社会福祉法人石川サニーメイト(石川県野々市市)

最先端のオンデマンド印刷に活路を見いだす「サニーメイト福祉工場」

石川サニーメイトの概要

石川サニーメイトは、「サニーメイト福祉工場」(就労継続支援A型事業・就労継続支援B型事業)、「セルプはくさん」(生活介護事業・就労継続支援B型事業)、「グループホーム野々花苑」(共同生活援助事業)等の障がい者福祉サービス事業を運営する社会福祉法人である。

中心となる作業は、サニーメイト福祉工場のA型事業で取り組む印刷だ。もともと石川県が設立した身体障害者福祉工場の印刷課として取り組んでいた作業だが、需要の拡大とともに売上高を拡大していき、石川サニーメイトを代表する職種となっていった。

現在では年間総売上が7,600万円を超え、利用者への月額平均工賃は146,363円という堂々たる事業所に成長している。

石川サニーメイトの外観

サニーメイト福祉工場の印刷事業の特色

印刷事業所としてのサニーメイト福祉工場の最大の特色は、少部数の印刷物に対応したオンデマンド印刷を主力としているところだろう。オフセット印刷に関しては、帳票類、封筒等があるが、冊子・パンフレットなど、ほとんどオンデマンド対応となっている。

オンデマンド印刷とは、「必要に応じた」印刷対応が可能なデジタル印刷のことだ。これまでの手法と違い、パソコンで制作されたデジタルデータをそのまま出力していくため、1部からの印刷が可能である。しかも石川サニーメイトの設備は、富士ゼロックスのオンデマンドシステム。データ→出力(印刷)→丁合(頁順に並べ替えること)→製本(中綴じ等)までの工程を、一瞬のうちに完了させてしまうスグレモノだ。

サニーメイト福祉工場の由本施設長は、次のように語っている。

「当工場がオンデマンド印刷に本格的に取り組んだのは、1997年のこと。石川県内の印刷事業者として、オンデマンドシステムを導入した第一号となっています。オンデマンド印刷といっても、当時はまだ高速プリンター程度の機械が主流でしたから、一つのシステムで印刷から製本まで完成してしまうのは画期的なことでしたね」

  • オンデマンドシステム
  • 製本機器

少部数印刷というニッチ産業で勝負する

現在は、工場内にオンデマンドシステムを3台導入(カラー1台、モノクロ2台)している。現在のシステムはちょうど最新のものに入れ替えたばかりであり、スピードも品質も対応メディアも格段の進化を遂げている。

「ここ数年で、カラー印刷の精度が素晴らしくアップしました。オンデマンド印刷では、これまではどうしても写真を綺麗に印刷することができませんでしたからね。今回導入したシステムにより、オフセット印刷とほぼ遜色ないほどの仕上がりを保障できるようになりました。スピードも高速になりましたし、紙以外のメディア(フィルム等)にも印刷可能です。オリジナルのクリアファイルの作成など、今後は新しい需要にもお応えできるはずです」

と、由本施設長。オンデマンド印刷工場の先駆けとして、サニーメイト福祉工場がこだわっているのは「少部数印刷」というニッチ産業だという。これまでの業界の常識だと、少部数印刷は労力が多いわりに売上が上がらないため、積極的に取り組んでこない分野であった。しかし急速にデジタル化が進み、印刷業そのもののあり方が変化を遂げつつある現在、過去の常識に捕らわれてはいられない。

「大切なのは、お客様の立場に立つことです。これまではカタログを印刷する場合、ほとんどのお客様は一度に何千部も印刷し、何年も使いまわしてきました。でもオンデマンド印刷を活用すれば、一度に印刷する数は必要最低限に抑えられます。修正箇所が出てきたら、その都度増刷すればいいのです。私たちはお客様にとってのそんなメリットを提案し、積極的に少部数印刷の案件を受注するようにしています」(寺田聡勝事業課長)

デジタル化が生んだ、新たな障がい者雇用

ところでサニーメイト福祉工場が積極的に進めてきたデジタル化対応は、障がい者の就労施設として思わぬ二次的効果があったという。それは、工場内で働くことができる障がい者を増やすことにつながったというのである。石川サニーメイトの正木明理事長は言う。

「印刷工場というのは、障がい者が働ける部署はとても限られているのが現実でした。しかし当工場の完全デジタル化によって、印刷現場が大幅に変化。大型印刷機や製本機にかわってコンピュータシステムが導入されたので、車いすの人でも安全に操作ができるようになったのです」

印刷業において、かつてはほとんどの障がい者の職場が文字入力部門に集中していた。しかし近年の急速なパソコン普及により、文字入力という仕事そのものが激減していく。この結果、印刷業を行っていた多くの障がい者就労事業所は、業界不況も相まって他業種への転換を進めているケースが少なくない。しかしサニーメイト福祉工場においては、むしろ障がい者就労の場を増やしたというのだから面白い。中途半端なデジタル化にとどまらず、最先端のオンデマンドシステムに特化した事業方針の勝利といっていいだろう。

サニーメイト福祉工場の自主製品、「アイメイトノート」

最後に、オリジナル商品「アイメイト」ノートについて軽く触れておきたい。盲導犬協会(財団法人アイメイト協会)とコラボし、サニーメイト福祉工場が企画した自主製品である。可愛らしい盲導犬の写真が表紙を飾る、犬好きの人たちにはたまらないノートだ。可愛いだけでなく、「Stay(待て)」「Good(よしよし)」「Chair(椅子へ)」「Straight Go(まっすぐ進め)」等々、盲導犬の代表的な指示ワードがデザインされていて、表紙の裏には詳しい解説が書いてある。楽しみながら、盲導犬についての知識が身につくようになっている。

この商品について、寺田事業課長は次のように語っている。

「県内で開催される福祉のイベントに参加するときに、石川サニーメイトとして販売できるオリジナル商品ができないかというのが、『アイメイトノート』誕生のきっかけでした。印刷事業という自分たちの特性を活かしながら、販売収益の一部を財団法人アイメイト協会に寄付するという社会貢献型商品となっています。盲導犬の写真がとてもよく撮れているので、女性たちからも大人気。日本セルプセンターの紹介で、「中央ろうきん」のポイントグッズ商品に選考されたり、さまざまな団体からの記念品としても使われているのですよ」

現在は、第2弾としてメモ帳シリーズも発売中である。社会福祉法人の社会貢献活動が求められている現在、サニーメイト福祉工場による「アイメイト」グッズの商品展開は非常に価値ある事業だといえる。

平成25年より施行された(障害者)優先調達法によって官公庁や外郭団体からの発注が期待できるようになったとはいえ、激しい価格競争にさらされている印刷業界。そんな中、サニーメイト福祉工場ではつねに時代を先取りした印刷システムを導入し、道を切り開いてきた。「アイメイト」グッズのようなユニークなアイデアを活かし、今後も新しい事業展開を模索してみてほしい。

アイメイトノート

(写真・文/戸原一男)

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。