社会福祉法人東京都手をつなぐ育成会 大田区立うめのき園(東京都大田区)

下町の雰囲気の中で、徹底した地域密着型の事業を展開する

うめのき園の概要

うめのき園は、東京都手をつなぐ育成会が大田区から指定管理による委託運営を行っている就労継続支援B型事業所である。本園と分場の2カ所の事業所があり、特定相談支援事業所うめのきも併設している。

施設があるのは、小規模な金型工場や福祉施設が建ち並ぶ、典型的な下町風景の中だ。本園がある糀谷地区というのは、とくに高齢者福祉施設・障害者施設・児童施設などが多く、「福祉のまち糀谷」として売り出している。しかも本園の事務所があるのは、都営住宅の1階部分である。こういった立地条件もあり、開設時から一貫して地域と一体となった事業運営が繰り広げられてきた。作業科目は、製菓・軽作業・公園清掃(本園)、製パン・軽作業・公園清掃(分場)となっている。

  • 都営住宅1階にある大田区立うめのき園 外観
  • 業科目は、製菓・軽作業・公園清掃、製パン・軽作業・公園清掃など

地域の企業や団体への注文販売が中心のパン事業

うめのき園本園では、1993年の開設時からパウンドケーキなどのお菓子づくりを行っていたのだが、自主生産品としてのパンづくりへ向けた試行錯誤も続けていた。1998年の分園立ち上げ時に、ようやく本格的に製パン事業に着手することになる。近隣住民との関係を構築する上でも、毎日食べてもらえるパンの方が、より密接な繋がりをもてるという考えからである。

主な販売先は、地域の児童館、保育園、老人ホーム、企業などである。おやつや昼食用といったまとまった数の定期的な注文販売が主流であり、できる限りロスのない生産を心がけている。企業や地域庁舎には専門の担当者を置き、社内の注文をとりまとめて注文するなどのシステムも構築した。

パン事業をスタートしたときにはまったくゼロからのスタートだったが、地域に知ってもらうために作業室を開放してパン教室を開催するなどの取り組みが功を奏し、少しずつうめのき園の名前が浸透していったという。現在では、さまざまな地域のイベント(町内会・施設・寺院等が開催するお祭り)からも声がかかり、出店要請や商品の買い取りなどを行ってくれるようになった。

「決まったパンにこだわらず、お客さんからのニーズに応じて柔軟に対応するようにしています。たとえば、小学校の映画館ではサイズを小さめにして安く売ったり、保育所の運動会などでは希望に応じてカタチを工夫したり...」と、大河内尚子施設長(54歳)は、これまでの営業上の苦労を語っている。注文生産に特化した事業戦略があるからこそ、このような対応が可能だったのだろう。

  • 自主生産品としてのパンづくりに励む利用者
  • 自主生産品としてのパンづくりに励む利用者

商品の改善によって売上を伸ばした焼き菓子

焼き菓子に関しては、ここ数年で改善を加えてきた。以前はパウンドケーキやブラウニーなどの製造しか行っていなかったのだが、商品アイテムそのものの見直しを図ったのである。この目的について、小倉靖弘主任支援員(42歳)は次のように説明する。

「主な商品は、パウンドケーキでした。お客さんには好評だったのですが、技術が必要で特定の職員しか作れず、利用者が製菓の工程に入れなかったのです。そこで専門性をなくす、作業への利用者の参加、という二つのポイントを基本にして、商品そのものの改善を図っていきました」

うめのき園の母体である東京都手をつなぐ育成園は、都内に50施設もさまざまな障害者支援事業を展開する大きな法人である。そのため職員の定期異動もひんぱんにあり、パウンドケーキのような繊細なお菓子の味を安定させるのは難しかった。そこでうめのき園では発想を変え、新しい製品づくりへと舵を切ったのである。

この改善から生まれた新商品が、アーモンド&チーズタルトや米粉を使った新感覚のお菓子:こめふわなのだという。とくにタルト類は大人気となり、販売先もどんどん増えていった。

「これまでと違って商品の種類や味の種類が増えたので、委託販売しやすくなったのが大きいですね。大田区庁舎にある喫茶店に納品可能になり、パンのように一定数の販売が可能になったのです。最近ではチーズタルトが好評で、地域のイベントなどで100個単位の大量発注がけっこうあるのですよ」と、小倉さん。

大田区では区内の障がい者施設による自主製品ブランドとして「おおむすび」ブランドを立ち上げ、庁舎におおむすび縁市場という販売コーナーも設置することになった。うめのき園でもこのブランドに応募するための新製品「米粉クッキー」を開発。認定も無事受けることになり、新たなヒット商品として期待が高まっている。

  • 小倉靖弘主任支援員(左)と大河内尚子施設長(右)
  • 開発商品:アーモンド&チーズタルトや米粉を使った新感覚のお菓子「こめふわ」を作る利用者さん

優先調達による公園清掃の受注で、大きく工賃アップ

うめのき園のもう一つの主力事業が、大田区から請け負う公園清掃である。これは優先調達法の制定によって、2015年から始まった新事業だ。本園・分園から計14名くらいの利用者たちが、近隣の区立公園の清掃を担当している。大田区内に多数散在する小規模の公園の掃き掃除、ゴミ分別、除草などを担当する。うめのき園が管理するのは、5カ所の公園である。毎週1回、それぞれの園内をみんなで分担しながら回っていく。

「公園清掃の仕事はとても利益率がいいので、工賃アップのためには欠かせない作業になりました。ただし、よほどの悪天候でない限りは、雨の日も風の日も出かけなければなりません。最近は、夏の暑さが尋常ではないので、熱中症対策にも十分気をつける必要がありますね。一日中ずっと外の作業を続けるのは危険です。そのため午前午後で担当者を入れ替えるなど、いろいろ工夫しています」と、小倉さんは悩みを打ち明ける。

もっとも大田区の公園は比較的小さなものが多く、施設からはお散歩程度の距離で歩いていける距離に点在しているのが救いだろう。気候が良ければ、気分転換も兼ねて、みんなで楽しく遠足気分で清掃の仕事に就くことができる。取材に伺ったのは暑さも一段落した初秋であり、利用者たちは満面の笑顔を浮かべながら仕事に取り組んでいた。

「日中活動をつうじて利用者の主体性、自主性を引き出し、より充実した地域生活の実現をサポートする」のが、うめのき園のサブミッションだという。その実現に向けて、着実な工賃アップとともに一歩ずつ前に向いて進んでいく。

  • 大田区から請け負う公園清掃の利用者さん達
  • 工賃アップのためには欠かせない公園清掃作業。悪天候でない限りは、職務遂行に励む利用者さん達

(写真・文/戸原一男)

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。