社会福祉法人光友会(神奈川県藤沢市)

利用者の個性に合わせたさまざまな事業を展開する神奈川ワークショップ

光友会の概要

光友会は、神奈川県藤沢市を中心に多くの障がい者支援サービスを展開する社会福祉法人である。施設の原点となったのは、1977年に視覚障がいの当事者でもあった五十嵐光雄前理事長、現理事長の五十嵐紀子夫妻が、自宅内に開設した「さがみライトサロン」だった。障がい者・ボランティア・地域住民の交流の場という位置づけである。その後地域作業所として、電子部品の組み立て作業を開始。1980年には社会福祉法人となり、翌1981年に身体障害者通所授産施設「神奈川ワークショップ」がスタートしている。その後も次々に事業は拡大し、現在では藤沢市を拠点として神奈川県内に約50カ所の障がい者支援サービスを展開するようになった。

神奈川ワークショップ(就労移行支援事業・就労継続支援A型事業・就労継続支援B型事業)は、法人の中でもっとも歴史が古く、本格的な就労支援事業を行っている事業所である。作業種目としては、点字印刷、テーププリント、オフセット印刷、軽作業、製菓(かわうそ工房)、製パン、農業、クリーニング、鍼灸マッサージ等々。利用者の障がいに応じて、多種多様な作業を用意しているのが最大の特色である。

  • 光友会 外観
  • 光友会 かわうそ工房 ファッサード

法人の原点とも言える点字印刷やテーププリント事業

数多い神奈川ワークショップの作業の中でも、原点とも言えるのが点字印刷だろう。前理事長の五十嵐光雄氏が視覚障がいの当事者だったことから、古くから取り組んできた。神奈川県や藤沢市など官公庁の広報類、選挙公報などの点字版や、点字名刺などの作成を請け負っている。この他、「月刊福祉」を初めとするさまざまな福祉関係の書物・雑誌などの自主点字出版物もある。情報が不足がちな視覚障がい者に対して、少しでも有益な福祉情報を提供したいという前理事長の思いがこもった仕事だろう。

さらにユニークなのは、テーププリントの事業である。官公庁や新聞社からの委託を受け、視覚障害者への新たな情報サービスとして各種広報物や新聞などを音声にし、カセットテープやCDにして収めているのだ。中野健士施設長(50歳)は、この仕事について次のように説明する。

「中途障がいの人たちも増えてきたため、視覚障がい者でも点字を読める人たちは年々減少しています。なんと現在では、約7割の人たちが点字を読めないと言われているのです。そのために近年求められてきたのが、点字以外の音声による情報提供サービス。ウチの施設では専門のスタジオを完備しているので、音声データの作成を完全内製化(読み合わせはボランティアスタッフ)で対応できます。契約者からは、とても貴重な情報源として喜ばれているのですよ」

  • 点字以外の音声による情報提供サービスのスタジオを完備(写真提供:社会福祉法人光友会)
  • 視覚障がい者でも点字を読める人たちは年々減少している現状

地域の大手企業と結びついたオフセット印刷や軽作業

神奈川ワークショップがある藤沢市には、日本精鉱、いすゞ自動車といった大手企業の製造工場が多い地区でもある。こうした地の利を活かし、昔から企業の労働組合とつながってさまざまな仕事を請け負ってきた。オフセット印刷や軽作業の主な顧客は、地域の企業や労働組合が中心なのだと中野さんは語る。

「印刷設備そのものは最新型とは言えないのですが、お客さんにも恵まれて今でも頑張って売上を伸ばしています。オフセット印刷部門だけでも、年間5,000〜6,000万円もの売上があるのですよ。施設内の設備としてはA3の単色機しかありませんが、地域の印刷会社と連動することで無限の可能性があると思っています。最近ではむしろ、組版データだけ作成して、印刷製本は協力企業にお願いするような仕事が増えています。官公庁から依頼される案件も随契や入札流れの仕事が多いため、コスト割れするケースはほとんどありません」

大規模に印刷事業を展開してきた各地の障害者施設が軒並み苦戦する中、こうした神奈川ワークショップの事業スタイルは注目に値するかもしれない。軽作業は、箱の組立・電子部品組立・シャープペン組み立て等が中心だが、ドラム缶の中身を一時保管するためのシャワーキャップ制作などの単価が高い仕事も多い。つまり地域にある大手企業と積極的に関係を深めてきた結果として、印刷にしろ軽作業にしろ、利益率が高い仕事を受注できているのである。

  • オフセット印刷に従事する利用者さん
  • 大手企業と連携した仕事ワークスタイル

藤沢名産品・かわうそサブレなどを製造する食品事業

最後に、神奈川ワークショップの代表的な製品となった、かわうそサブレについて触れておきたい。パンや焼き菓子などの食品事業を展開してきた中、法人成立30周年を記念して「地域を代表するようなお菓子を作ろう」との思いから2008年に開発したものなのだ。

「施設がある地区名の獺郷(おそごう)は、獺(かわうそ)の郷という意味。昔は、近辺の川にたくさんカワウソが生息していたらしいのです。私たちは法人成立30周年を迎えたときに、これからもずっと地域の人たちに愛される施設でありたいと考えました。そこで地域名の由来であるカワウソをモチーフにしたお菓子を作り、地域銘菓として売り出そうと考えたのです」と、中野さん。

かわうそのキャラクターはオリジナルで作成し、商標登録もおこなった。可愛いかわうそのキャラクターと美味しいサブレのマッチングは発売後すぐに評判となり、藤沢観光名産品にも選定されている。その結果、行政からの発注が増え、地域の人たちのお土産として積極的に使われる機会も増えてきた。

さらに今年、法人40周年を迎えるに当たって新商品・かわうそサブレローストピーナツ味も発売した。藤沢名物のローストピーナツをふんだんに練り込んだ風味豊かな味わいのサブレだ。藤沢市役所内ロビーや、JR藤沢駅コンコース内にある藤沢湘南スーベニールズ(観光土産品販売所)等で、今後さらなる飛躍が期待されている。

中野さんによると、今後の課題は重度化・高齢化を迎えた利用者たちの新たな働く場を考えていくことだという。利用者のニーズに合わせて多種多様な作業の場を生み出してきた神奈川ワークショップ。藤沢の地を中心として、よりよい福祉社会を築くための挑戦は、これからも続いていくに違いない。

  • パンや焼き菓子などの食品事業を展開、利用者&スタッフ集合写真
  • かわうそサブレ

(写真・文/戸原一男)

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。