社会福祉法人たまん福祉会(沖縄県糸満市)

利用者の夢の実現のために、地域と共に生きる「就労支援センターたまん」

たまん福祉会の概要

たまん福祉会は、就労支援センターたまん(就労移行支援事業・就労継続支援B型事業)、相談支援センターたまんを運営する社会福祉法人である。平成13年に設立された比較的新しい法人であり、利用者一人ひとりの夢や目標を実現させるための支援に積極的に取り組んでいることが特徴である。

法人ホームページを見ると、まるで一般の就職情報サイトのような雰囲気を呈している。これは障がい者という枠(障害者手帳のあるなし)にとらわれず、さまざまな要因のために仕事に就くことができない人たちのための就労サポートセンターでありたいというたまん福祉会の願いを反映したものだという。

「たまん」とは、ハマフエフキという魚の沖縄名から付けられた。突き出た口吻(こうふん)が笛を吹くようなところからその名があり、マダイやイシダイ同様に側偏型で力強い印象の魚である。糸満市の市魚でもあるという「たまん」。この名を法人名に冠することで、市民の人たちにより親しみやすい施設であることと、利用者たちが国境のない大海原(一般社会)を自由に泳いでほしいという願いが込められている。

作業としては、サン班・大地班(就労継続支援B型事業)・トライ班(就労移行支援事業)の3つに分けられ、それぞれTシャツプリント・受託作業、農園芸作業、段ボール組立等をおこなっている。

挨拶を基本として、利用者が「自信がつくよう」支援する

たまん福祉会の特徴は、利用者一人ひとりに応じてつくるという丁寧な支援プログラムにある。誰にもそれぞれ個性や感性があり、夢や希望がある。「とにかく施設に通うのが楽しい」という利用者もいれば、「就職して、自転車を買いたい」「バイクの免許を取りたい」...等々、その目的はさまざまだ。自分たちの仕事は彼らの夢が実現できるように「お手伝い」をすることであり、それが支援の基本的考え方になっているのだと金城幸範理事長(61歳)は言う。

「私たちがもっとも大切にしているのが、利用者に自信をつけていただくことですね。自信がつけば、明るく、すべてのことに意欲的になっていくものです。そのために個人個人の長所を徹底的に見つけて、ほめてあげる。そんな支援を心がけています。人に認められて自信がつけば、人は誰でも能動的になって、別のステップに向けてチャレンジする意欲が湧いてきます。人から指示されるのではなく、自分の意思で能動的に決定する能力を持つことが、彼らにとってとても大切なのですよ」

自信をつけさせる第一歩が「気持ちいい挨拶」である。単に挨拶するだけでなく、気持ちよい挨拶ができること。明るく「おはようございます!」と挨拶されると、人は誰でも爽快な気分になるものだ。些細なことのようだが、それが一般就労に向けたスタートでもある。利用者たちの働く姿を撮影するために現場を訪れると、彼らは明るく元気に私たちに声を掛け、ポーズをとってくれた。

デザインからお任せ。本格的なTシャツプリント事業

ところで就労支援センターたまんの代表的な作業品目が、Tシャツ等のプリントである。「オリジナルプリントTシャツを作ろう」というキャッチフレーズで、本格的な機材を取り入れたプリント事業が展開されている。

印刷方法は、シルクスクリーン印刷と転写プリントの2種類。シルクスクリーン印刷は複数色を刷るための多色機が用意され、転写プリントはパソコンでデザインしたデータをそのまま転写シートに出力できるようなシステムが組まれている。絵柄に合わせて転写シートがカッティングされるので、どんなに複雑なデザインでも簡単にプリントできるのが特徴だ。

下絵がなくても「こんなイメージで」という要望を伝えるだけで、無料でデザインの提案もおこなっている。まるで一般の印刷事業者のようなサービスだ。さまざまな団体・企業から次々に発注があるというのもうなづける。そのプリント技術には非常に定評があるようで、第23回なんぶトリムマラソン大会のオフィシャルTシャツやスタッフジャンパーにも採用された。第32回全国豊かな海づくり大会・美ら(ちゅら)海おきなわ大会では、大会キャラクターである「アバサンゴ」を使ったオリジナルTシャツの制作を委託されている。非常に可愛い大人気のキャラクターであり、大会期間中だけで1,000万円を超す注文があったという。

プリントするのはTシャツだけにとどまらない。ポロシャツやキャップ、スウェット、ブルゾン、エプロン、エコバッグ、タオルなどにも対応可能である。中心的なプリントであるTシャツやポロシャツのボディ(素材となるシャツ)には、多様なサイズ(子ども用6サイズ・大人用7サイズ)、多彩なカラー(Tシャツ44種類・ポロシャツ21種類)などから自由に選択することが可能だ。ここまで本格的にシャツの印刷を手掛けている施設は、全国でもあまり見たことがない。

大地(園芸)班のヒット商品は、大豆若葉

もう一つの自主製品事業が、農園芸作業である。無農薬で育てた島らっきょう、レタス、ナス、カラシナ、サンチュ、ナス、トマト等々、季節に応じた新鮮野菜を収穫し、道の駅や市内の飲食店等に卸している。このなかで最大のヒットとなったのが、沖縄でブームになりつつある新野菜「大豆若葉」だ。

「大豆若葉」とは、大豆を水苔の上に敷き詰めて、ハウスで7〜10日ほどかけて育てた新芽のことを指す。豆もやしと違って日光に当てるため、綺麗な緑色を帯びるのが特徴である。ビーンリーフとも呼ばれ、沖縄の食卓では目にする機会も多くなってきたが、出荷するのに手間がかかるため栽培農家がまだまだ少ないのが現状だ。

そんな人気の野菜をたまんで作り、「沖縄菜園ビュッフェ カラカラ」等の地元レストラン、ホテルに卸している。さっと2〜3分湯がいて、天ぷらの具にしたり、炒め物にしたり、サラダに和えたりと、使い方は多種多様。カロテンやタンパク質、アミノ酸、カリウム、食物繊維などが豊富に含まれているため、栄養満点で低カロリーのヘルシー食材でもある。

多くの料理のプロたちから「大豆のような大きさで存在感があり、料理を見た目にも楽しく演出してくれる、とても使い勝手の良い食材」との評価を得ているらしい。

沖縄の猛烈な暑さの中、黙々と施設の外の作業場で摘み取った若葉大豆の茎をハサミでカットしている利用者たちの姿が印象的であった。

地域と共に生きる考え方の集大成、「たまん祭」

たまん福祉会では、毎年秋に集客数1,000名を超えるという盛大な「たまん祭」を開催している。施設の敷地を開放し、たくさんの人たちに参加してもらう一大イベントだ。利用者やその家族、各団体だけでなく、地域住民、行政にも積極的に参加してもらう。

たまん祭

(写真提供:たまん福祉会)

舞台には、子どもたちのエイサークラブや民謡、武道、青年会の踊りや太鼓、高校生のダンス、婦人連合会の歌や踊りなど、バラエティ溢れる人たちが参加できるプログラムとなっている。

「お祭りは、地域に密着した施設としての集大成でもあります。ですから、できる限り盛大な規模でやりたい。ふだんは施設に縁のないような人たちでも、気軽に遊びに来てもらえる内容にすることが大切なのです。たまんの利用者たちと幼い子どもたちや高校生たちが直接触れあう場として、地域でもとても重要なイベントになりました」と、金城理事長。

祭りの目玉として、毎年若手芸人によるショーやライブなども披露している。それほど多額の予算があるわけではないので、来てもらうのは売り出し中の若手のみだが、さすがにプロ。いつも祭りの最後をたいへん盛り上げてくれる。沖縄県内のイベントとしては大きな規模で、多彩な参加者も集まるため、芸能プロダクションとしても次々と期待のホープを送り込んでくれるのだという。

基本的に出演してくれるのはメジャーデビュー前の若手だが、2010年には男性デュオ歌手のD-51がお忍びでゲスト参加してくれた。テレビドラマ「ごくせん」、映画「ALWAYS三丁目の夕日」、カルピスウォーターのCM等も手掛け、 有名アーティストの仲間入りを果たした二人もまた、沖縄出身である。本土へ渡って全国的に活躍する彼らの姿は、若手芸人たちにとっての大きな目標なのだ。

たまん祭 地元アーティストのサプライズ ライブ

(写真提供:社会福祉法人たまん福祉会)

きっとこれからも、「たまん」から大海原(本土)に泳ぎ出るチャレンジャーが次々現れていくに違いない。

今後のたまん福祉会の目標は、障がい者以外の施設を併合した総合福祉施設になることだという。現在計画中の建物には、すでに保育施設が運営できるスペースが確保されている。たまん祭で毎年秋に見られる、老若男女が楽しそうに集まっている風景。それは、近い将来にはたまん福祉会の日常風景になっているかもしれない。

(写真・文/戸原一男)

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。