社会福祉法人修光学園(京都府京都市)

修光学園は、民間スーパーとの合築によって作り上げた、街の中のパン屋さん

修光学園の概要

修光学園は、修光学園(知的障害者授産施設/新体系未移行)、HOLY LAND(就労継続B型)、飛鳥井ワークセンター(知的障害者授産施設/新体系未移行)を中心にして事業を営む社会福祉法人である。この他地域生活支援事業として、修光学園ディアコニアセンター(居宅介護事業・移動支援事業・ケアホーム)も運営する。

具体的な作業としては、修光学園が陶芸や製菓作業、リサイクル牛乳パックを活用したちぎり絵ハガキ等の製作などを行い、HOLY LANDがクッキーやケーキなどの製菓作業のほか、刺し子ふきんや織物などのクラフト作業、企業提携作業などを行い、飛鳥井ワークセンターが製パン事業のほか、スーパーとの提携事業、調理配食事業などをおこなっている。

運営の母体となったのは、1985年に日本福音ルーテル修学院教会内で活動が始まった修学院学舎だ。京都には日本で二番目に古い歴史を持つ児童福祉施設白川学園があり、キリスト教信仰による100年にも及ぶ福祉実践がなされてきた。この学園に勤務していた現修光学園理事長の森昇氏(60歳)が、学校卒業後の進路を心配する親の相談に応える形で心身障害者支援事業所「修学院学舎」をスタートさせる。これが現在の修光学園の前身となっている。

地域に根ざし、地域に開かれた施設

修光学園の基本理念は、「キリスト教の愛と奉仕の精神」である。「人はすべて自らを超える力によって生かされて今を生きています。そして、共に生かされてあることの気づきによってすべての人が同じ地平に立ったとき、この世の力の有無や障害の有無からも解放され、人は人のために生きるという共生社会がこの地上に実現するとの信念に基づき、障害のある方々の社会参加をめざそうとしたのでした」と、森理事長は法人設立20周年記念式典の冒頭式辞で語っている。敬虔なクリスチャンらしく、静かながらも力強い言葉で淡々と語りかけてくれるのが印象的である。

そんな経緯で生まれた施設であるだけに、「地域に根ざし、地域に開かれた活動」という方針は徹底し、修光学園の各事業所では地域の関係機関や団体との交流が活発に行われている。社会福祉協議会事業の一環として高齢者と利用者との交流の場が定期的に開かれ、学校教育の一環として、児童を対象に利用者が講師となっておこなう陶芸教室や、子育て支援事業の一環である親子クッキー教室という人気イベントも開催し、町内会の会合や、近畿地方では昔から盛んである地蔵盆という祭に至るまで、修光学園の施設はさまざまな地域集会の中心となっているのである。

さらに、こうした活動を集約させた一年に一度のお祭りとして、2007年から「HEART&HAND★EXPO」というイベントを修光学園が独自に開催。地元ショッピングモールのフリースペースで、地域内のさまざまな福祉施設(児童・高齢者・障害者)、教育機関(小中高等学校、大学)、福祉団体(社会福祉協議会等)、協力企業等と連携して展示販売会や活動紹介を実施し、地域内における関係団体とのネットワークを広げる努力を続けている。

これらはひとえに「これからは施設福祉から地域福祉の時代」と語る森理事長の信念によるものである。施設が地域福祉の中心を担うことによって得られる大切なものがある。そう考える森理事長は、京都市社会福祉協議会副会長、京都府社会福祉協議会理事、京都市ボランティアセンター運営委員長等20以上の公職を引き受けてきた。それによって、障害者の理想的な就労と生活環境を地域の中で実現させるという下地を培ってきたのである。

社会に通用する製品作りをめざして

修光学園の各施設で作られている製品自体にも、社会との接点が強く打ち出されている。それは「社会に通用する製品作り」をモットーとしている点だ。

たとえば、陶芸作業である。京都は清水焼が有名な地であり、窯元も多く存在している。陶芸作業を始めるに当たって、地元の陶芸作家である有岡進氏の指導を受け、氏が得意とする「練り込み」の技法を伝授してもらった。

「練り込み」とは、色の異なる陶土を組み合わせて模様を作るという、非常に高度な陶芸技法である。氏の指導の下に作り上げた修光学園の「練り込み」陶芸作品は、当然ながら施設製品とは思えないほど完成度が高い。価格も練り込み箸置きセットが2,300円(5個セット)と、立派な高級陶器の扱いである。

事実、練り込み箸置きは1991年度「Made in KYOTOベストデザインコンテスト」で、オムロンや京セラなど名だたる一流企業の製品と肩を並べて入選した実績を誇り、2006年に「六角扁壺」が京都デザイン優品に認定されるに至るまで、一般のコンテストに4度の入選を果たしている。

また、修光学園の牛乳パックを再利用したちぎり絵ハガキも、2006年には京都授産振興センター10周年記念製品コンペで特別賞を受賞し、大手カタログ販売業者の全国ルートにも乗っているほどである。この絵ハガキは、再利用したパルプ溶液に色糸を交ぜ、漉きあげていくという実に根気のいる地味な製品だが、センスあるイラストが手作り工芸品としての付加価値を格段にアップさせている。

さらに、1988年に開設した修光学園は京都府内で初めて製パン事業を手がけ、他施設をリードしてきた歴史を誇るが、一時期、東京の一流ホテルや有名チェーン店での勤務経験のある優秀な若手職人が加わり、基本のレシピを作り上げてくれた。その後はフランスに渡ったという実力の持ち主だけに、彼のレシピを元に作り上げるパンの味も折り紙付きで、修光学園のパンの評判は広く知れ渡っている。

1996年に開設した飛鳥井ワークセンターは、この修光学園の製パン事業を受け継ぎ、本格的な設備を整えて種類も製造数も格段にアップさせ、品質の向上にも努めた。

その結果が、パン作りに取り組む全国の障害者施設を対象としたパンコンテスト「第1回ユニバーサルベーキングカップ」(2003年)での大賞受賞であろう。初めて開催された大会のパン部門にオニオンブレッドを出品したところ、なんと最優秀賞を獲得したのだ。しかもこの大会には4回の内の3回にわたり本選出場を果たし、毎回優秀な成績を残し続けている。(本年度実施された第4回大会では、オレンジチョコドームが誠心学園賞(敢闘賞)を受賞した)

スーパーの中のパン工場、飛鳥井ワークセンター

しかしなんといっても修光学園の活動を語るときに欠かせないのは、飛鳥井ワークセンターという施設の就労環境だろう。前述の通りここはパンの製造販売もおこなっている事業所なのだが、なんと一階は民間のスーパーマーケット。つまり、民間企業との合築によって建設された全国でも珍しいスタイルの就労施設なのである。

もともとこの地には、京都市の公設市場があった。しかし老朽化した施設の立替が必要となり、その利用法について検討が進められているときに、森理事長が「新しい公設市場を、障害者も地域の中で働ける環境づくりに活用するべきだ」と提案し、関係各所に地道にアピールしていった。これまで地域の中で福祉活動を展開し続け、しかも複数の公的役職を兼任する森理事長の訴えに共鳴する賛同者は地域内に数多く、京都市民生局と経済局の初のジョイントという形で、森理事長の基本設計により1996年に画期的な共同施設が作られることになったわけである。

現在では1階は、公設市場の店主たちが共同で会社を設立したスーパー「グレースたなか」となっている。見る限り、買い物客たちが頻繁に出入りしているまったく普通のスーパーマーケットだ。そんな店舗の入り口の一角に、堂々と飛鳥井ワークセンターのパンショップ「HOLY LAND飛鳥井店」が軒を構えている。買い物客たちも、福祉施設のパン屋さんなどとは知る由もない。強いていえば、障害を持つ利用者たちによる一生懸命の接客が微笑ましいだけで、それ以外は美味しそうな焼きたてパンが並ぶベーカリーショップそのものだ。

しかし2階には、いわゆる施設のパン製造工場があり、たくさんの障害者たちが毎日必死にパンを作っているのである。何しろ店舗は、スーパーの入り口という好立地だから、焼きたての匂いにつられてお客さんがどんどん入ってくる。焼くのが追いつかないぐらい、食パンや菓子パン、総菜パンなどが店で次々に売れていくのである。作ったパンをどうやって売ろうかと悩んでいる施設が多い中、まさに憧れの環境だ。

「スーパーの10時オープンに向けて製品を焼き上げる必要があるので、スタッフは毎朝7時半出勤、従業員(※利用者の呼称)の一部は8時出勤の体制で働いています。ご覧の通り狭い工房内で20名ほどが仕事を分担しながら作業しているので、お昼の時間帯は本当に戦争状態ですね(笑)。でも作った製品が1階の店で売れていく様子がわかるので、やり甲斐はひとしおですよ。従業員も仕事が終わると、店を見に行ったりしているみたいです」と語るのは、製パン課チームリーダーの岡田康隆氏(36歳)だ。

統合された就労環境が、より多くの人に職場を提供する

飛鳥井ワークセンターの取り組みが理想的とも言えるのは、合築という共同作業で築き上げられた関係が次のステップに向かって着実に進歩しているところである。森理事長の構想の中には、「施設からスーパーへの一般就労」という道筋がもちろんあった。公設市場の店主たちはこんな考えにも賛同して共にビルを作り上げてくれているので、可能な範囲で利用者たちの受け入れをおこなう配慮をしている。これまでのパート雇用は4名に及び、現在は時間帯設定(午前か、午後のみ)のパート社員として、3名の利用者が一階のスーパーで働いている。

近くの就労の場として用意されているのは、スーパー「グレースたなか」だけではない。地元に複数チェーン店を持つスーパー「なかむら」とも提携し、飛鳥井ワークセンターから数メートル先にある作業場で各店舗に配送する野菜を個別包装する業務に17名の利用者が従事。スーパー「なかむら」の本店では2名のパート雇用も実現し、一般のパート社員たちと共に働いているのである。

つまり、ほとんど一つのエリア内に、施設利用者、一般就労者(パート勤務)等々、64名の障害者が働いていることになる。施設という隔離された環境ではなく、地元の人々が出入りするスーパーの内外にこれだけたくさんの障害者が共に働き、生活している姿が、なんとも素晴らしい。オープン当初はスーパー内を走り回ったりする利用者もいたらしいが、今ではそれも楽しい思い出だ。

複数の就労場所が用意されているので、ある人は午前中だけ飛鳥井ワークセンターで利用者としてパン製造を行い、午後はスーパー「グレースたなか」のバックヤードでパート社員として野菜の袋詰めをおこなう仕事に就き、またある人は、午前にスーパー「なかむら」でパート社員として商品のパック詰めの仕事に就き、午後は飛鳥井ワークセンターで利用者として仕事をすることも可能である。このように、本人の能力と希望に合わせ、複数の働き方を組み合わせながら少しでも高い工賃を出せるように配慮しているというわけだ。

「今のシステムのいいところは、一般就労ができた人たちも私たちの目が届くところで働いていることでしょう。何かあったときにはすぐ駆けつけることができますし。仕事の休憩時間にも、彼らは気軽に遊びに来てくれるので、毎日の様子がよく把握できるのです。でもやはり、若い人たちにはもっと外の世界に旅立ってほしいのも事実です。本当の意味で自立生活を送るためには、ここから卒業していくことも必要ですからね」と語るのは、川西恒センター長(53歳)。スーパーのパート業務で鍛錬された経験を持って、地域内のもっと多くの職場に就職してもらう事例を増やしていくことを理想と考えているらしい。

しかし、仮に彼らが飛鳥井ワークセンターなどの施設を修了し、地域で一般就労するときがやってきたとしても、彼らにとってそこは最も安心できる場所であることに変わりはないはずだ。地域の中で当たり前のように障害者が暮らし、働くという実践の土台には、日々のメンタルケアも大切な要素である。「すべての人が地域社会の中で尊ばれ、自らの意思で自立した生活を送ることができる共生社会の実現をめざす」という運営理念が根付いている修光学園は、そんなケアを地域ぐるみで実践しようという理想社会の実現に挑んでいるのである。

(写真・文/戸原一男)

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。