子どもたちにはアイスどらやきが大人気なのだとか。

「アイスどらやきの生地は、アイスクリームとの相性を考えて少し甘めのもっちり生地に変えています。ホットケーキみたいなイメージですね。いろいろ試行錯誤した結果、現状の生地にたどり着きました」と、製造担当の熊谷裕美さん。

バニラアイスと餡が挟まったアイスどらやきを食べてみた。独自開発の生地とのバランスが、最高のハーモニーを醸し出している。どらやき特有の小豆あんの重い甘さがまったく感じられない。どちらかというと和菓子は苦手なはずの子どもたちにも大人気だというのは大いに納得できる。非常に洒落たニュータイプのどらやきに仕上がっている。

  • いちご、あんず、ごま、カフェオレなど種類豊富などらやき商品
  • どらやき商品の単品売りもOK!

県内で誰もが知っている製品になるのが夢

現在、ゆうゆうのどらやきの主な販売先は、近隣のパチンコチェーン店、北戸田市地域交流センター内「あいパルカフェ」、イオン北戸田店、戸田市役所内売店等である。近隣で開催されるイベントには積極的に出店し、美味しいどらやきの存在が口コミで広がった結果、さまざまな企業・団体から次々に声がかかるようになった。浜田さんは、まわりの方々のおかけだと何度も感謝の気持ちを伝えていた。

「施設の前にも売店スペースを作っているのですが、近隣の方々がひんぱんに買いに来て下さるのです。大型トラックの運転手さんがわざわざ車を停めて、たくさん買ってくださったのには感動しました(笑)。どこから噂を聞きつけたのかわからないのですが、若い女の子たちのお客さんも多いのです。イオンさんやあいパルカフェさん、そして戸田市施政50周年を記念して発行された『戸田るるぶ』などの影響があるのかもしれませんね」

戸田市施政50周年の式典の際には、行政から記念品としてどらやき2個セットを500セットもの発注があったのだという。これだけの大量注文はゆうゆうとしても初めての経験だった。この時ばかりは数日前から入念に準備を計り、関係者総動員で乗り切ったのだという。

最後に浜田さんと生活支援員の太田さんに、今後の目標を伺ってみた。

「現在の利用者の平均月額工賃は、33,800円になりました。もう少し頑張れば、34,000円を超えられます。リサイクルフラワーセンターや駅の清掃などの仕事を提供してくださる行政の後押しにも支えられて、やっとこれだけの数字に到達しました。和菓子事業も、近隣の皆さんに本当に支えられていると感謝しています。これからも支援の輪を少しずつ広げて、着実に成長していきたいですね」(浜田さん)

「もっと多くの人にゆうゆうのどらやきを知ってもらいたいです。少なくとも埼玉県内では知らない人はいない。そんな存在になれたらいいですね。きっと平均工賃も、知名度アップと同時に上がっていくと思います」(太田さん)

埼玉県内どころか、日本中にその名を轟かせることができるはずの美味しい和菓子である。これからますます、いたるところでゆうゆうのどらやきの名は広まっていくに違いない。

  • 福祉作業所ゆうゆうの利用者/職員の皆さん
  • どらやきで工賃アップ、だから頑張る!

(写真・文/戸原一男)

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。