社会福祉法人日本キリスト教奉仕団(神奈川県座間市)

地域の人たちに大人気、「アガペセンター」が運営するカレーキッチンSara

日本キリスト教奉仕団の概要

日本キリスト教奉仕団は、アガペ東京センター(東京都板橋福祉工場、新宿区立新宿福祉作業所、スマイルマーケット高島平駅ナカ店、板橋区障がい者就労支援センター、国立国会図書館複写受託センター)、アガペセンター(アガペ第1作業所:就労移行・就労継続B型、アガペ第2作業所:就労移行・就労継続B型、アガペ壱番館:生活介護・施設入所、アガペサポートセンター:生活介護、座間市立もくせい園:生活介護)等の幅広い障がい者事業を展開する社会福祉法人である。この他にも、ケアホームスマイルやアガペ診療所、座間市サニーキッズ等を運営している。

第二次大戦後に北米の教会などから贈られた援助物資(ララ物資)の配分をおこなった世界教会奉仕団が、法人活動の原点である。その後、援助物資の配分に加えて、社会的に立場の弱い人たちのための社会事業にも取り組むようになり、1958年に社会福祉法人となった時点で障がい者福祉に力を注ぐことになった。現在では東京を中心とするアガペ東京センターと、神奈川県座間市を中心とするアガペセンターの二つに事業拠点が分かれている。

「アガペ」とは「神の愛」という意味のギリシャ語である。弱さ、痛みを持つ社会福祉サービスを必要とする人々に共感し、共に歩み、共に生きるというキリスト教福祉を基本理念とし、ノーマライゼーションの実現を目指して、地域社会の中で「自立と尊厳」を持って生活するための支援をおこなっている。

アジア交流の中から生まれたアガペセンターの食品事業

さまざまな事業を展開する中で、注目を集めているのがアガペセンターの「カレーキッチンSara」だろう。2006年に開設したアガペ第2作業所の中心となる作業としてスタートした。施設内に拠点を構えるショップだが、客数は全100席と比較的広く、30名規模の貸し切り用スペースも備えている。閑静な住宅街や自動車関連工場が隣接する座間市の一角で、午後のひとときをゆっくり過ごせる人気の空間となっているらしい。

もともとアガペセンターがカレー事業をスタートするきっかけとなったのが、1980年から続いているアジア研修交流事業なのだと、小田中博志施設長(53歳)が説明してくれた。

「法人発足の原点から考えて、アジア地域への貢献も私たちの重要な活動と捉えてきました。そんな中からアガペ交換研修プログラムが実施されてきたわけです。インドやタイ、フィリピン等、東南アジアの方々を招いて、施設内で3ヶ月間一緒になって生活してもらいます。これまでに12ヶ国の地域から70名以上のメンバーの受け入れをおこない、アジア各地の福祉向上のためのサポートをしてきました。アガペ第2作業所で新しい食品事業を始めることになったとき、せっかくなら彼らに因んだメニューがいいということになり、カレー事業を始めることになったのです。カレーなら老若男女、誰でも好かれる食べ物ですし、東南アジアともイメージがつながります。将来的には店内でアジアの製品を販売することも考えていましたね」

アジアだけでなく、施設と地域住民たちとのつながりを持ちたいという願いも、「カレーキッチンSara」は容易に実現した。長い歴史の中でもなかなか関係者以外が足を踏み入れることがなかったアガペセンター内のレストランに、親子連れの主婦たちや工場の従業員たちが、連日訪れてくれるようになったのだ。近くにファミリーレストラン等の飲食店があまりないという立地条件にも恵まれ、お昼時は連日満席の状態が続いている状態だ。

レトルトサラカレーは、口コミで拡がり、売り切れ続出の大人気

「カレーキッチンSara」のダントツの人気メニューは、サラカレーである。
豚肉とタマネギ、人参、セロリ、トマトなどの野菜を長時間煮込んで自然の甘みを引き出し、強めに効かせたスパイスとのコントラストを際立たせたルーは、さすがに専門店のカレーらしい本格的な味わいだ。来店者の多くが注文する、自慢の逸品である。

「サラカレーのサラは、女神のサラ。まっさらのサラ。そしてお皿のサラでもあります(笑)。地産地消にこだわり、ライスは座間市で育ったお米を使いました。福祉施設で作られるカレーというイメージを超えて、本格的な味わいを目指しました。おかげさまで近所では美味しいカレーショップという評判が口コミで拡がり、コンスタントにお客さんが訪れてくれています。工場で働く人たちが多いので、夜も営業してくれるといいのに、とリクエストされている状態です。2011年からは、座間市立市民体育館の喫茶コーナーとして『カレーキッチンlittle Sara』をオープンしました。メンバーの勤務体系のやりくりなど、試行錯誤が続いていますが、今後さらに売上を伸ばす努力を重ねていきたいですね」

と、小田中施設長。メニューとしては、サラカレーセットがサラダ・スープ・ドリンクバー付きで650円。この他、人気No.2のキーマカレーセット。焼きカレードリアとナンのLove2セットに、サラダとナンのレディースランチ、お子様カレーセット、週替わりランチセット、といったラインアップだ。この他、さまざまな季節限定メニューがあり、この中からボリューム満点のチキンカツカレーセットがガテン系の男性たちの心を掴み、大ヒット商品となって定番化した。

来店できない人にも人気のサラカレーを楽しんでもらおうと、レトルトパックになった商品も販売されている。一箱390円と少し高めのカレーだが、中身はほとんど店頭で出されるサラカレーそのもの。たっぷりの肉と、香辛料が効いた刺激たっぷりの味わい、そしておまけに付いてくるサクサクのココナツのトッピング。レトルトカレーとしては最高レベルの品質と言ってもいい。事実、「カレーキッチンSara」店内だけでいつも売れ切れてしまうほどの人気商品となっているのだ。

「キッチンの厨房の片隅で作っているだけですので、生産量もほんのわずか。実は店内と、年末年始のギフト販売やイベント等で売っているだけの商品なのです。おかげさまで非常に人気が高いので、生産設備を増強し、もう少しレトルト事業に力を注げるとよいのですが。」

ご当地レトルトカレーだけを集めたWEB通販サイトや、各地の珍しいレトルトカレーを何十種類も取り扱う高級スーパーなどが人気を集め、売上を伸ばしている現在である。「レトルトサラカレー」の味なら、それらの商品と比較しても十分に対抗できるはずである。ぜひとも多くの人たちに、この美味しいカレーが食べられるような事業展開を検討していただきたいものだ。

「手作り和ろうそく」は、神奈川県が主催した製品コンテストで最優秀賞を獲得!! きらっと輝く商品コンテスト 最優秀賞に輝いた「手作り和ろうそく」

サラカレーの他に、最近注目を浴びたアガペセンターの商品がある。神奈川県が主催した第1回「きらっと輝く商品コンテスト」で見事に最優秀賞に輝いた「手作り和ろうそく」である。現在では、原材料に石油(パラフィン)が使われたキャンドルが一般的となっているが、古来日本にはハゼの実から採れる「ハゼろう」という自然の材料を使ったろうそくが使われてきた。これが、和ろうそくと呼ばれるものである。きめが細かくて粘り気があり、ゆらゆらとゆっくり揺れて炎が長持ちするのが特徴だ。作るのに非常に手間がかかるため非常に高価であり、お寺や葬儀場での宗教儀式や土産物用として使われるのが中心になってしまった。

もともとアガペセンターの作業品目としてリサイクルキャンドルの製造があり、近隣の教会や寺院、葬儀会社から使い古しのろうそくが提供されている。そんな中、日本独自のろうそくの特徴を活かしたリサイクル商品を作ろうということで開発されたのが、この「手作り和ろうそく」なのだ。洋ろうそくと違って柔らかく揺らぐ日本古来の炎を楽しんでもらおうという商品コンセプトが、コンテストでも審査員たちから高い評価を受けた。形だけ綺麗に取り繕ったり、色鮮やかに変身させるのではなく、素材の持つ良さをそのままストレートに打ち出したところが審査員たちの心を打ったに違いない。他施設でも、商品開発をする際の貴重な参考事例になるはずである。

アガペセンターでは、一年に2回「キャンドルナイト」と銘打ったスペシャルカレーディナー&コンサートを開催している。毎回素敵なゲストを招いて、「カレーキッチンSara」でキャンドルの灯りで素敵な夜を過ごすのだ。さまざまな色と形のリサイクルキャンドルが揺らめくほのかな光に包まれて、会場は幻想的なムードが漂うという。

「奉仕」のこころを、法人職員全員の意識として徹底したい

東日本大震災以来、被災地への支援活動を継続的に続けている施設は多いが、アガペセンターも例外ではない。被災地施設に車両を贈呈するための基金を集めるチャリティコンサートの開催に加えて、被災地交流事業と題する活動を独自に続けてきた。「共に生きる」「現地の方の求めや必要性に応じた」「中・長期かつ継続的な」取り組みを目指し、希望する職員を現地に派遣して関係者と親睦を図ってきたのである。可能であれば、アガペセンターに勤める約200名の職員が全員現地に赴いて、その状況を肌で感じてもらうことが望ましい。小田中施設長は次のように語っている。

「震災から2年が経過しましたが、現地の沿岸部の農地ではいまだに瓦礫撤去の作業が続けられているのが現状です。神奈川県からも月に何度もボランティアバスが往復するなど、とても『一区切り』どころではありません。私たちはもう一度震災直後に感じたことを思い返し、もう一度現地の皆さんに眼差しを注いでみる必要があるのではないでしょうか。そんな考えから、本年度からアガペセンターでは職員親睦旅行に代えて、複数年計画で職員たちが交代で現地に出向くという計画を立てました。現地の空気に触れ、風景を目に焼き付けることから、それぞれの活動をスタートしてもらいたいと思っています」

第二次大戦後にララ物資と言われる支援物資を分配するために設立された団体の「奉仕」精神は、現在でも脈々と受け継がれている。そんなことを感じさせる活動である。アガペセンターでは、所属する利用者たちへの生活・就労支援はもちろんのこと、アジアや東北被災地といった社会的に立場の弱い人たちへの支援活動も常に力を入れている。それこそが「アガペ」(ギリシャ語で『神の愛』の意味)の精神であり、お互いを大切にして慈しみあい、支え合う愛だと考えているからである。

(写真・文/戸原一男)

Website URL

社会福祉法人日本キリスト教奉仕団・障害者総合福祉施設アガペセンター(神奈川県座間市)
http://www.agape-jcws.com

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。