社会福祉法人名古屋ライトハウス(愛知県名古屋市)

“ひとりの幸せのために”をモットーに障がい者の“はたらく・くらす”を応援し続けます

名古屋ライトハウスの概要

名古屋ライトハウスは、障害者支援施設「光和寮」(就労継続支援B型事業・就労移行支援事業・生活介護事業)、障害者支援施設「明和寮」(就労継続支援B型事業・就労移行支援事業・生活介護事業)、多機能型事業所「港ワークキャンパス」(就労継続支援A型事業・就労継続支援B型事業)の3つの障害者就労支援施設を経営する社会福祉法人である。これらの施設では就労支援事業だけではなく福祉ホームや居宅介護等・移動支援事業も運営する他、法人全体として「みなとライフサポートセンター」(障害者地域生活支援センター・地域活動支援センター・児童デイサービス)、「名古屋盲人情報文化センター」(図書館事業・点字出版事業・IT&用具サービス事業)、「瀬古第一マザー園」(特別養護老人ホーム)、「瀬古第二マザー園」(養護盲老人ホーム)等も経営している。

法人の設立は、60年以上前の1946年まで遡る。満州事変での兵役中に銃弾によって失明の憂き目にあった近藤正秋氏(初代理事長)と、名古屋盲学校の教師であった片岡好亀氏が中心となって、戦災盲人救済のための共同治療所を設置。その後、対象を視覚障害者全体に広げた就労支援組織・愛知県盲人福祉協会として活動を広げていくことになる。社会福祉法人名古屋ライトハウスと改称(1957年)した現在では、法人全体の利用者数773名(内、就労系支援事業は333名)という大規模な組織に発展している。歴史・規模共に日本でも有数の社会福祉法人であり、就労系支援施設として全国でも最高水準の工賃を達成してきた輝かしい実績を誇っている。

空き缶のリサイクルから事業がスタート

名古屋ライトハウスの象徴的事業といえるのが、「港ワークキャンパス」における「ライトハウス名古屋金属工場」(就労継続支援A型事業)だろう。これはブリキを加工して、塗料や溶着剤などを保存する缶を製造する作業である。材料をカットするスリッター、部品を型抜きするプレス、そして缶の形に加工する組立と、工場内は主に3工程に分けられている。巨大な工場の中で高度な機械ラインとともに作業が進行し、丸缶や角缶、バケツ型のテーパー等が次々と生み出されていく様は、まさに一般的な企業の製缶工場そのものだ。事実、工場の年間売上は24,262万円に達し、ここで働く障害者の数は60名にも及んでいる。A型事業所のため、彼らの工賃(給与)はもちろん最低賃金以上の数字である(平均月額工賃は、102,900円)

製缶事業を始めるきっかけとなったのは、戦後日本において空き缶等進駐軍の廃品を払い下げる権利を取得し、それらを再活用した事業をおこなったことである。初代理事長近藤正秋氏の息子である近藤正臣現・専務理事(68歳)は、次のように語っている。

「当時は、進駐軍の出したゴミもすべて宝物となるような時代でした。空き缶を伸ばして板状に伸ばすだけで、製品として売れたのです。それらを使って下駄の裏の塙の金具に加工したり、金属製の殺虫剤の噴霧器を製造したり、いろんな製品を作っていきました。現在ではもちろん中古品のリサイクルでは商売になりませんので、新品のブリキを加工する製缶業を中心に事業展開しています」

「缶入りパン」は、名古屋ライトハウス初の自主製品

時代と共に次々事業を拡大し続けてきた名古屋ライトハウスが、2006年から新たに手掛けたのが「KAN食品開発センター」(就労継続支援B型事業)である。これまで名古屋ライトハウスの事業は受託生産が中心であり、自主製品製造部門をもっていなかった。しかし受託事業だけではいずれ厳しい時代が来ると考え、「市場的に未成熟な分野」での製品開発を検討することになった。そんな折り、防災食品として「缶入りパン」の製造を始めた施設が北海道にあることを知り、そのノウハウを教えてもらって事業化したのだという。

防災食品というと「缶パン」に代表される乾燥食品が普通だった時代に、缶を開けるだけで作りたての柔らかな美味しいパンが味わえる「缶入りパン」というのは画期的商品であった。日本人の食に対するグルメなこだわりは、非常食品の分野にまで及んでいる。美味しい白米とか、五目ご飯、煮込みハンバーグ、さばの味噌煮等、保存パックの技術進歩と共に次々新製品が生まれているらしいが、「缶入りパン」もその延長線上にある商品なのだろう。

缶切りを必要といないイージーオープン缶を手で開けると、2個のふっくらパンが缶の中から現れる。食べてみると、保存食の常識を越える食感である。焼きたてそのまま、ふんわり柔らかな美味しい状態が見事に保たれているのだ。「缶入りパン・パンですよ!」と名付けられた名古屋ライトハウスのこの商品、チョコチップ味・レーズン味・コーヒーナッツ味の3種のラインアップが揃っている。一缶に2個入っており、賞味期限は3年である。防腐剤などは一切使用していない。またマーガリンや卵や砂糖をたっぷり使用した高カロリーパンなので、災害時の栄養補給にも最適の食品となっている。

「非常時の備蓄用としてはもちろんですが、JR東海さんでは台風で新幹線が停車してしまったときにお客さんに配布する朝食用としても活用していただいているようです。また一人暮らしの高齢者向け食品としても注目が集まってきているようですね。長期保存できるというこの商品のメリットを最大限活かした利用法だと思います。高齢者向けの通販カタログに掲載してもらっているのですが、コンスタントに売れているのですよ」(加藤 崇さん/KAN食品開発センター課長)

「缶入りパン」製造のノウハウを、他施設にもすべて公開

事業が開始してから約5年。現在の缶パン事業の年間総売上は、6,400万円へと成長した。年間で300,000缶が製造されており、この部門の平均工賃は39,000円に達しているという。防災用品に対するニーズは時代と共に高まっているものの、その分ライバル業者も増えてきている。とくに防災食品に関して、大手食品メーカーが次々に本格参戦するようになった現在、これからの展開は商品開発力がますます問われることになるそうだ。

名古屋ライトハウスでは、この「缶入りパン」製造事業を始めたいと希望する同業者(障害者就労系施設)に対し、事業立ち上げまでの完全サポートもおこなっている。製造工程の指導(粉の配合や焼き方)から機械設備の選定、原材料の仕入れに至るまで、あらゆるノウハウを無償提供するというものだ。決してフランチャイズ制を採用しているわけではない。人材の派遣費(実費)以外は完全ボランティアであり、あくまでSELPの仲間に同業者を増やすことによって「共同受注・共同生産」体制を確立しようという主旨に基づく活動なのだ。これまでにみやこ福祉会(京都府)や、社会福祉法人童里夢(愛知県)等、2施設のPan-Kan製造センター設立を指導してきた。

「非常食という製品の特性上、官公庁などの取引に成功すると、何百万食という受注が見込めます。その時に備えて、同じ品質の商品を共同生産できる体制を整えておくことが重要だと考えたわけですね。現実にはなかなか理想通りには進んでいないようですが、基本体制は出来ているので受注さえあればいつでも共同生産は可能なのですよ」と、近藤専務。この理想のシステムを活かせるかどうかは、すべて営業力次第というわけなのだろう。

SELP自販機100台設置を目標にした新プロジェクト

名古屋ライトハウスの新しい動きを、もう一つ紹介しておこう。「明和寮」で新しく始まった「きらっとOneプロジェクト」である。このプロジェクト名は、企業の「き」とライトハウスの「ら」をとり、共にひとつ(One)に繋がるという意味合いがある。この活動は、日本セルプセンターが会員施設や企業に設置推進をしている「SELP自動販売機」を、「明和寮」として本格的に事業活動の一環として取り組み、なんと一年間で100台の設置斡旋を実現させようという一大プロジェクトだ。

そもそも「明和寮」では、印刷・組立・自動車部品・包装加工の4部門に分かれて、100名もの利用者が働き、年間1億9千万円もの事業を展開している。利用者工賃は月額平均37,700円である。全国平均と比較すれば決して低い工賃とは言えないが、これをさらにランクアップさせるのが厳しい状況にあるのも現実だ。そんな中、新たに加入した営業マン氏の発案もあって「SELP自動販売機設置推進事業」に注目が集まることになった。

ご存じの方も多いと思うが、ここで「SELP自動販売機」について簡単に説明しておこう。これは日本セルプセンターが株式会社ジャパンビバレッジとタイアップして実施している社会貢献型の自動販売機設置推進事業である。SELPマークの付いた飲料水自動販売機の設置を斡旋するだけで、販売利益の一部が日本セルプセンター並びに地方の就労支援組織の活動費として還元されることになる。

会員施設がこの自動販売機をユーザーや関係団体に設置斡旋した場合、その自販機売上の一定額がマージンとしてフィードバックされる仕組みにもなっている。1台導入するごとに用意されている設置特別奨励金も無視できない金額だ。こうした「SELP自動販売機」事業の全体を知った営業マン氏が、「もっとも効果的に工賃アップが図れる事業なのではないか」と提案し、「明和寮」の新たな事業の柱とすることになったというのだ。

「やるなら日本一」。いずれ、法人全体の取り組みに

もちろん名古屋ライトハウスとしても、これまでSELP自動販売機設置活動に取り組んでいなかったわけではない。法人内を中心にして十数台の導入実績があり、日本セルプセンターから優秀施設として過去に表彰もされている。しかし今回の「明和寮」の動きは、それとは一線を画するものである。本格的に「事業」として取り組むだけでなく、施設の参加者全員が営業マンとなって積極的に動き出した活動であるからだ。

2010年11月11日にキックオフミーティングが開かれ、施設長(寮長)自らこのプロジェクトの主旨と、営業活動の進め方を説明している。会議には職員だけでなく、利用者も全員参加して「明和寮」としての意思統一を図った。この時のことを小澤泰治課長はこのように語っている。

「どうせやるやら日本一を目指そう。100台導入したら間違いなく日本一になるので、本気になってみんなでこの目標を達成しよう。そんな思いを寮長自らみんなの前で熱く語ったので、会場は異様な盛り上がりになりましたね。全員で『やってやるぞ〜』と雄叫びを上げる事態になりました。ミーティングのあと、職場には現在の達成状況をリアルタイムに把握できるような掲示板も設置しています。自分の知り合いにチラシを配布したり、電話で説明する活動からスタートしているのですが、むしろ利用者の迫力に職員が追いついていない状況ですよ(笑)

キックオフミーティングのあとすぐアポ取りをし、実際に1台の導入を決めたという実績の持ち主である利用者の加藤宜之さんに話を伺った。

「私は普段は印刷部門の文字入力や校正の仕事をしていますけど、本当は人と話すのが好きなので、外に出て営業的な仕事がしたかったのです。SELP自販機の話を聞いたときには、『これだ!』と思いましたね。知り合いの病院の事務局長にその場で電話して、翌日交渉に行きました。とりあえず1台導入してくれましたし、法人内の他の8病院にも紹介さていただけることになっています。今後もどんどん営業していきますよ」

重度の言語障害を持つ彼が、これほどやる気を出しているという姿を見ると、このプロジェクトが成功することは間違いないだろう。障害者の工賃アップをめざしてさまざまな取り組みが全国でおこなわれている中でも、「明和寮」の「きらっとOneプロジェクト」は利用者も含めた施設全体が一丸となっている点において、高く評価できる活動なのではないか。

施設の正面には「めざせ日本一! 自動販売機設置 目標100台」と記された横断幕の文字が躍っている。施設内にはポスターが至るところに貼られ、メンバー全員の胸にはバッジまで付けられている。これらはすべて、「ここまで謳ったからには、何が何でも目標を達成しないわけにはいかない」(野々下寮長)という「明和寮」としての決意表明なのである。もちろん「明和寮」で成功した暁には、名古屋ライトハウス全体としての取り組みも視野に入れているらしい。

ぜひ目標を達成していただき、SELP自販機設置事業だけでも施設の収益事業の一つの柱となり得ることを証明していただきたいと思う。そしてその活動は、他の施設はもとより日本セルプセンターを初めとする各県セルプセンター等にも刺激を与えてくれることだろう。

(写真・文/戸原一男)

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。