社会福祉法人陽山会(茨城県石岡市)

チャンスを活かし、積極的にチャレンジを続ける「はーとふる・ビレッジ」

陽山会の概要

陽山会は、大雅荘(施設入所支援事業・日中活動支援事業・短期入所事業・相談支援事業)、はーとふる・ビレッジ(就労移行支援事業・就労継続支援B型事業・生活介護事業・日中一時支援事業・施設入所支援事業・短期入所事業・相談支援事業)等の障がい者支援事業を展開する社会福祉法人である。

この他にも、地域交流ホームひまわり館や、3棟のグループホーム「ステップハート」も運営する。利用者たちの「楽しい共同生活」「自主性を重視した生活」「笑顔が絶えない生活」を大切にして、「地域社会への歩み」をめざしたアットホームな支援をおこなっている。

  • 陽山会 ファッサード
  • 利用者さんのもみ絵アート制作風景

パン・菓子の製造から、農耕加工まで幅広い作業を実施

はーとふる・ビレッジの作業科目は、主に次のような5カテゴリに分けられる。

  • ① パン・焼き菓子の製造販売
  • ② 室内作業(ボールペンの組立等の軽作業)
  • ③ 農耕加工作業(各種野菜や果実の栽培、味噌等の製造加工)
  • ④ 生活作業(もみ絵アート制作、縫製作業等)
  • ⑤ 施設外就労(農家、鶏卵場等での請負作業)

メインとなるのは、①のパン・菓子製造である。食パン、惣菜パン、菓子パン、各種焼き菓子など、その種類は数え切れないほどだ。毎朝、「仕込み→分割→成形→焼き→袋詰め」までの作業をていねいに繰り返し、手作りの味にこだわっている。

③の農耕作業では、入所施設の食事に提供される各種野菜だけでなく、梅やブルーベリーなどの果実も栽培。収穫した農作物を材料として、梅干しやらっきょう漬等の加工品づくりまでおこなっている。中でも麹造りから手がける手づくり味噌は、はーとふる・ビレッジを代表する逸品だ。麹に使う米を、一粒ずつ利用者が丁寧に選別しているため、手づくりの田舎味噌とは思えないほどの綺麗な仕上がりだ。1年間で40樽も(1樽は60kg)漬けるそうなのだが、販売会や近隣JA直売所等の販売だけで毎年すべてを売り切ってしまうほどの人気商品だ。1個800円(小売価格)という強気の価格設定にもかかわらずこれほど売れるのは、「ダシが不要なほどコクがある味わい」が、地域の固定客を確実につかんでいることの証だろう。

  • 麹造りから手がける「手づくり味噌」
  • 麹造りの風景

工賃向上に向けて、6年連続で専門家派遣事業に応募

はーとふる・ビレッジでは、茨城県の「就労継続支援B型事業所アドバイザー派遣事業」に、平成27年より令和2年度まで6年連続で応募して採択されている。これによって、「製品の品質向上又はデザイン、包装等の改善による高付加価値化」、「事業所独自の新商品の開発や市場開拓」、「コスト削減、販売ルート・販売方法の検討又は技術・経営ノウハウの習得」、「作業効率向上等職場環境の改善」といった専門家の支援を、最大限に活用することができた。前島悦子施設長は、その成果を次のように語る。

「初年度は、私たちの製品のブランド化から始まり、ブランド名やパッケージ(ブランドシール)等の制作などを支援していただきました。単年度だけでなく、同じアドバイザーに継続して支援いただけたので、その後もブランド名に相応しいオシャレな製品(ビスコッティやフォカッチャ)などの開発にもつながっています」

ブランド名となったCUORE(クオーレ)とは、イタリア語で「こころ=ハート」の意味なのだという。フォカッチャなどのイタリアパンづくりを提案されたのは、そのためだ。前島施設長たちも聞き慣れない商品に最初は戸惑ったと言うが、食べてみるとオリーブオイルが効いていて、とてもヘルシーで美味しく、今風の味わいだ。お客さんの間でも口コミで少しずつ広まり、サクサクのビスコッティと並んで今やはーとふる・ビレッジの名物となる商品にまで成長しつつある。

「アドバイザー派遣事業に応募した一番の成果は、職員の意識改革だと思います。それまではなかなか新製品の開発などに取り組む風土がありませんでしたけど、アドバイザーの指導を受けて現場のムードが明らかに変わっていきました。既存の製品の味も改良されましたし、新製品も自分たちでどんどん生み出しています。その変化を目の当たりにして、アドバイザー派遣事業に応募して本当に良かったと思います」と、狩谷秀長副施設長。

製品開発が進んだことで、ボートピア岩間(場外舟券販売場)や茨城コープでのパン販売(会議があるときの臨時販売)等大口の仕事が、茨城県共同受発注センターから次々と紹介されたのだという。

  • CUORE(ビスコッティやフォカッチャ)
  • ビスコッティやフォカッチャ生産風景

オリジナル店舗をオープンし、さらなる飛躍をめざしたい

今では農耕班の大きな仕事になりつつあるブルーベリー栽培も、専門家からのアドバイスによるものだ。無農薬のブルーベリー栽培は、はーとふる・ビレッジの農耕班の作業としてはピッタリだった。それほど専門的技術を必要としないにもかかわらず、面白いように果実が収穫できる。丸々と大きく膨らんだブルーベリーは、JA等の直売所では大人気である。いくらでも収穫できるため、利用者たちが作業の合間につまみ食いをしても問題ない。この採りたて新鮮な果実をたっぷり贅沢にパイ生地に載せた「ブリーベリーパイ」や生地に練り込んだ「ブルーベリークッキー」も、まさに三つ星級の味わいだ。同じ発想で、畑で収穫されるサツマイモを使って新しく「おさつマフィン」なども開発されている。

最後に今後の構想について、前島施設長は次のように語ってくれた。

「せっかくこれだけの商品アイテムが揃ったので、将来はステキなショップを立ち上げたいですね。ご覧の通り、施設があるのは町中からは少し離れたところ。しかも今は新型コロナウイルス感染拡大の影響もあるので、飲食店の運営が厳しくなっているのも現実です。でもいずれは地域の人たちに、私たちが作っている製品を手軽に食べてもらえる専門店をつくっていきたいと考えています。それが結果的に、少しでも高い工賃を実現することになると思うのです」

前島施設長たちがめざしているのは、利用者たちの特性を見極めた上で、今よりも一歩進んだ支援を提供していくことだという。「個性を活かし、楽しくチャレンジ」を合言葉に、はーとふる・ビレッジは着実に一歩ずつ階段を登っているところだ。

  • 利用者さん(女の子)
  • 左から、狩谷秀長副施設長、前島悦子施設長

(文・写真:戸原一男/Kプランニング

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。