社会福祉法人同愛会(神奈川県横浜市)

企業とのコラボにより、本格的なリネン工場を運営する「ダイア磯子」

同愛会の概要

同愛会は、横浜市を中心としてさまざまな障がい者支援サービスを提供する社会福祉法人である。その歴史は、1978年にまで遡る。横浜市保土ケ谷区に、精神障害者授産施設(当時)幸陽園を開所したのが始まりだった。以後、事業規模は年々拡大し、現在では東京事業部、川崎事業部も設立。横浜事業部だけでも、125の事業所を運営する大きな法人となっている。

横浜事業部の主な事業所だけでも、てらん広場(施設入所支援・生活介護)、幸陽園(就労移行支援・生活介護・就労継続支援B型)、空とぶくじら社(生活介護)、リエゾン笠間(施設入所支援・生活介護)、ダイア磯子(就労移行支援・就労継続支援A型)、森のピーターパン(移動支援・居宅介護)、くさぶえ(地域活動ホーム等)、横浜健育センター(福祉型高等学校)、横浜西部就労支援センター、本牧一丁目工房(就労継続支援B型)、リプラス(就労継続支援B型)、レアリゼつづき(就労継続支援B型)等がある。さらには18の生活介護事業所、60軒の共同生活援助(グループホーム)も運営し、障がいのある人が地域において「その人らしい人生」を支援する活動を進めている。

  • ダイヤ磯子 リネン工場外観
  • 業務用大型洗濯機(写真はNEO-100)

行政、民間企業とのコラボで生まれたリネン工場

ダイア磯子は、1992年に同愛会として初めて取り組んだ就労継続支援A型所(当時は、知的障害者福祉工場)だ。その経緯について、西村潤統括所長(37歳)は次のように語る。

「これまでの授産施設(現B型事業所)から一歩前進し、もっと本格的に働きたいという利用者ニーズに応え、ダイア磯子をスタートすることになりました。設立に当たっては、横浜市に土地を提供してもらい、民間企業(柴橋商会)が仕事を提供し、同愛会が建物を建設するというユニークな三者コラボとなっています」

折しも時代は、「完全参加と平等」を謳った国連・国際障害者年の最終年。一般企業への障がい者雇用率に、知的障がい者はまだカウントされない時代だった。知的障がい者の働く場は、低工賃の授産施設や福祉作業所しか、選択の余地がない。だからこそ、彼らが自立した生活を送るための高工賃の施設が求められていた。そんなニーズに対して先駆的にチャレンジした福祉工場が、ダイア磯子だった。

作業内容は、本格的なリネンサプライである。柴橋商会が取引している横浜市内約100軒のホテルのシーツ、タオル、浴衣、バスローブ等の洗濯・仕上げを行っている。工場内では、50kg、100kgの業務用大型洗濯機が5台も稼働し、洗濯物を高圧脱水→乾燥機へと移動させていく「自動コンベアシステム」も完備する。最終工程には、シーツや浴衣の自動投入機やフォルダー等の機材も揃っている。機械に浴衣などをハンガーに掛けていくだけで、後はアイロンプレス、たたみ加工まで自動的に行ってしまうスグレモノだ。

こうした本格的な機械を多数導入することにより、1日あたりシーツ6,000枚、浴衣2,000枚といった大量の洗濯にも対応できるようになっている。現在の年間売上高は、約2億3,000万円。これにより、41名(A型)の利用者に、月額平均125,000円の給料(工賃)を支払うことが可能になっている。

  • 利用者さんと西村潤統括所長(右側)
  • 洗濯物を高圧脱水→乾燥機へと移動させていく、自動コンベアシステム

脱福祉の発想で、職員の意識を改革

もちろん、当初からこれほどの事業成果を上げられたわけでは決してないと、西村所長は言う。

「工場の運営は、収入と原価の格闘で、設立当初から困難の連続でした。設備は整っていても、それを使いこなす技術が私たちには欠けていたからです。なにしろ、同愛会として初めての福祉工場(当時)でした。職員一人ひとりの意識も、既存の福祉施設から脱却できなかったのです。職員でさえそうなのですから、利用者に至ってはなおさら。仕事が多いと文句を言ったり、言われたとおりの仕事をしないなんて、いつものことでしたね(笑)

働き手の意識が低ければ、いくら機械が整備されていたとしても、製品の仕上がりは低いものとなる。顧客から要求されるレベルには至らず、対応枚数もこなせない。そのため、売上も思うようには上がらなかった。そんな状況を変えていったのは、職員先導の意識を徹底した結果だったらしい。

「私自身、途中から民間企業から転職してきた人間でした。前所長も、そう。噛んで含めるように職員の意識を少しずつ変えていき、職員が先頭に立って積極的に仕事に取り組む姿を見せていきました。利用者というのは、とても正直です。職員が上手くリードしていけば、一生懸命働いてくれるようになるのです。もちろん障がい特性による仕事の向き不向きや、相性に合わせた人員配置などに気をつける必要はありますが、今ではみんな見違えるように頼もしい働き手へと成長してくれました」

ホテルのリネンサプライが中心のため、春休みやゴールデンウィークや夏休み、クリスマスや正月休みは、目も回る忙しさとなる。毎日のように残業も続くという。今年の夏はとくに猛暑日が続いたため、工場内も尋常ではない暑さだったのだが、利用者たちは楽しそうに働いているのが印象的だった。

  • ダイア磯子スタッフ
  • ダイア磯子スタッフ

機械と利用者の高齢化対応が、今後の課題

今後の課題について、伺ってみた。外人観光客が多数訪れるようになった観光地では、現在、空前のホテル建設ラッシュが続いている。横浜・湘南地区も例外ではない。東京オリンピックの開催も見据えると、当分は仕事の確保には困らないだろうと西村さんは予測する。

むしろ問題となるのは、機械の老朽化だ。設立から26年経つため、これ以上の仕事の受け入れが難しくなりつつある。どこかで大規模な機械の入れ替えを検討する必要があるのだという。

そしてもう一つ。利用者自身の高齢化もある。現在の平均年齢は42歳だが、最高齢は63歳。洗濯工場で肉体労働を続けるには、さすがに厳しい年齢かもしれない。彼らの次なるステップとしてどんなステージを用意できるかが、大きな課題となっている。

2017年からダイア磯子が就労移行支援事業を始めたのも、課題解決のための一つのステップだと西村さんは語る。これまではA型事業だけの運営にこだわってきたが、知的障がい者の一般就労など考えられなかった設立当初とは、時代が大きく変わってきた。いろんな働き方や、めざすべき道があっていい。就労移行支援事業をきっかけに、今後はB型事業等の併設も視野に入れている。

大切なのは、法人理念である「人生(存在)への支援・援助」を、一人ひとりの利用者に対して行っていくことだろう。「彼らの幸福追求に寄り添い、支援することが自分たちの仕事である」──そんな考えに基づいて、ダイア磯子ではこれからも本格的なリネンサプライ工場の運営に力を注いでいく。

  • ダイア磯子スタッフ
  • ダイア磯子スタッフ

(写真・文/戸原一男)

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。