社会福祉法人亀岡福祉会(京都府亀岡市)

地域住民との共生をめざし、地域の課題解決型商品「丹亀」ブランドを開発

亀岡福祉会の概要

亀岡福祉会は、かめおか作業所(就労継続支援B型事業・生活介護事業)、第二かめおか作業所(生活介護事業)、第三かめおか作業所(就労移行支援事業・就労継続支援B型事業)等の障がい者就労系事業所を運営する社会福祉法人である。この他、デイセンターぽれぽれ(生活介護事業)、ホームヘルプセンターゆめネット(居宅介護・重度訪問介護・行動援護・同行援護事業)、お結び・巴や(相談支援事業)、さらに七つのケアホーム等も運営している。

事業のスタートは、1978年の亀岡共同作業所にまで遡る。当時、地域には障がい者の通所施設が一つもなかったため、父母の会が中心となった無認可作業所を開設。その後1983年に法人化され、亀岡作業所(現:かめおか作業所)が開所されてからは、地域の中で独立した生活を願う利用者たちのニーズに応える形で成長を遂げてきた。現在は、亀岡市内に働く場や生活の場を設ける多様な福祉サービスを展開する法人となっている。

  • 第一かめおか作業所の外観
  • 第三かめおか作業所の外観

鹿肉を使った高級佃煮(かめおか作業所)

亀岡福祉会の活動としてまず注目すべきは、かめおか作業所が立ち上げた食品ブランド「丹亀 (TANKAME)」事業だろう。これは、亀岡地域の農業に多大な被害をもたらしている鹿の肉を使って加工食品を生み出そうという試みで、第一弾として「生ふりかけ 鹿山椒/鹿生姜」の発売がスタートした。この取り組みについて、西村直理事長は次のように説明する。

「もともとかめおか作業所では、縫製品の他に佃煮や漬け物などの自主製品を製造していました。これらの製品をもっとグレードアップするために、京都府工賃向上モデル事業を使い、プロのコンサルタントを派遣してもらって売れ筋商品の企画に乗り出したのが始まりです。そこで厳しく指摘されたのが、普通の商品を作っても大して売れるはずがないこと。作り手である自分たちが商品づくりでどんな思いを込めたいのか、地域のみなさんの力をこの商品でいかに結集するか、そんな重要性を教えてもらいました」

そこで西村理事長たちが調べていくと、地域には有形無形の地域資源がたくさんあるにもかかわらず、中山間地での農業・林業の担い手不足、耕作放棄地の増加、鹿や猪の鳥獣被害等の課題が山積していることがわかってきた。そこでまずは自分たちにできる取り組みとして鳥獣被害に注目。鹿肉を使った新製品を開発し、亀岡の土産製品として売り出すことによって、施設はもちろん地域全体が活性化する動きを狙ったのである。

「地域の鳥獣被害は、年々、深刻になっています。施設のまわりでも、日が暮れてくると鹿を見かけることがよくあります。畑の農作物や田んぼの稲をすべて食い尽くす勢いです。猟友会の方がいくら狩りをしても、とても追いつきません。私たちが鹿肉を食品として加工販売できれば、地域の困りごと解決のための第一歩になるのではないかと考えました」

と、石田將人所長。こうして亀岡地域の課題解決型商品としての丹亀ブランド商品第一号「生ふりかけ 鹿山椒/鹿生姜」が開発されることになった。

  • 鹿肉を使った高級佃煮 作業風景
  • 丹亀ブランド商品第一号「生ふりかけ 鹿山椒/鹿生姜」

高級京都土産としてグレードの高い製品が完成

ジビエ料理の普及により、最近では鹿肉も高級フレンチの素材として若い人たちを中心に人気が高まっている。しかし、一般的にはまだ美味しい食材と思われていないのが実情だ。かめおか作業所では、鹿肉の雑肉を佃煮ふうに調理し、独特の臭みをなくして誰でも違和感なく食べられるようにした。ブランド名の「丹亀」とは、丹後の「丹」に、亀岡の「亀」を指す。そして「丹=まごころ」、「亀=長寿」という意味も込められている。「鹿山椒/鹿生姜」がワンセットで2,500円の高級土産品とし、生ふりかけを入れるパッケージには岐阜県産のヒノキの升が採用された。完成した製品は、ほっとはあとEXPO in KYOTOや国際ホテルレストランショー等のイベントでお披露目された後、市内の土産物店や酒蔵、旅館などでの販売がスタートした。石田所長は言う。

「佃煮で使っているのは、高級ジビエではあまり使えないような前足部分の肉。本来、こうした部位は廃棄されることが多いのですが、筋を丁寧にとってじっくりと煮込めば美味しく食べられるのです。福祉施設だからこそ、これだけ手間をかけて食品に加工することができる。製品がヒットすれば、新しい亀岡の名物となって町が活性化するはずですし、なによりも鹿被害に苦しんでいる農家の人たちのサポートになれば嬉しいですね」

西村理事長の構想は、さらに大きい。

「将来的には、亀岡地区に食肉加工場を建設したり、ジビエレストランを展開することも考えられます。地域の食文化を守り、発展させていく事業を地域のみなさんと一緒に出来ればと思っています。実現すれば障害ある人たちが発信する、新しい形の地域活性化ともなります。地域の誇りが人をつなぎ、小さな経済を動かしていく。そんなように、丹亀事業を発展させていきたいですね」

  • 西村直理事長
  • 利用者による縫製作業風景

菓子の製造販売で高工賃を実現(第三かめおか作業所)

次に、第三かめおか作業所の活動内容を見ていこう。ここで製造しているのは、あられ・ポン菓子などの和菓子類と、パウンドケーキ・シフォンケーキ・タルト・ロールケーキ・クッキー等の洋菓子類である。亀岡産の餅米で餅をつき、日干し乾燥・切断した生地を焼き上げてつくる手作りあられやポン菓子、人気のパティシエに指導を受けてつくったケーキ類の数々は、手頃な価格と飽きない美味しさが地域でも高い評価を受けている。

高級土産品市場を狙った第一かめおか作業所の丹亀事業と違い、第三かめおか作業所の製品群は一つひとつの単価が低い菓子類ばかりだ。しかし亀岡福祉会の中では、もっとも高い工賃を実現する事業所(賞与込月額平均:約30,000円)となっているらしい。それはひとえに、日下部育子所長がリードする創造的な営業活動の積み重ねによるものだ。

代表的な販売活動が、学校への「菓子置き売り」だろう。これは、都心部のオフィス街ではお馴染みの「オフィスグリコ」という販売スタイルを参考にしている。小さなカゴを用意し、その中におかきやカットケーキ、クッキーなどを十数種類入れておく。食べたいときに好きな商品を自由に手にとって、代金を貯金箱の中に入れてもらうのだ。学校の先生にカゴを預けておけば、定期的に商品補充&代金回収するだけでいい。

「商品を入れるカゴは、大阪市の手作りクラフト作家さんと知り合い、特注で作ってもらいました。カゴに敷いたバンダナも、障がい者の手書きアートをプリントしたオリジナルを準備中。販売数自体は驚くほど多いわけではありませんが、福祉施設の存在を学校という場にアピールできることが大きいですね。カゴを置いてもらっているのは、小・中・高校の約40校。これは、亀岡市内のほぼ全校にあたります。ほんのり甘いシフォンケーキがとくに人気商品で、いつもほとんど売り切れてしまうのですよ」と、日下部育子所長。

  • 洋菓子類作業風景
  • 亀岡産の餅米で餅をつき、日干し乾燥・切断した生地を焼き上げてつくる手作りあられやポン菓子

市内100事業所に、月ごとの企画チラシを配布!!

驚くべき営業活動は、他にもある。地域内に散在する100の事業所(企業・官公庁・学校等)に毎月、商品の注文チラシを配布しているのだ。お中元やお歳暮シーズン、クリスマスやバレンタインといった特別なイベント時だけでなく、毎月欠かさず企画を考え、定期的に実行し続けていることがすばらしい。季節のフルーツを使った時期限定ケーキ(ブルーベリーチーズタルト、ダブルベリータルト、クリスマスチョコタルト等)、「なかよくわけっこ祭り」と称したシフォンケーキセット(カットした6種類の味を1ホール分にセットして提供)等々、企画のアイデアはまさに無限大といったところだ。

それだけではない。昨年からは新たに「作業所イロイロ手作りマーケット」と題する注文販売もスタートさせた。これは、全国の障害者施設製品を第三かめおか作業所で仕入れて販売するというものである。

「いろいろアイデアを絞っても、さすがに私たちの施設一つで提供できる製品のバリエーションには限度があります。でもお客さんを飽きさせないためには、もっと多様な企画が必要なのです。そこで全国の施設製品の中から、素材や味にこだわったモノを見つけてきて仕入販売する事業を始めることにしました。こうした考え方は、ヤマト福祉財団の『夢のかけ橋 実践塾』で培われたものですね。利益を出すためには自社製造にこだわらず、仕入れて販売する手法もあるのだということを、塾で徹底的に学びました」

  • 作業スタッフ一同

取り扱う商品は、日下部所長自らネット等で調べているのだという。長崎かすていら(長崎県:ワークセンターあさひ)、キノネンリン:バームクーヘン(和歌山県:おかし工房桜和)、ナツおばーの黒糖ピーナツ(沖縄県:ちむぐくる)、香りさんま一本塩焼風(宮城県:みお七ケ浜)等々、商品の種類も仕入れ先もじつにさまざまだ。こうしたバリエーションが顧客からも好評であり、長崎かすていらなどは500セットを売り上げる大ヒット企画になったという。

地域との共生をめざして

亀岡福祉会の就労系事業の中核を担う二つの事業所(かめおか作業所、第三かめおか作業所)の主な活動について、その概要を記してきた。二つの施設の取り組みは、一見するとまったく違った動きを進めているようにも思える。しかしそれぞれの活動の根本にあるのは、共に地域との共生を願う強い気持ちだろう。

最後に西村理事長が、今後の法人のあり方について語ってくれた。

「ご存じの通り、いま社会福祉法人の役割が問われています。近隣住民といかに協力関係をもち、共に暮らす地域づくりをめざすことが求められているわけです。そのため亀岡福祉会では、『自然豊かな亀岡の未来をつなぐ地域福祉会』の事務局を引き受け、地域活性化のための勉強会を定期的に開くようになりました。『おらがまち・むらのすごいところ大発見』というテーマで地域で活躍する事業者を紹介しあったり、他県の先進事例の視察に出かけたり...。ともに地域の課題を考え、解決していくことが、結果的に自分たちの事業にもプラスになるはずなのです。これからも地域の人たちと積極的に交流をもちながら、障がい者の就労の場を広げていきたいですね」

亀岡福祉会のチャレンジは、これからも次々と新しい展開を見せていくことだろう。

(写真・文/戸原一男)

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。