社会福祉法人緑光福祉会(秋田県秋田市)

コロナ禍においても新たな仕事の確保に向けて挑戦する「緑光苑」

緑光福祉会の概要

緑光福祉会は、緑光苑(就労継続支援B型事業)、太郎・花子(障がい者グループホーム)を運営する社会福祉法人である。法人の設立は、2000年。印刷を主な作業科目とする身体障害者授産施設(当時)として始まった。その後新体系に移行し、身体だけでなく知的・精神の3障がいの利用者を受け入れるようになってから、作業内容は少しずつ軽作業・施設外就労へと変化してきている。

現在は、∙ 木工班(各種木箱組立/絡紐結び/施設外就労) ∙ 軽作業班(紙箱折/ラベル貼り/封入作業/野菜の袋詰め作業) ∙ 印刷班(名刺/伝票/封筒/チラシ/冊子/データ入力) ∙ 食品班(苑内給食調理補助) ∙ コーティング事業(ガラス/ヘッドライト/車内の光触媒クリーニング)の5つの班に分かれ、さまざまな作業を行っている。

「失敗してもあきらめずに、苦手なことにも挑戦する勇気を持とう」「立てた目標を達成するために努力する持続力を持とう」「全てのものに感謝する心を持とう」をモットーとし、障がいのある人たちが安心して地域で自立生活を送るための就労支援活動に取り組んでいる。

緑光苑全景画像

さまざまな種類の仕事を請け負う軽作業班

緑光苑の現在の中心的な作業は、軽作業である。伊藤佳子業務執行理事兼所長は、具体的な内容について次のように語る。

「以前は印刷班に利用者さんが10数名いて、年間売上も2,000万円以上あったのですが、現在の売上は500万円程度でしょうか。仕事自体が減っていることに加えて、高度なパソコンスキルを持った利用者さんが一般企業へ就職していくため、生産力は年々落ちているのです。その点、軽作業は単純作業が中心ですから、専門性を問われません。人手が必要なときは、班の垣根を越えて全員で取り組むことが出来るのです」

代表的なのが、野菜の袋詰めだという。市場から運んできた野菜を計量して袋詰めするという作業は、市場が休みの日以外は毎日欠かさずある。朝から午後2時まで大量の野菜を袋詰めしないといけないので、ほぼ全員でこの作業に取り組むところから毎日がスタートする。ある程度の目処が付くと、それぞれの班に戻って箱折やシール貼り、DM発送作業、木箱組立(贈答用の乾麺・日本酒用)など、担当の仕事に取りかかるのである。

この他にも、行政から委託される有料指定ゴミ袋(資源化物用、家庭用ごみ袋4種)の試供品セットづくり、ポケットティッシュの広告セット(印刷も含む)、きりたんぽカップスープのセッティング(きりたんぽ等の具材やスープ類の小袋をセットして、フタとラベルを付ける)、企業のノベルティグッズの発送代行等々、多種多様な仕事を請け負っている。

「ここ数年、力を入れているのが施設外就労です。これまでも繁忙期の農家さんのお手伝いをしていたのですが、継続した仕事が確保できないのが悩みの種でした。でも昨年、初めて製材所から定期契約の仕事を依頼されたのです。3名の利用者さんと職員がチームになって、毎日出かけています。時給700円で契約できたので、今や施設の稼ぎ頭の仕事になりました」と、伊藤所長は嬉しそうに語る。

  • 野菜の袋詰めをする利用者さん
  • 木箱組立をする利用者さん

コロナ禍で新たに取り組んだコーティング事業

全国の多くの障がい者就労施設同様に、コロナ禍は緑光苑の事業にも大きな打撃を与えている。耐震用部品であるゴムや木箱の素材が海外から入荷できなくなったため、軽作業班・木工班の仕事の多くが激減してしまったのだ。そこで新たな取り組みとして、2021年よりコーティング事業をスタートさせている。

そのきっかけとなったのが、2019年9月に日本セルプセンターが主催した「セルプワーキングフォーラム」だった。月額平均工賃30,000円以上への成長を目指したこのプロジェクトには、関係者によるパネルディスカッションの他、障がい者就労に協力的な5社の企業ブースを設け、業務内容に興味のある施設からの参加を受け付けていた。この中に窓ガラス・鏡のコーティング事業を手がける神戸コーティング施工協会(障がい者就労支援事業所)があり、伊藤さんはさっそく手を挙げたのだった。

「ホームページで障がいのある人たちが働く様子も見せさていただき、緑光苑でも取り組める...と思い、エントリーしました。当初はガラスクリーニングで始めてみたのですが、秋田県ではあまりニーズがなかったので、現在は車のヘッドライトと車内の光触媒コーティングに特化しています。とくに好評なのが、車のヘッドライトのコーティング&クリーニングです。特殊な洗浄液(ピカまも〜る)を使用することにより、まるで新車のようなピカピカの光沢が生まれます。施設の車でもサンプルとしてわざと片方のライトだけ洗浄しているのですが、その差は一目瞭然なんですよ」

コーティング事業は独自のチラシを作成して営業活動を展開したところ、行政からの応援もあって30〜40件の問合せがあったという。一度受注すると、コーティングが持続する期限(約1年)を過ぎる頃に継続受注も期待できる。コロナ禍によって物への接触に敏感な人たちが多くなっている今、光触媒コーティングは車以外にもさまざまなシーンで求められていくかもしれず、今後に大きな可能性を秘めている事業といえるだろう。

  • 車内の光触媒コーティング
  • ヘッドライトのコーティング&クリーニング

秋田県の共同受注窓口の拠点業務も請け負う

緑光苑では、「秋田県共同受注窓口(秋田県社会就労センター協議会)(秋田県委託)」の役割も担っている。県内の会員施設(16業種43事業所)を地域によって県北・県央・県南の3つのグループに分け、その県央拠点(21事業所)を担当しているのだ。この活動について、伊藤所長は次のように語る。

「一般企業から障がい者施設へ仕事の相談があったとき、信頼できる施設をすぐ紹介できるように、秋田県社会就労センター協議会が2019年4月から立ち上げました。昨年(2021年)は、初めての取り組みとして企業商談会も実施しています。告知が間に合わなかったので参加企業は数社に留まりましたが、仕事にもつながっています。製材所との施設外就労が決まったのも、この商談会がきっかけなんですよ」

共同受注窓口としての役割であるため、当然受け付けるのは自分の施設の仕事だけではない。食品加工、クリーニング、縫製、ウエス等...、緑光苑が普段は取り組んでいない他業種に関しては、拠点内のもっとも適切な施設を紹介することになる。ただでさえ施設内では多彩な仕事がめまぐるしく動いていく中で、その負荷も相当大きいのではないか。しかし伊藤所長は、この活動の意義を強調する。

「たしかに受けてくれる施設がないと、(特殊な仕事でなければ)遠くても自分たちが担当することもあります。もちろん大きな負荷なのですが、お客さんと直接つながるという絶好のチャンスでもあるわけです。実際、仕事ぶりが評価されて新しいお客さんを紹介してもらったケースもありました。共同受注窓口を担当することによって、県内の会員施設全体の受注拡大が進むとともに、少しでも緑光苑の仕事が増えることを期待しています」

設立時から作業内容は大きく変化しつつあるが、障がいのある人たちが「働く」ことを通じて社会参加できるようなサポートをするという基本理念は変わりない。そのためにも緑光苑ではあらゆる機会を活かし、さまざまな障がいのある人たちが取り組めるような作業開拓に今後も積極的に取り組んでいく。

  • 秋田県共同受注窓口パンフレット
  • 職員・利用者集合写真

(写真提供:社会福祉法人緑光福祉会、文:戸原一男/Kプランニング

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。