社会福祉法人栗山ゆりの会(北海道夕張郡栗山町)

重度障がいのある人の就労の可能性を追求していく「ハローENJOY」

栗山ゆりの会の概要

栗山ゆりの会は、ハローENJOY(就労継続支援B型事業・生活介護事業)、ハローENJOY助歩(じょぶ)栗山(就労継続支援B型事業・生活介護事業)、ハローENJOYつぎたて5(ご)(就労継続支援B型事業・生活介護事業):以上栗山エリア、ハローENJOY札幌(就労継続支援B型事業・生活介護事業)、ハローENJOY札幌Ⅱ(就労継続支援B型事業):以上札幌エリア、等の障がい者就労支援・日中活動支援施設を運営する社会福祉法人である。

この他、拓心荘(グループホーム)、どうぞ(併設型短期入所施設)、ハロー(グループホーム)、こんにちは(グループホーム・体験入居)等の生活支援施設も運営する。

法人の始まりは、1992年に開設した知的障がい者通所授産施設(当時)栗山ハロー学園だった。その後地域生活援助グループホームを開設したり、地域就労支援ネットワークづくりのために各地に分場を増設するなど事業を拡大し、2002年には設立10周年を機に施設名を「ハローENJOY」に変更した。「学園」という名前からイメージされる教育の場ではなく、就労の場であることを前面に打ち出したのである。障がいがあっても、「楽しく」働きながら社会参加をめざそうという法人の思いが、この名前には込められている。

  • ハローENJOYの外観
  • ハローENJOY 職員・利用者全員写真

ハローENJOYのさまざまな作業

ハローENJOYでは、主に下記のような作業が展開されている。

B型事業
① 食品製造班:夢模様(給食提供、クッキー・パン製造)
② 手芸、下請班:ライト(ふきん・人形作り、記念館運営、箱折り、袋・パック詰め、清掃・芝刈り)
生活介護事業
③ 下請、木工芸班:Y²(わいわい)(パック詰め、マグネット・カレンダー作り)

「もっとも売上を上げているのが、食品製造班の給食調理です。法人が運営する栗山地区内3施設の給食約80食を、仕事として請け負っています。ハローENJOYの名物でもあるクッキーは、おからを原料としたヘルシーなクッキーですね。つぎたて5で豆腐製造を行っているので、作業工程から生まれるおからを活用しようということでおからクッキーを作ることになりました」と、施設長の田中秀典さんは説明する。

この他にも、手芸班が制作している可愛いフェルト人形、起き上がり人形(干支やペンギン、カエル、かっぱ、猫、ヒヨコ、ブタ等、十数種類のキャラクターが勢揃いした人気商品)、木工芸班が製造する木工動物マグネット等、バラエティ豊かな商品アイテムが揃っている。これらは空知・石狩管内に複数ある契約販売所や、坂本九思い出記念館(後述)にて販売されている。

「一番の人気商品は、起き上がり人形でしょうか。高さが5センチくらいのミニ人形で、底に鉄のナットを仕込んでいるので、倒れてもすぐ起き上がります。十数種類ものバリエーションがあるので、お客さんの中にはたびたび来店してお買い求めいただき、少しずつ揃えて下さっている方もいらっしゃるようです」と、田中施設長。

  • 手芸班が制作している可愛いフェルト人形、起き上がり人形
  • 木工芸班が製造する木工動物マグネット

坂本九思い出記念館の運営受託も実施

ハローENJOYのもう一つの特色は、坂本九思い出記念館の運営を受託しているところだろう。その経緯について、田中施設長は次のように語る。

「坂本九さんは、北海道のSTVテレビで『ふれあい広場サンデー9』という番組に出演していて、道内の障がい者施設を紹介してくれたり、チャリティコンサートを開くなど、福祉活動にとても積極的な方でした。私たちの施設にも2度も取材に来てくださり、ハローENJOYのバンドもコンサートに出演するなど交流が深まっていきました。当法人の橘文也総合施設長は、公私ともにお世話になっています。そんな関係もあり、坂本さんが日航機墜落事故で亡くなった後に、ぜひ記念館を設立しようと訴えたのです」

橘理事長が声をかけると地域から9人の発起人が集まり、STVテレビ等のメディアも全面協力することによって北海道民、福祉施設関係者に寄付金募集の一大キャンペーンが展開されていった。こうして1995年に完成したのが、坂本九思い出記念館というわけである。館内には、坂本さんの奥様から寄付された遺品、ポスター等が多数展示されている。この施設の運営を、坂本九思い出記念館から仕事として任されているのである。

「記念館といっても収入は、入場者からの募金(入館料は無料)のみ。あとは館内で販売するグッズ収入だけですから、委託費そのものは大きな金額とは言えません。でも坂本さんの思い出をいつまでも残すための社会貢献活動だと思って、みんなで協力しながら取り組んでいます。利用者の仕事は、館内や庭の清掃や、受付、売店の管理など。休館日の月曜日以外は、毎日10時から16時まで、交代でスタッフを派遣(利用者2名+職員1名)しています」

日航機墜落事故からすでに36年が経過した現在、事故のことや坂本さんの存在そのものを知らない若い人たちも増え、記念館への来館者は年々減少傾向にあるという。それでも命日の8月12日近辺には、多くの人たちが全国から訪れる。修学旅行シーズンになると、何台もの大型バスがやって来ることも多いという。当然、館内の売店で販売しているハローENJOY製品にも注目が集まっていくというわけである。

  • 坂本九思い出記念館 外観
  • 夢模様 クッキー

重度の障がい者にも、作業を中心とした日中活動を

栗山ゆりの会では、地域就労ネットワークの拡大を目的として施設を増設するたびに、作業能力が高い利用者たちは次々と新しい施設(ハローENJOY助歩栗山、ハローENJOYつぎたて5)へと転籍してもらった経緯がある。そのため、現在ハローENJOYに在籍しているのは比較的障がいが重い人たちが中心となっている。そんな中でもできる限りの可能性を求めてさまざまな事業を展開し、事業所としての月額平均工賃も約25,000円という数値を維持してきた。

「コロナ禍が続く中で自主製品の販売は激減しているのですが、有難いことに当事業所の平均月額工賃は、昨年比で約1,000円アップしました。これは、下請け作業が急増しているためです。テイクアウト需要の拡大によって、弁当や宅配ピザなどの箱折りの仕事がたくさんの企業から依頼されるようになりました。これまで作業種目をひとつに絞らず、いろんな仕事に対応してきたことが、コロナ禍で活きてきたのだと思います」と、田中施設長は胸をなで下ろす。

とはいうものの、今後はハローENJOYの利用者たちには、さらなる高齢化、障がいの重度化が待ち受けている。「高い工賃を目指してガンガン働く」ことをめざす法人内の他施設と比較しても、B型事業所としては非常に厳しい運営が強いられることは想像に難くない。そんな中でも田中施設長は、前を向いている。

「もしかしたら今後ハローENJOYは、運営の中心がB型事業から生活介護事業へとスライドしていくかもしれません。だとしても、これまで培ってきた『作業を中心とした日中活動』にはこだわっていきたいですね。利用者の特性や能力に合わせ、作業アイテム自体を柔軟に変えていくことも必要です。極端な話、利用者ごとにひとつずつ作業があっても良いと思います。それが結果的に、仕事を通じて自分を表現することにつながるのではないでしょうか」

まさに坂本九の「明日があるさ」という歌のように、どんな状況であってもハローENJOYでは明るく前を向き、重度の利用者たちの働く可能性を探っているのである。

  • 利用者さんのスナップ画像
  • 利用者さんのお仕事風景(手芸班)

(写真提供:社会福祉法人栗山ゆりの会、文:戸原一男/Kプランニング

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。