社会福祉法人東予福祉会(愛媛県今治市)

世界に誇る今治タオルの裏方作業を支える「朝倉作業所」

東予福祉会の概要

東予福祉会は、「朝倉作業所」(就労継続支援B型事業・生活介護事業)を運営する社会福祉法人である。今治湯ノ浦温泉のすぐ近く、笠松山の麓に施設は建っている。周りは緑に囲まれ、四季折々の花が咲き乱れる素晴らしい風景だ。

作業科目としては、地元今治の名産であるタオルの最終工程作業が主体となっている。具体的には、タオルの検品・仕上げ作業、袋入れ・シール貼り作業、ギフト用タオルの箱入れ作業、ヘム縫い作業等である。

メーカーから運ばれてくる大量のタオルの山を一枚一枚チェックし、折りたたんで袋詰めしていく。繁忙期には何千枚という色とりどりのタオルが施設の中に所狭しと並べられ、壮観な光景になるという。

今治タオルとは

ところで愛媛県今治市は、いわずとしれたタオルの名産地だ。現在でも日本のタオルの60%以上が、この地で生産されている。その温暖な気候ゆえ、江戸時代から今治では綿栽培が盛んであった。タオルの名産地として知られるようになったのは、明治時代からのことだ。

片面だけ毛羽立たせた丈夫な綿織物である「綿ネル」を産みだした後、大阪で生産が始まっていたタオルに可能性を感じて、綿ネル機をタオル織機に改良。ここから今治のタオル生産が本格的にスタートすることになった。今治が京阪神に近く、造船の町でもあり、海洋航路が整っていたことがタオル生産をここまで発展させた要因だと言われている。

もっともピーク時には560社もあったとされるメーカーも、現在では100社まで減少。市場では、安い中国産のタオルが中心になってしまった。そこで2006年から今治のタオル業界をとりまとめる四国タオル工業組合が始めたのが、「今治タオルプロジェクト」だ。海外でも高く評価される今治タオルの魅力を根本から洗い出し、本当に価値あるものを提供するために独自の品質基準を設け、ブランド化を図ることになる。プロジェクトのディレクションを手掛けたのは、日本を代表するクリエイターの佐藤可士和氏である。

こうして吸水性や脱毛率等のタオル特性、染色堅牢度など数項目にわたる厳しい基準をクリアした今治タオルだけに「今治認定製品」という基準が付与されることになった。現在ではそれらが贈答品用の高級タオルとして高い人気を誇っているのは、多くの人がご存じの通りであろう。メイドインジャパンの高級タオルの町として、今治は今でも日本のタオル産業の中心に位置している。

今治タオルの最終工程を担当

そんなタオルの町・今治地区にあるからこそ、朝倉作業所の事業は成立している。タオルの生産現場というのは分業制であり、紡績、染色、製織、プリント・刺繍、仕上げ検品といった行程に細分化されている。機械化がすすんだ現在でも、こうした分業が崩れることはない。朝倉作業所が担当するような末端の仕上げ検品作業も、タオルの今治というブランドを支えるための重要な役割を担っているのである。

もちろん朝倉作業所で生産に関わっているのは、今治タオル「認定製品」ばかりとは限らない。中国で生産され、船で大量に運ばれてきた安価なタオルの仕上げをおこなっていることも多い。しかしそのほとんどがメーカー品である。有名百貨店やカタログギフト等で取り扱われる海外超一流ブランド商品なのだ。

後藤浩文施設長(50歳)は、語っている。
「仕事は、地域のメーカーとの個人的な付き合いから紹介してもらうことがほとんどです。はじめは障がい者の施設に仕事を発注して大丈夫か?と疑問を持つような人もいますが、現場をみていただくとたいてい安心してくれますね。これまで一度もお客さんからクレームを受けたことはありません。唯一問題なのが作業スピードですが、これは近所の主婦の方々に外部スタッフとして協力していただくことで乗り切っています。農家の方々は、閑散期には積極的に内職仕事を請け負っていただけるのです」

いくら中国製品が安いといっても、品質チェックは必ず人の手でやらなければならない。中国で縫製されたブランド品などは、とくに厳しい検品能力が求められている。そのため、この仕事がなくなることはおそらくないだろう。一年を通じてほとんど仕事が途絶えないというのも、非常に魅力的だ。まさに、今治地区というタオルの名産地ならではの作業種目なのだ。

新体系により、ガラリと変わった施設の状況

朝倉作業所が新体系に移行したのは、2012年4月のことである。それまでは定員20名のうち、欠員を8名も抱える施設であった。後藤施設長はそんな激動の時期に施設長に就任し、組織改革に取り組んできた。

「このままでは新体系に移行したら破綻すると思い、必死で利用者確保に努めました。すると近くに別法人のケアホームなど関連施設がある影響で、知的障害者の入所が相次ぎ、これまでの身体障害者中心の施設から知的障害者中心の施設に様変わりしていったのです。急激な変化だったので、みんながとまどいました。利用者同士のコミュニケーションに問題が生じますし、作業能力や作業適性もまるで変わってしまいます。ここ1〜2年は、その変化に対応させるためにバタバタでしたね。やっと今、少し落ち着いてきたところなのですよ」

しかし、思わぬ収穫もあったという。たとえ生地の枚数が数えられなくても、タオルをたたませると誰よりも早く上手にたたむ利用者もいるし、シール貼り等の単純作業なら何時間でも没頭できる人もいる。仕事がピタリとはまりさえすれば、むしろこれまでよりも作業能力が高くなる場合があることに気付いたのだ。バスタオルなど大きい製品をたたむ場合には、2人一組でとりかかる必要がある。このように体を使う作業には、むしろ知的障害者の方が職業適性は高いといえるかもしれない。

「大切なのは、利用者にあわせて仕事を振り分けていくことですね。彼らにどんな行程を担当してもらうか、その見極めが大切な職員の仕事になりました。高級ブランドタオルなども入ってきますから、取り扱いには細心の注意は必要ですけど。万一、ハサミで傷でも付けてしまったら、1枚あたりの弁償額は大変なものになりますからね(笑)

課題はやはり、平均工賃の向上であろう。現在、約14,000円という平均工賃をどのように上げていくのか、試行錯誤が続いているらしい。下請け作業からの脱皮を提案する関係者もいるらしいが、後藤施設長としては仕事内容を変更するつもりはない。現在の朝倉作業所には、身体障害者から知的障害者まで多様な障害種別が混在している。障害の程度も、本当にさまざまである。そんな現場には、タオルの検品作業という仕事が最適だと感じているからだ。

世界に誇る今治ブランドタオルの品質を末端で支えている朝倉作業所の利用者たち。機械化された現代の生産工程においても、人の手で丹念に検品するという仕事が求められている。彼らは今日も、タオルの山に囲まれながら真剣に製品チェックに励んでいるのである。

(写真・文/戸原一男)

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。