社会福祉法人薫英会(群馬県吉岡町)

LED農園の新規事業に今後の活路を求める「ワークショップくんえい」

薫英会の概要

薫英会は、ワークショップくんえい(就労移行支援事業・就労継続支援B型事業)、薫英荘(施設入所支援・生活介護事業)、グループホーム、障害者就労・生活支援センター等の障害者支援事業を運営する社会福祉法人である。この他、特別養護老人ホーム船尾苑、吉岡デイサービスセンター、ふなお居宅介護支援事業所等の老人福祉施設も運営する。

法人の設立は1977年であり、知的障害者更生施設・薫英荘として障がい者の一般就労を積極的に推進していた。その後、施設のまわりに通勤寮や障害者地域・福祉ホーム(現グループホーム)などを整備していき、利用者の高齢化が課題になると特別養護老人ホーム船尾苑を開所(1990年)。1994年には新体系の元でB型事業所となるワークショップくんえいを開設した。

広大な敷地の中に、薫英荘を中心とするさまざまな施設が建ち並ぶ姿はまるで1つの集落のようだ。この中で利用者たちの働く場と、一般就労へ向けた訓練の場、そして生活の場、高齢者(障がい者含む)の永住の場を利用者たちにトータルで提供しているのである。

  • 薫英会 ファッサード
  • 街頭にある、薫英会案内図看板

旅館街という地の利を活かしたおしぼり事業

薫英会の中で現在、障がい者就労支援サービスを展開するのがワークショップくんえいだ。おしぼりリース事業、シルクスクリーン事業、LED菜園事業、洗濯委託事業の4種の作業が展開されている。なかでも売上の大半を占めるのが、おしぼりリース事業である。これは更生施設・薫英荘のころから続く歴史ある作業なのだと、五十嵐覚施設長(56歳)は説明する。

「ここから車で10分程度のところに、伊香保温泉街があります。旅館や飲食店が多い町なので、ニーズの高いおしぼり事業は昔から積極的に展開してきました。一時期はペーパーおしぼりに切り替わるなどの苦難の時期もありましたが、なんとかそれを乗り越えて現在に至っています」

おしぼりリース事業というのは、作業工程が非常に細かく分かれているため、利用者の能力に応じた作業分担が可能なのだという。お客さんから回収してきたおしぼりを仕分け、ゴミ取りをし、機械で洗浄・消毒した後に、伸ばし、たたみ、個包装、袋詰め(個包装されたものをさらに顧客発注数にあわせて袋詰めする)、配送......等々、たしかに多くの工程がある。どの工程が欠けても、おしぼり事業は成り立たない。

「おしぼりで培った洗濯ノウハウを活かして、障がい者支援施設の洗濯業務を請け負ったり、地域の企業や商店などに名入れタオルの印刷事業を展開してきました。工賃向上委員会を設置し、職員全員が分担して地域の企業・団体を一つずつまわり、積極的に新規取引先を開拓するようにしています」と、五十嵐さん。

  • 更生施設・薫英荘のころから続く、おしぼりリース事業
  • ニーズの高いおしぼり事業は昔から積極的に展開

新たな可能性を求めて、LED菜園をスタート

現在力を入れているのが、2016年度よりスタートしたLED菜園である。利用者の定員数を増やすにあたり、これまでとは違った観点からの事業展開が求められたのだ。そこで五十嵐さんは農業に目をつけ、パンジーなどの花の栽培に取り組んできた。しかし農業をやってみて改めて感じたのは、利用者はもとより職員にも厳しい職場環境を強いるという現実だった。

「私も実家が農家なので、農業という仕事の大変さはよくわかっています。農福連携が流行言葉になりつつありますが、できればもう少し快適な職場環境を用意したいというのが正直な感想でした。そんな時出会ったのが、都会のビルの地下でも植物を育てられるというLED菜園システム。まさに私の理想とする農業だったので、さまざまな視察研究の上でようやく昨年度スタートを切ることができました。初期プラント製造にあたっては、清水基金さんの助成金をいただいています」

LED菜園とは、三色のLED光源と液体肥料と水だけで植物を育てるプラントのことである。温度管理されたクリーンルームで、完全無農薬、天候に左右されずに1年を通じて計画的に葉物野菜を育てることが可能だ。播種から収穫までおよそ45日間のスケジュール。赤・青・緑色の三色のLED光源の強さをそれぞれ微妙に調整することにより、収穫する野菜の味も微妙にコントロールできる。まさに夢のような植物工場だ。

  • LED菜園をスタート
  • 三色のLED光源と液体肥料と水だけで植物を育てる

課題は、高級食材としての販路拡大

現在作付けしているのは、リーフレタス、赤茎ミズナ、小松菜、ほうれん草、セロリ、ハーブ類などである。サラダとして食べやすいように徹底的に苦みなどの癖をなくし、甘みがある青菜に仕上がっているため、評判は上々だ。支援員の赤尾沙織さんは、次のように語っている。

「露地栽培と違って、収穫までのサイクルを計画通りに行えるのがLED菜園の最大のメリットですね。私自身、農業についてはまったくの素人なのですが、プラントを導入した業者スタッフの指導を受けながら何とかカタチになりました。作物の味はとても美味しいですし、職場環境はいつでも快適です。これからはハーブ類やナデシコなどの食用花など、少し変わった高級感のある作物栽培に挑戦していきたいですね」

現在のプラントは2台の実験的なものにすぎない。そのため、収穫した青菜のほとんどは、法人内の老人ホームや入所施設での給食用に卸すだけでなくなってしまう。2017年中には自己資金による追加プラントの導入が決定しており、その後はいよいよ外に向けた販売・事業展開がスタートするのだという。

「伊香保温泉街には、お洒落なフレンチレストランも増えてきました。収穫量さえもっと安定すれば、高級飲食店に狙いを絞って営業活動していきたいと考えています」と、五十嵐施設長は意欲満々だ。おしぼりや名入れタオルの印刷事業を推進する上で、商工会名簿を頼りに市内中の企業を回っているという営業力が、野菜の販路拡大にも大いに役立つのは間違いないだろう。

農福連携が叫ばれる中、障がい者施設の作業科目として農業が改めて注目を集めている。収穫の喜びを得られるなど利用者に向いている仕事の1つだが、作業時間や職場環境などさまざまな問題点が残されているのも事実。その点、LED菜園には施設が非常に取り組みやすいメリットがある。ワークショップくんえいの事業成果は、他施設にとっても非常に興味があるところだろう。ぜひ成功していただき、新しい時代の障がい者支援施設の作業として認知されることを期待したいと思う。

  • 五十嵐覚施設長(左)、赤尾沙織支援員(右)
  • ハーブ類やナデシコなどの食用花など、高級感のある作物栽培に挑戦

(写真・文/戸原一男)

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。