社会福祉法人はこべ福祉会(福井県美浜町)

納豆・ジャム・へしこ…星の子キャラクターを使ったオリジナル商品が大人気

はこべ福祉会の概要

はこべ福祉会は、障害福祉サービス事業所「はこべの家」(就労継続支援B型事業、就労移行支援事業、生活介護事業)を運営する社会福祉法人である。主な作業は、食品の製造販売、水稲用育苗マット製造販売、仕出し屋「星の子亭」、軽食・喫茶「星の子」の運営、IT事業(ホームページ・チラシ制作)、各種受託作業(梅干し種抜き、梱包用クッション製造)となっている。

代表的な商品は、「星の子」のキャラクターを前面に打ち出した納豆・ジャム・鯖へしこ等のオリジナル製品群だろう。素材や味に徹底的にこだわった食品という特徴に加えて可愛いパッケージデザインが人気を呼び、「はこべの家=星の子」というイメージが顧客にはすっかり定着した。このキャラクターは、静岡県在住の著名な車いす画家・太田利三さんに描いてもらったものである。

「誰にでもきっと、キラリと光る可能性がある。誰かを照らす、灯になってあげることができる。みんな、星の子。一人では輝けないけど、一緒なら、叶えられそうな夢がある」というのが、キャラクターに込められたメッセージだ。さまざまな人々が協力し合うことで、利用者の生活自立を目指しているはこべ福祉会の目標の象徴である。「星の子」の満面の笑顔が、「はこべの家」の施設雰囲気をそのまま代弁しているようだ。

原料の大豆を目視で剪定するところから始める「星の子納豆」

「はこべの家」の代表的な商品といえば、やはり「星の子納豆」だろう。北海道国産大豆の特定品種(大粒:トヨマサリ、小粒:スズマル)だけを使った本格的な味わいは、納豆にうるさい人たちからも圧倒的に支持されている。大豆の味が濃く、その旨味が存分に楽しめるためだ。納豆独特の発酵臭も抑えられているので、納豆が苦手な人でも「これ(『星の子納豆』)なら食べられる」という声が少なくない。イラストとロゴを全面に打ち出したシンプルなパッケージも効果的で、施設近辺のスーパーでも全国ブランドの有名商品と同等に並べて販売され、固定ファンを獲得しているほどである。

「星の子納豆」の味の最大のヒミツは、準備段階で大豆を一粒ひとつぶ丁寧に目視検査をおこない、良質な豆だけを剪定している作業にあるのだと、サービス管理責任者の提中結実さんは言う。

「大豆を剪定するだけでそんなに味が違うのかとよく聞かれますけど、本当に違うのです。というのも、大豆の大きさが違ったり、豆に傷があると水の浸透時間が変わるため、豆ごとに煮上がる時間が違ってきます。これが最終的に納豆自体の味に影響してくるのです」

にわかには信じがたいこの話だが、実は人気漫画「美味しんぼ」でも同様のテーマが取りあげられたことがある。『もてなしの心』という話である(単行本第5巻「青竹の香り」に収録)。この中で海原雄三が、米を一粒ずつ剪定することで驚くほど美味しいごはんが炊きあがることを熱弁している。どんなに最高の素材を使い、火加減に気を使っても、米粒の大きさが不揃いだと炊きあがったときに微妙なムラができてしまう。その微妙な差が、仕上がりで決定的な味の差となるのだと。

「星の子納豆」の大豆の目視剪定の重要性も、これとまったく同じ理屈である。しかし実際に作業をやるとなると、膨大な労働力が必要なので一般企業ではとても真似できないはずだ。幸いなことに、「はこべの家」には根気があって細かい作業を得意とする利用者たちがたくさん在籍している。もはや大豆の剪定作業は、この施設の代名詞といってもよいほどの名物シーンだ。10名程度の利用者が、毎日真剣に豆を選び抜いている。彼らの影の力で、他の追随を許さない「星の子納豆」の素晴らしい味わいが保たれているというわけである。

さばのへしこ、県産果実にこだわったジャムも大人気

納豆と並んでその味わいがグルメたちに高く評価されているのが、「星の子亭・鯖へしこ」である。へしことは若狭地方に昔から伝わる発酵食品のことで、鯖を糠で漬け込んだ鯖へしこが美浜名物として有名だ。名物ではあるのだが、保存食として食べられていたこともあり、現代の味覚からすると少し塩辛すぎるという欠点もあった。「はこべの家」で鯖へしこを開発するにあたり、一番大切にしたのが現代人の味覚にマッチした味付けと、食の安全性だという。

鯖を漬ける米ぬかは、ピロール農法によって栽培された米ぬかを使っている。ピロール農法とは、「らん藻(シアノバクテリア)」を活用することで、土の中の微生物を豊かにし、ビタミンやミネラルなどの栄養素を増やすだけでなく、農薬などを分解・浄化をもおこなうという環境に優しい栽培法である。この農法で育てると、栄養豊かで甘みがある作物ができると言われている。

「星の子亭・鯖へしこ」の米ぬかは、それだけ食べても十分に甘さを感じられるほどだ。「へしこは塩辛くて苦手」と先入観を抱いている人も多いが、そんな人にはぜひこのへしこを食べてみてもらいたい。ピロール米の米ぬかを使用することにより、塩辛さが抑えられ、食べやすく美味しい味に仕上がっているのである。

また、付け汁に福井県嶺南地方の銘酒「早瀬浦」とその酒粕を使うことで、独自の旨味と甘みを引き出すことに成功した。ごはんのお供にはもちろんのこと、日本酒のお供としてもこれ以上格好のものはないだろう。土産物屋でよく販売している鯖まるごと1本のサイズではなく、「1/2本」や「1/4本」、食べやすくカットされた「スライス」、酒で塩抜きした後に軽く炙った「炙り」、へしこを細かくフレーク状にして炙った「極み」等、さまざまなバリエーションが揃っているのも、へしこ初心者には買いやすい。パッケージもお洒落であり、贈答品にも最適だと地元でも非常によく売れている。売上は年々増加しており、毎年春と秋に施設の裏庭でおこなわれる恒例の鯖干し作業は壮大な風景になってきた。

もう一つの「星の子製品」が、はこべジャムである。県内産でなおかつ無化学、減農薬(無農薬)等にこだわったいちご、いちじく、うめ、ブルーベリー等を使って丹念に炊きあげた伝統的な商品だ。この施設が作る自主製品としてはもっとも古い歴史を持っている。

若狭町特産の「西田梅」を青梅のまま使用した梅ジャムはとくに好評で、はこべジャム一番の売れ筋でもある。梅独特の爽やかな酸味と緑色、ほのかな香りが特徴で、アイスクリームとの相性も抜群である。地元の観光スポットでは、梅ソフトクリームとして販売し、好評を得ているらしい。

Facebookで施設の情報発信をスタートさせた

「はこべの家」では、2013年から本格的にFacebook(フェイスブック)を使った情報発信もスタートさせた。ホームページを超えて、いまやインターネットの必須ツールといわれるFacebook。最近ではいくつかの福祉施設でも活用し始めたようだが、「はこべの家」の特色は利用者自身が情報発信の担い手であることだ。普段はIT事業部の一員として、ホームページや印刷物の制作を一手に担っている山口巧・貴志兄弟が、Facebookを担当しているのである。施設の最新情報や製品情報について、できるかぎり毎日更新するように心がけているという。

「ブログと違い、Facebookの場合は書き込んだ原稿に対して直接反響が見えるのが楽しいですね。『いいね!』ボタンを押してもらえるだけでも、『誰かが読んでくれているんだ』とわかるので、張り合いがあります。友だちのつながりがどんどん増えていくのも、Facebookの特徴でしょう。福祉の関係者であれば、その友だちはきっと自分たちの活動に理解ある人たちです。どんどん積極的に私からアプローチしていきたいと思います。今の目標は『友だち100人できるかな』ですかね(笑)

ちなみに補足説明しておくと、Facebookでは一度友だちになると彼らが書き込んだ最新記事が「ニュースフィールド」というページで一覧表示されるシステムになっている。それぞれのページをわざわざ見にいかなくても、自分の友だちの最新書き込み記事を一挙に読むことができるわけだ。これがブログとの最大の違いである。友だちが多い人ほど、自分の記事はたくさんの人に読んでもらえることになる。

上手くFacebookを使いこなしている人になると、友だちの数が1,000人を超えていることも珍しくない。ここまでくると、もはやちょっとしたメディアの域である。しかも読者は不特定多数ではなくて、ある程度自分のことを理解していることが前提とした人たちだ。さまざまな企業や団体が、Facebookの活用法を必死で模索しているのもうなずけよう。

「はこべの家」がトライしていることは、まだまだ初歩的なことにすぎない。しかし福祉施設が、自分たちの組織の理解者を増やしていくために定期的に情報を発信するのは非常に大切なことである。しかもそれを利用者の仕事とし、彼らの力ではこべファンを増やそうという動きは、本当に素晴らしい。

「毎日更新」というノルマに「毎日、ネタを考えるのが辛いです。脳みそが焼けそう(笑)(山口さん)というほどのプレッシャーを感じていると言うが、楽しそうでもある。彼らの頑張りがきっと、「星の子製品」の売上向上にもつながっていくはずである。ぜひ皆さんも、「はこべの家」のFacebookを見たら「いいね!」を押してあげてほしい。

大きく化けるか、水稲用育苗マット

最後に、「はこべの家」のメイン事業である水稲用育苗(ジーザック)マット事業に触れておこう。稲の苗床づくりの際に、床土の代わりに使用する専用マットのことである。これを使って苗を育てると、抜群の根張りで軽量、欠株・浮き苗のない苗床を作ることができる。しっかりとした根張りの効果は、台風などの災害時にはっきりと現れる。たとえ激しい風が来たとしても、稲の倒れ具合がまったく違ってくることが実際に使用した農家によって証明されているのだ。しかもマット自体は、竹やアシなどの非木材繊維から作られているので、田んぼの土に100%生分解されていく。超軽量のために播種作業の体への負担を軽減し、農作業に費やす時間を大幅に軽減してくれるという、画期的な商品なのだ。(特許第3811802号取得済)

滋賀県内の民間企業(東亜システムプロダクツ株式会社)が開発したこの商品の製造・販売権を「はこべの家」が一手に譲り受け、「かぐや姫工場」と名付けた建物で製造している。工場設立の際には人口10,000人あまりの福井県美浜町からの助成金や、地元企業や地域住民の方々からも多くの寄付金を得たという、地元の期待を背負った事業でもある。

「スタート当初は、ジーザックマットで就労継続A型事業所を運営しようと考えていました。開発した企業が全国のホームセンターチェーン店などに営業をかけ、私たちは制作に専念するという受託生産方式だったのです。残念ながら相手先の事業トラブル(倒産)があり、構想はゼロから作り直し。今は自分たち自ら製造から販売までを手掛けられるようになりました。思わぬ事件でしたが、下請けではなく自社製品として売り出せるようになったと前向きに捉えています。しかし特殊な製品だけに、まだ私たちの営業力が追いつかないのも事実で、手探り状態が続いています。今後の『はこべの家』のことを考えると、ジーザックマット事業の拡大は非常に大切なテーマであります。営業展開によっては大きく化ける可能性も秘めているので、福井県セルプセンターや日本セルプセンター等の協力もぜひ仰いでいきたいですね」(四ッ橋政和施設長)

納豆・ジャム・へしこに続いて、ジーザックマットがこの施設の代表的な商品となった時、「はこべの家」の事業は大きく変貌を遂げているに違いない。水稲関係者には非常に価値ある商品である。是非とも頑張って、全国にPRしていただきたいものだ。

(写真・文/戸原一男)

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社会福祉法人はこべ福祉会(福井県美浜町)
http://hakobe.org

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。