社会福祉法人八千代市身体障害者福祉会(千葉県八千代市)

利用者のさまざまな働くカタチを模索し続ける「はばたき職業センター」

八千代市身体障害者福祉会の概要

八千代市身体障害者福祉会は、「身体障害者の自助・自立と障害者福祉の向上」を図るために、1967年に創設された社会福祉法人である。障害者の権利向上・地域福祉をめざした当事者による活動を展開し、一般市民にも広く関心をもってもらうための啓蒙・広報活動にも力を入れてきた。

活動の中心は、就労支援事業と地域生活支援事業の2本柱だ。就労支援事業としては、はばたき職業センター(就労継続支援B型事業・就労移行支援事業)。地域生活支援事としては、手話通訳者設置・派遣事業、視覚障害者ガイドヘルパー事業、福祉有償運送事業、車イス等貸出事業、各種福祉講座事業、身体障害者更生相談事業等となっている。

就労支援事業所はばたき職業センターのスタートは、1980年4月である。当時はまだ入所型施設が主体という時代背景の中で、民設民営による「通所型」身体障害者授産施設としては、厚生省(当時)が認可した全国第1号だった。

八千代市身体障害者福祉会 ファッサード

優先調達法の制定で息を吹き返した印刷事業

はばたき職業センターでの作業の中心のひとつが印刷事業である。課長の北原啓司さん(49歳)は、その特色について次のように語っている。

「印刷事業の歴史は古くて、当初は和文タイプライターと写植機で文字入力をしていました。その後、ワープロ・パソコン・編集機と時代の流れと共に現場の機材も変わっていきました。現在では福祉施設でもオンデマンドカラー印刷機を導入するところが多いと聞いていますが、ウチの特色はオフセット印刷にこだわっていることです。菊判4裁(A3ワイドサイズ)の単色機のみなので、できることは限られていますが、昔から続いて発注していただくお客さんに支えられて事業を進めています」

主な顧客は、官公庁、地域の民間企業、小中学校、各種団体、労働組合、医師会、歯科衛生士会、自治会、その他個人などだという。それらの団体から、パンフレットや会報、冊子、記念誌、各種伝票、名刺、封筒などの細かい印刷物を専門に受注している。オフセット印刷の特色は、なんといっても印刷される文字の美しさだ。パソコンから直接出力されるオンデマンド印刷と違い、わざわざ刷版(印刷機にセットする特殊な板、現在はデジタルプレート)を経由するだけのことはある。最終工程として、印刷物を1枚1枚ていねいに利用者たちが目視でチェック(検品作業)しているのも特徴だろう。印刷ムラはもちろんのこと、ちょっとした紙のシワや汚れも見逃さない。徹底した製品管理が、昔からの顧客をつなぎ止める要因になっている。

もちろん、こうした軽印刷を請け負う業界の経営環境は厳しく、はばたき職業センターも例外ではない。売上はピーク時の半分にまで落ち込んでいるのも現実である。そんな中、2013年に施行された障害者優先調達法は久々に明るいニュースだった。県庁、市役所、海上自衛隊、旅券事務所、県立美術館等の新規顧客から、大口の案件がいくつも発注されてきたというのだ。

「ここ数年、売上はずっと減るばかりでしたから、優先調達法には本当に助けられています。一件あたりの単価が非常に低い当事業所にとって、数十万円の案件は大口の仕事ですからね」と、北原さん。印刷機・製本機・断裁機といった機材を使いこなすのも、パソコンで版下データを組んでいくのも基本的にはすべて利用者たち。機械やシステムは最新型とは言いがたいが、ここには障害者施設における印刷事業の原点がある。

  • 印刷される文字の美しさを求め、オフセット印刷にこだわる
  • パソコンで版下データを組む作業を行う利用者たち

土から作る園芸ポットは、固定客がたくさん

もう一つの柱となる事業が、園芸作業である。草花・野菜の栽培や、生ゴミを堆肥に変えるEMボカシの生産、市から委託される植栽作業等を行っている。その中でも中心となっているのは、草花の販売活動である。四季折々の草花を年間3万鉢以上生産し、週4回(火・水・木・金)の頻度で、市役所隣福祉センター前の敷地にテントを出して定期的に販売している。印刷同様に、徹底した品質管理がはばたき職業センター園芸草花ポットの特色だ。

「単純に苗をポットで育てるだけでなく、私たちは土作りからこだわっています。ボイラーで熱処理殺菌した赤土を、腐葉土や肥料と混ぜ合わせているのです。この一手間によって、草花の品質がまったく変わってきます。ホームセンターで売っている安価なポットとは、比較になりません。草花の持ちがぜんぜん違うとお客さんからは高く評価されています」

栽培しているのは、パンジー、ベコニア、日々草、アサガオなどの季節の草花だ。とくにアサガオは、道の駅で朝顔市として約1週間の臨時販売を行っている。行灯仕立て(植物を支柱にらせん状に絡ませて行灯のように仕立て上げていく方法)に仕上げた一鉢1,000円のアサガオ鉢は、毎年約300鉢程度売れるのだという。

園芸ポット販売の他にも、八千代市から委託を受けている植栽管理作業なども事業的には大きな比重を占める仕事だ。駅前や村上橋のフラワーポットの植え替えなどの管理を独占的に任されている。障害者優先調達法が制定される以前からのことであり、「八千代市が誕生以来、市と共に成長してきた」という八千代市身体障害者福祉会の特徴が、ここにも端的に表れている。

  • 生ゴミを堆肥に変えるEMボカシの生産
  • 草花・野菜の栽培(写真はアサガオ)

簡易作業部門の設立で、新たな利用者の受け入れも

三つ目の作業部門が、受注生産科(簡易作業)である。印刷や園芸作業に関わるのが難しい重度の障害者のために作られた比較的新しい作業だ。北原さんは、これについて次のように説明する。

「印刷の仕事というのは、特殊な職人作業です。インクの臭いが部屋に充満する典型的な3K職場だし、園芸も暑さや寒さに耐えて野外作業をしないといけません。新しく入ってくる利用者さんの中には、工賃の高さよりも仕事のしやすさを選ぶ人も多くなっているのです。障がいの種類も、身体中心から精神や知的へと広がってきたこともあり、数年前から簡易的な作業にも取り組むようになりました」

人は、働くことによって誰かに認めてほしいと願っている。そこに「やり甲斐・生き甲斐」を見つけ、達成する喜びを得る。労働の対価としての報酬も喜びの1つだが、お金ではないものを求める場合があるのも事実だろう。「働くことに徹底的にこだわり」「高い工賃をめざす(月額平均工賃約42,600円)」というはばたき職業センターが受注生産科を新たに設けたのは、そのような考え方に基づいている。最後に阿部裕一施設長(56歳)は、次のようにまとめてくれた。

「もともと法人設立の原点は、障がいをもつが故に一般就労しにくい人たちのために福祉的就労の場をつくることでした。福祉を取り巻く環境はめざましく変わり、現在では一般企業も積極的に障害者雇用に力を入れるようになっています。そんな時代に私たちは、何をすべきなのか。さまざまな利用者の『働きたい』という要望にお応えできるように、これからも多様なサービスを提供していきたいと考えています」

(写真・文/戸原一男)

  • 園芸作業をするスタッフ/利用者さんたち
  • 植物に水を注ぐ利用者さん

Website URL

社会福祉法人八千代市身体障害者福祉会・はばたき職業センター(千葉県八千代市)
http://hukushikai.com

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。