特定非営利活動法人すきっぷ(大阪府箕面市)

箕面の名物・ゆずを活かしたオリジナル菓子「まんまるゆずるくん」を開発

すきっぷの概要

すきっぷは、障害者作業所「すきっぷ」を運営するNPO法人である。障害者が地域に根ざし、生き生きと活動できるような場を生み出すために2003年に開設された無認可作業所が、2010年の法人化とともに就労継続B型事業所として再スタートを切った。

主な作業科目は、タオル加工・商品の値付け・シール貼り等の下請け作業と、クッキー等焼き菓子の製造販売である。最近では箕面市浄水場管理棟の清掃業務も市からの委託でおこなっている。

事業所がある箕面市は、紅葉の名所として知られる観光の町である。箕面大滝や箕面公園、西光寺や瀧安寺等の紅葉の美しさは、知る人ぞ知る名所としてシーズンには多くの観光客で町がにぎわっている。紅葉とともにゆずの一大産地としても知られ、箕面市ではゆずをPRするためのキャラクターとして「瀧ノ道ゆずる」を作成。全国ゆるキャラグランプリでも、4年連続(2011年〜2014年)大阪府内第1位の座を守るなどの人気を誇っている。

すきっぷ ファッサード

まんまるゆずるくんの誕生

すきっぷが「まんまるゆずるくん」という商品を発売したのは、2011年のことである。当時はまだ法人化してまもなく、自主製品としての焼き菓子製造も本格的にスタートしたばかりであった。地元の特産であるゆずを使ったクッキーやパウンドケーキを製造していたのだが、もっとインパクトのある商品を作れないかと試行錯誤を繰り返していた。そんな時に日本セルプセンターの「商品力向上のためのサポート事業」のことを知り、応募することになった。職業指導員の池田恵子さんは、当時のことを次のように振り返る。

「私たちはまだ開所したばかりの小さな事業所でしたから、ダメもとで応募してみたら支援が決定したという知らせを聞いてとても喜びました。焼き菓子製造をしていたといっても、専門家に教えてもらったことはなく、すべて自己流。もっと名物のゆずの味を活かしたクッキーをつくれないかと試行錯誤していたところだったのです」

日本セルプセンターから派遣されてきたのは、全国の障がい者事業所の成果・製パン指導を数多く手がけている加藤晃シェフである。さらに商品のデザイン等を手がけるプランナーも同行し、すきっぷのオリジナル商品を開発することになった。加藤シェフは、すきっぷが作っていた「ゆず風味のクッキー等」を試食した結果、まったく新しい商品の「月餅ふう饅頭」を提案する。加藤シェフはその理由を次のように説明している。

「ゆずの風味を焼き菓子に活かすのは、意外と難しいのです。下手な使い方をすると、苦みが先に立ってゆずの悪い面ばかりが前面に出てしまう。それにクッキーやパウンドケーキというのは、ありふれていて目新しさもありません。せっかくなら、すきっぷの独自性が出せる商品を作りたかった。ゆずと白あんの組み合わせはとても良いので、ゆず餡を入れた月餅ふう饅頭なら箕面市の新しい名物になると考えました」

  • すきっぷが以前から製造していた「ゆず風味のクッキー」製造風景
  • 利用者さんによる菓子の製造作業

大変だった製品づくり

しかし実際に提案された新製品を作るのは、簡単ではなかったと池田さんは言う。クッキーやパウンドケーキでも試行錯誤の段階だったのに、饅頭づくりとなると技術的にはさらに上のレベルを求められる。加藤シェフが泊まりがけで2回にわたって一から製品づくりを指導したものの、やはり完全にマスターするまでには相当の時間を要したらしい。

「一番大変だったのは、やはり包餡ですね。餡を生地で丸く包んだものをセルクルという金型に入れて押し、月餅の形にするのですが、この作業が非常に難しい。外目には綺麗にくるめたように見えても、カットしてみると加藤先生のモノとは違いが明らか。餡の周りの生地が綺麗に揃っている先生の饅頭と比べると、どうしても餡の位置に偏りが出てしまうのです。自分自身で納得いく製品を作れるまでには、半年近くかかりました。今ではもう、和菓子屋の嫁に行けるのではないかと思うほど上手くなりましたけどね(笑)

餡づくりもまた、苦労した作業であった。加藤シェフから指導されたのは、ゆず餡とゴマ餡の2種類。どちらも和菓子の餡に素材(ゆずやゴマ)を混ぜ込み、鍋でじっくりと炊き込んでいく。餡を混ぜる間は、焦げないように集中して鍋と格闘しなくてはいけない。どれくらい混ぜるかは、季節やその日の天候にもよるので、ベストの状態を身体にしみこませるしかない。「腱鞘炎にこそなりませんでしたけど、そうとう腕の力は付きました。鍋に穴が空くほど何度も、餡づくりに励んだのですよ」と、池田さん。

包餡した饅頭生地の上に、ステンシルの手法でキャラクターの絵をプリント(ココア生地)し、オーブンで15分ほど焼くとオリジナル饅頭の完成だ。利用者たちは材料の配合、計量から、皮づくり、餡の成形、饅頭の包装等の作業に関わっている。今後は包餡や餡づくりなどのメイン作業についても、少しずつ利用者の仕事を増やしていく予定だ。

  • 包餡した饅頭生地の上に、ステンシルの手法でキャラクターの絵をプリント
  • 苦労して習得した新しいお菓子「まんまるゆずるくん(月餅ふう饅頭)」画像は、オーブンで焼いた直後

市の名物として、大好評

完成した饅頭は、「まんまるゆずるくん」と命名した。箕面市のキャラクターである「瀧ノ道ゆずる」をプリントしているため、箕面市を対外的にPRする商品としても最適ではないか。そう考えた池田さんは、製品を持って箕面市長のもとを訪れている。

「市長の反応は非常に良かったですね。ゆずるくんを使ったグッズや食品は市内にたくさんあるのですが、お饅頭を作ったのはウチだけです。独自性がある製品だし、箕面の宣伝にもなるし、なによりも美味しい。市内の観光土産店すべてに置いてみたら?と、アドバイスをいただきました。さすがに全店には置けていませんが、駅前の土産物店や箕面市のアンテナショップ箕瀧案みのたきあんでの取り扱いが始まっています。紅葉シーズンにはたくさんの観光客が訪れますので、少しずつ観光土産として評判になりつつあるのですよ」

このような土産物店だけでなく、現在、安価なクッキー等の委託販売をおこなっている関西大学生協や大阪大学医学部食堂にまんまるゆずるくんを売り込みたいと考えている。もっとも一個が150円という価格の和菓子だけに、メイン顧客と想定しているのは若い女性ではなくて、やはり年配の女性たち。今後のカギは、いかにして箕面を代表する観光土産へと進化させていくかだろう。

幸い、2013年に発行された「箕面市民ガイド ふらっと箕面」という行政が発行したタウンガイドには、「たきのみちゆずるキャラクターグッズ」を代表する商品として「まんまるゆずるくん」が大きく取り上げられている。ゆずサイダーやゆずポン酢、ゆずマーマレードやゆずドリンクと並んで、横綱級の扱いだ。箕面市としてもやはり、福祉施設が箕面の特産物「ゆず」をアピールする製品をつくっていることに非常に好意を持っている証だろう。

  • 「まんまるゆずるくん」出来立てホヤホヤ
  • 「まんまるゆずるくん」商品画像

利用者の声と今後の課題

すきっぷで働く利用者の声を聞いてみた。「まんまるゆずるくん」の製造に関わる馬場伸子さんは、製菓部門以外にもタオルたたみや浄水場の清掃にも参加するオールマイティな利用者である。どの仕事にもそれぞれの楽しみがあり、さまざまな仕事を体験できるのがすきっぷの良さ。プライベートの趣味は、氷川きよしの歌を聴くこと。コンサートに行くのを楽しみにしている。

また製菓部門で材料の計量が担当の福島輝大こうだいさん。いつもは部屋の中の仕事ばかりなので、移動販売など外に出かける仕事もしてみたいと仕事への意欲を語る。歌が好きで、休みにはカラオケ教室に通ってレッスンを受けているほどだそうだ。

  • 商品の製造風景
  • すきっぷのみなさん

彼らの夢を叶えるためにも、すきっぷのメンバーたちは着実に事業を進化させていかなければならないと考えている。最後に、辰見賀代管理者に今後の方向性を語ってもらった。

「現在の月額平均工賃は、16,000円程度。下請け作業がほとんどだった無認可作業所時代と比較すれば、かなり上がっているとは思います。さまざまな利用者ニーズに応えていくためには、これからも試行錯誤が必要でしょう。自主製品の販売拠点として独自店舗を持つことは、今後の課題の一つですね。何とか実現して、『まんまるゆずるくん』を初めとするクッキーなどのお菓子類をもっとたくさんの人たちに気軽に買っていただきたいと考えています」

日本セルプセンターの「商品力向上のためのサポート事業」によってメイン商品を生み出し、箕面市を代表する観光土産の製造元として地域とも深く結びついたすきっぷの活動。これからますます発展していくことを期待したい。

(写真・文/戸原一男)

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。