社会福祉法人光明会(千葉県八街市)

就労支援に特化した全国最大規模の福祉サービス事業所「就職するなら明朗塾」社会福祉法人光明会

名は体を表す。まさに就職するための障害者福祉施設

光明会は、「就職するなら明朗塾」(就労移行支援事業/就労継続支援B型事業)・「就職するなら明朗アカデミー」(就労支援移行事業/地域生活一時支援事業/就労活動支援員事業)・「障害者就業・生活支援センター 就職するなら明朗塾」(地域生活支援事業/企業支援員事業/法定雇用率未達成支援員事業)等の障害者就労支援事業を中心に展開する社会福祉法人である。

この他、施設入所支援事業や短期入所事業、日中一時支援事業、グループホーム、障害者(児)相談支援事業等の生活支援事業も運営する。「食を通じた地域貢献」という観点から、日常的な作業として「めいろう松花堂弁当」の宅配事業、「白神ジャンボにんにく」や「古代米」等健康食品の販売、農園作業なども実施しているのだが、法人全体がめざしているのはズバリ「障害者の就労支援」である。このことは、メインの2事業所の就労移行支援事業の定員数を見れば明らかだ。「就職するなら明朗塾」(以下、「明朗塾」)が43名で、「就職するなら明朗アカデミー」(以下、「明朗アカデミー」)が20名(さらに増員予定)。二つの事業所を合わせると、なんと63名定員という就労移行支援事業を運営していることになる。

これまでに利用者を一般企業に送り出してきた数は、100 名を超えている(平成22年3月現在)。「就職(=給料で生活設計をする)障害者を全面支援する」という明確な方針の下、独自の就労支援活動によって次々と彼らの夢を実現し続けている法人なのである。

障害者が就職できない原因とは?

ご存じの方も多いと思うが、現在の日本では障害者雇用促進法によって民間企業・国・地方公共団体はそれぞれ一定率の障害者を雇用する義務を有している。これが法定雇用率と呼ばれる数字であるが、法律の制定以来、民間企業全体平均は一度も目標(1,8%)達成されたことがないのが現実だ。これはなぜだろうか?

多くの利用が指摘されている。一つは障害者本人の能力の欠如。さらに企業の意識の低さ。行政の理解不足も要因の一つかもしれない。しかし「明朗塾」の内藤晃CEO(51歳)は、このように外部に原因を委ねる考え方をやめ、100%支援員の問題であると捉え直す発想の転換が必要だと語っている。

「ジョブマッチングという基本的な考え方があります。求職者の適性が仕事にあっているかどうかを事前に選考するという手法ですが、その判断は支援員に委ねられていました。しかし、職場の状況を知らない私たちにどうしてそんなことができるのでしょう? 町中で歩いている高校生たちの姿を見て、彼らが一生懸命働く姿を想像するのは難しいですよね? それとまったく同じです。けれども障害者の場合には、『きっと彼には、仕事など無理に違いない』と周りが勝手にフィルターをかけてしまう。これは、一種の虐待ではないかと私は思うのです」

一度常識を取り払ってしまうと、思わぬ結果が生まれることがある。「明朗塾」ではこれまでのように支援員があらかじめ利用者を選択するのではなく、就職希望の利用者を全員揃って面接に連れて行く方針に転換してみた。決めるのはあくまで企業の担当者だと考えたからである。するとどうだろう。支援員の予測とはまったく別の人選がなされることが多々あり、採用された利用者たちは予想もしなかった才能を発揮して、活き活きと働き始めるではないか。そんな変化を何度も体験すると、彼らの可能性を100%信じることができるようになる。支援員がこういう気持ちになると、結果は自動的についてくる。かくして「明朗塾」の就職率は、次々に向上していったのである。

「障害者就業・生活支援センター」(以下、『支援センター』)の山本樹センター長(32歳)も言う。 「就職率を上げる最大のポイントは、出会いの場をいかに増やすか、これに尽きると思います。お見合いと一緒ですよ。『明朗塾』の就労実績をお話しすると、何か特別のノウハウがあるのではと聞いてくる関係者が多いのですが、秘策などまったくありません(笑)。もちろん、就職したあとの定着率を上げるための企業担当者との関係づくりは重要です。私が現在所属している『支援センター』では、『明朗塾』で就職した人たちが継続的に長く働けるようなサポートを専門におこなっています。問題があればつねに間に入って、一緒に解決するように努力しているのですよ」

この「支援センター」は、印旛・山武地域を中心とした幅広い地域における障害者の就職・生活支援を担当する部署として2008年に設立された。就職後のサポートだけでなく、ハローワークと連携した幅広い地域の障害者就労斡旋も主たる活動の一つであり、これまでに40名(2008年)、105名(2009年)、113名(2010年)という千葉県一の就職実績を誇っている(「明朗塾」「明朗アカデミー」を含む)

「就労支援」に特化する事業所はかくして生まれた。

ところで「明朗塾」では、開設当初からこのように全面的に「就労支援」の方針を打ち出す施設だったのだろうか? 「イヤ、決してそんなことはないですね。そもそも『明朗塾』は、入所型の授産施設としては、最後発の存在でした。全国的に福祉行政の流れが地域移行へと進む中で、これから施設の特色をどのように打ち出せばいいのか、さまざまな試行錯誤が必要だったのです。そんな中、2002年に民間のシンクタンクによるコンサルティングを受けたのが、大きな転機となります。『明朗塾は誰のために何のサービスをおこなっているのか』を、もっと明確にする必要があると痛切に感じたわけです。福祉の世界には、どんな人からの要求もオールマイティに受け入れなくてはならないという考え方があります。しかし本来事業では、そんなことは実現不可能です。特定のサービスに力を入れ、これだけは絶対他事業者に負けないという特色をつくる必要があるのです」

そこで内藤CEOが考えたのが、「就労」を中心に打ち出すという方針だった。しかも、障害の種類や、障害の程度を問わず、「働くことによって人生設計をおこないたい」と希望する障害者に対しては、100%全面的に支援していくという画期的な考えだ。そのため施設名称も、これまでの「明朗塾」から「就職するなら明朗塾」と変更することにし、事業目的を明快にした。これなら施設名を見るだけで、どんなことをめざす施設なのかが一目瞭然である。

もちろん「就労支援」を前面に打ち出して活動していくのは、非常に難しいことだ。そもそも就労移行支援事業というのは、障害者が2年間しか事業所を利用することができない。「2年経ったあと、就職できない人たちはどこへ行けばいいのか」とこの制度自体を批判する関係者も多い。「明朗塾」が就労移行支援事業所としてスタート時に33名定員を打ち出したとき、「そんな大量人数を就職させることなど不可能だ」と心配する向きも多かったという。

しかし内藤CEOの考え方は、違っていた。本来、福祉の仕事というのは、自分たちが何をしたいかという理念が先に来るべきである。施設のあるべき将来像を検討した結果、「就労支援」という戦略が出て、しかもそれを徹底的にやりたいと熱望する職員もいる。だとすれば施設長としてやるべきことは一つしかない。職員が自由に働ける環境をいかに作り上げるか、ということである。

「目標を達成するために大切なことは、まず第一歩を踏み出してみることです。一歩を踏み出した人にしか、次のステップに必要なものは見えてこないからです。つまり33人就職させるために必要な課題は、まず1人を就職させた人にしか絶対に理解できないのです」

内藤CEOが仕掛けるこうしたポジティブ思考と行動力が、外部からは実現不可能とも思われた大規模な「就労移行支援事業」を着実に成功に導いてきた。「明朗塾」における就職実績は、6名(2004年)を皮切りにして、9名(2005年)、10名(2006年)、36名(2007年)、10名(2008年)、8名(2009年)、22名(2010年)という推移をたどっている。今では「就職するなら...」という名にふさわしい就労支援に特化した障害者福祉サービス事業所として、その名は全国に知られる存在となっている。

さらに就労支援に特化した、「明朗アカデミー」の教育システム

「明朗塾」で打ち出した「就労支援」の目的を、さらに極めた事業所が2010年にオープンした「就職するなら明朗アカデミー(以下、「明朗アカデミー」)」である。「明朗塾」では、月に一回程度のビジネスマナー講座以外はとくに就職のための訓練はなく、普段は日替わり弁当の製造や製パン、園芸などの仕事に従事しながら就労訓練をしているわけだが、「明朗アカデミー」の考え方は完全に違っている。ここでは作業はまったくおこなわれない。従来型の施設を超え、就職のための専門教育だけに特化した、まさに「就職塾」とでも呼ぶべき存在なのだ。

「就職するなら明朗アカデミー」の小澤啓洋学長(33歳)は、「明朗アカデミー」の設立目的を次のように語っている。

「職場に就くことを想定した作業訓練を完全に否定するわけではないのですが、効果としては不明確ではないかと私は思います。施設と会社ではまったく働く環境が違うからです。それよりも障害者が就職するために学んでおくべくことがたくさんあります。それが『明朗アカデミー』で教えている各種のトレーニング。私は学習に特化した支援をすることで、やる気のある障害者をもっと就職させることができないかと考えたわけですね」

プログラムとしては、利用者たちの無限の可能性を引き出すために、公文式学習指導とSST(社会技能訓練)と感声(発声・絵画トレーニング)等を用意している。パソコン講座や模擬実践講座、英会話を含むコミュニケーションスキルのトレーニング、履歴書の書き方や面接の受け方等の就活スキルトーニング、地域生活スキルのトレーニング、企業見学、企業実習...等々。まさに「本気で就職することを望む人たち」のための実践トレーニングである。

さまざまな種類の障害者を対象とした教育の場で、一番悩ましいのが「同一教材」による学習指導をおこなえないという問題だろう。そのため「明朗アカデミー」では「公文式学習指導」を取り入れた。個人別に用意された自学習プリントを使い、一人ひとりの実力に応じた学習ができるのが特色である。自分のペースで前に進んでいくため、「学ぶことの喜び」「自己肯定感」を生み出していく。計算力及び読解力の向上により、論理的思考や行動力が自然と身につくのも大きい。その他のトレーニングメニューと合わさって、利用者たちが就職するための基礎準備が整っていくのである。

小澤学長の考えが間違っていなかったのは、統計上の数値でもすでに証明されつつある。「明朗アカデミー」のオープンから現在まで(2011年3月現在)たった11ヶ月で就職に至った利用者は、なんと18名。20名定員のほとんどすべての利用者たちが、トレーニングを受けて1年も経たないうちに目的を実現してしまったことになる。

「就職するために一番必要なことは、障害の種類や程度ではありません。そうではなくて、働きたいという意志の強さだと思います。『想いの強さが、障害の重さを凌駕する』と私たちはいつも語っています」と、小澤学長。言葉だけ聞くと単なる理想論にも聞こえがちだが、日頃から実践している現場報告の統計的分析や、支援員たちがそれぞれの観点から取り組んでいるという研究レポートの数々が、彼らの理論を支えていることは間違いない。理想の支援のあり方を探るためにも、つねに勉強を怠らない。「明朗塾」の職員たちに共通する特徴である。

有料の福祉サービスで、福祉界のパイオニアとなる

社会福祉法人光明会では、2003年からまったく新しい考え方の施設福祉サービスを提供する場としてNPO法人ユニバーサル研究センターを設立している。「明朗塾」では提供することができない「プラスワン」のサービスを、なんと職員が有料で提供しようという試みだ。「わくわく・どきどきプラスワンサービス」と名付けられたこの企画には、「居酒屋で一杯!」「映画を見よう」「ドキドキスポーツ観戦ツアー」「豪華ランチバイキングとイオン成田でショッピング」「ファッションコーディネート&お洒落なランチ」「目指せ!プロボーラー」「湯った〜り!」というユニークなサービスメニューが18種類も用意されている。

公費で提供されるサービスではないため、利用料金は顧客(=利用者)の完全自己負担である。当初この企画を始めるに当たっては、「金銭的に余裕のない障害者は、有料サービスを受けられないが、それでもいいのだろうか?」という議論もあったと言うが、これについても内藤CEOは一蹴する。

「どの世界でも、サービスの導入期には価格が高額であり、経済的理由から利用できない人たちがいるのは仕方がないことです。携帯電話の導入期を思い出してみてください。当初は膨大な保証金や利用料が必要でした。でもそうしたお金のおかげで設備投資が進み、現在のように誰でも利用できるサービスになったわけでしょう。福祉サービスだって、同じことです。誰かが今までにないサービスを提供することにより、追従企業が生まれ、価格競争となって、ついには基本サービス(=無料)になっていくのです。つまり、現在サービスを受けられない人たちのことを心配するのではなく、将来的に一般的なサービスとなるためのオプションサービス研究を、今から実施する必要がある。フロンティアスピリッツ(開拓者魂)とは、そういうものです」

社会貢献事業も、社会福祉法人に課せられた使命

内藤CEOの著書『施設長の資格!(中法法規出版)の中に、こんな一節がある。

「この先時代が変わり、福祉施設が本当に成り立ってゆかなくなる事態が起きたとき、地域住民に福祉施設の存続の大切さを理解してもらい、福祉施設への税金の投入の支持を得なければなりません。

銀行がバブル崩壊後に巨額の負債再建を抱えたときに、政府が税金投入を決定して銀行の存続を訴えました。(中略) 福祉施設は、銀行と同じように救われるでしょうか...」

実に鋭い指摘である。もしかしたら、「必要なし」と判断されてしまうかもしれない。だからこそ、社会福祉施設にとって「真の株主」ともいうべき地域住民に日頃から施設やスタッフの存在を認めていただく活動をおこなっていく必要がある。「明朗塾」の保護者会・保護者説明会を「ファン感謝デー」と呼び、施設を利用していただく方々に感謝する楽しい催しとしたり、「明朗塾夏まつり」「八街コンサート&めいろうフェスタ」等の地域住民を対象とするイベントを毎年盛大に開催するのはそのためだ。

さらに現在検討中なのが、法人全体で取り組む本格的な社会貢献活動であるという。社会福祉法人と名乗る以上は、本業以外でも社会に対する奉仕活動をおこなう義務がある。職員も利用者も一体となった社会貢献活動を実施できたとき、周りの人たちは「本当に社会に役立っている福祉法人だ」と認めてくれるはずである。結果的にそれがメディアでも話題になり、「明朗塾」や「アカデミー」の経営を安定化させることになる...。

内藤CEOの考え方は、基本的に社会福祉の理想の姿を追うものだ。しかもマーケティング理論を施設運営に導入し、安定した経営方針で障害者福祉サービス事業所を運営すべきだという視点が貫かれている。「集客マーケティング手法に基づく授産事業運営・福祉事業所の強化ポイント」と題する講演活動を全国各地で実施するだけでなく、10万人規模の福祉ネットワークをめざしてメールマガジンを発行している内藤CEO。日本の福祉のあり方を変えるために、「福祉の松下村塾」をつくりたいと語るその情熱は、とどまることがない。「明朗塾」の活動内容とともに、その言動の行方が今後も注目されるところである。

(写真・文/戸原一男)

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。