社会福祉法人福井県セルプ(福井県福井市)

地域社会とのつながりを模索する「セルプうらら」

福井県セルプの概要

福井県セルプは、2006年に福井県社会就労センター協議会から独立したNPO法人福井県セルプ振興センターが前身であり、主たる活動は「共同受注窓口機能」だ。他県の振興センターと同様に、官公庁や民間企業から請け負った役務の会員施設へ割り振り、施設の物品仕入れの一括請負、施設製品販売会の企画運営等、三本の柱を中心とした活動が展開されている。

2013年からはセルプうらら(就労継続支援B型事業)、2019年からはFLAP(就労移行支援事業・就労継続支援B型事業)、カフィリーズ(セルプうららとFLAPの出張所)等の障害者就労支援事業をスタートさせ、安定した運営が可能になっている。2017年にはNPO法人を解散し、社会福祉法人福井セルプとなった。現在でも共同受注窓口機能の助成金はゼロ、会員施設の年会費ゼロ(加入金のみ)というユニークな運営方式の振興センターとして、全国からの注目を集めている。

  • 福井県セルプ施設外観
  • 喫茶「カフィリーズ」外観

販売会の運営から、商談会の運営まで幅広い活動

福井県セルプを代表する活動の1つが、販売会の企画運営だろう。さまざまな会場で会員施設が販売する機会を設け、その会場づくりをコーディネートするのだ。ここで大切にしているのが、設営そのものを仕切るという方針である。販売会はざっと数えただけでも年間で100回以上あり、中でも県庁1階ホールでは月に2回も定期的に開催されている。いつも昼休みの1時間あまりの開催で、毎回16万円以上を安定的に売り上げる繁盛ぶりだ。

参加施設は、毎回7〜10施設。どこにどの施設のブースを配置すれば売り上げが上がるのかといった計画は、販売会では非常に重要である。国体などの大きなイベントになると、企画力の差が大きく売り上げを左右することになるはずだ。福井県セルプが担っているのは、単なる事務窓口ではなく、販売会のコントロール役なのだ。

こうしたイベント運営のノウハウが蓄積された結果、最近ではセルプ商談会も開催できるようになった。「業務を外注したい」「人手不足を確保したい」「新商品を見つけたい」という企業・事業者を会場に招き、参加施設が各ブースで自分たちの魅力をPRするのである。「自分たちの施設の魅力は何か?」ということを会員施設が考えるとてもいい経験になっていると、永田弘幸センター長(42歳)はその効果を語っている。

  • 2018年セルプ商談会のちらし
  • 県庁などでの定期販売会の様子

(写真提供:社会福祉法人福井県セルプ)

企業・店舗と障がい者施設をマッチングさせようという企画「セルプ商談会」は、商工会議所、地銀、人材確保センター、事業継承センターとも連携し、昨年度8月に初めて福井県産業会館で開催した。初回ということもあり、商談会で実際に取引が成立した事例は数件に留まったが、会場には多くの企業関係者が集まり、今後の大きな可能性が期待されている。

この他にも、障がいのある人に介護資格を取得してもらい、高齢者施設への就職を斡旋する橋渡しをする「介護事業研修」、福井県農福連携事業「ててファームプロジェクト」等々、福井県セルプが受託している事業の種類は数多い。単に施設製品を販売する窓口としての機能ではなく、「地域の企業、介護事業、農業と福祉をつなぐパイプ役になりたい」という方針が少しずつ地元で根付き、さまざまな部署から声がかかるようになったのである。

利用者ニーズに特化したセルプうらら

2013年からはさらに、就労支援事業所セルプうららを独自に運営することになった。その理由を、永田さんは次のように説明する。

「振興センターが施設運営に直接乗り出すというのは、たしかに珍しいかもしれません。でも、これまで共同受注窓口の仕事を続ける上での課題を解決するためには、不可欠の取り組みだったのです」

永田さんたちの悩みとは、振興センターに共通のものであった。せっかく企業から仕事を発注してもらっても、担当施設を探すのに時間がかかったり、納期が厳しく無理強いできないケースが多いのだ。「それならいっそのこと、自分たちで施設を運営してみよう」と思ったのもうなずける。

「自分たちが受注して作業を進め、ある程度流れができてしまえば、他の施設に仕事を受け渡すのも比較的容易です。作業を担当できる施設が複数できることにもつながります。つまり、スムーズな受注モデルを早く確立したかったのです」と、永田さん。

もちろん福井県セルプは会員施設が集まって運営する組織であるため、施設運営には細心の注意をはかる必要もあった。そのため、利用者の受け入れは基本的に他の施設では受け入れにくい人たちを対象としている。

「セルプうららで働いている利用者は、特別支援学校から卒業して通所してくるケースは少ないです。一度企業に就職して戻ってこられる方や、長い間自宅で引きこもっていた方がほとんどを占めています。なかには50年間ずっと引きこもっていた方もいるくらいです。これまで社会とは隔絶されていたような人たちを、少しでも受け入れられる施設にしようと考えました」

「作業の多くは、箱折りや製品セットなどの受託作業です。単価は低く、多く稼げる仕事とは言いがたいかもしれません。しかし、誰かに必要とされているという経験こそが、彼らにとっては社会復帰の第一歩なのです。実際、週に1回の出勤が条件となっている人でも、『納期が迫って、みんな困ってる。なんとか手伝ってくれんか?』と声をかけていくと、『しゃーないな』と言って出勤日数を増やす人たちも出てきました」

仕事は、みんなをつなげる共通言語になっている気がします。どんな薬よりも仕事が効果的な人もいて、ここで働くことで状態がどんどん良くなった人もいます。もちろんトラブルはありますけど、それもまた社会に出て働くという経験でしょう。社会に出る前にいかに小さな失敗を繰り返してもらえるか。いかにその失敗に対して時間をかけて乗り越えていくのか、そのためのチャレンジの場所としての機能が、施設には求められているのではないでしょうか」

  • 箱折りをする利用者さん
  • 箱折りをする利用者さん

障がいのある人たちが当たり前のように町で働く社会を作りたい

セルプうららが行っている作業は、受託作業だけではない。前述した県内福祉施設の販売会の運営スタッフとして、会場設営や販売役を担当する仕事もある。また、企業や施設に出向いていって清掃作業をする仕事(施設外就労)や、法人が運営する喫茶店カフィリーズにおける接客仕事もある。施設内作業から一歩外に出て、社会的・経済的自立をめざす人たちをサポートするためのプログラムといっていい。

2019年から就労移行支援事業をFLAPとして独立させたのも、利用者たちの一般就労への道筋を広めることが目的なのだと永田さんは力説する。

「当施設の利用者は、集中力が高く、数字が得意な人たちも少なくありません。彼らがパソコン業務を基礎から勉強したら、一般企業などの事務職に就ける可能性も高まるのではないかと考えました」

つまりFLAPは、就職するための専門学校という位置づけだ。訓練カリキュラムはパソコン業務を中心に構成されていて、ワードやイラストレーターなどのアプリケーション操作を学び、コミュニケーション能力やビジネスマナー講座なども行っている。事務所は、福井駅から徒歩10分圏内のオフィスビル4階にある。将来的には、ここを拠点として企業からのIT業務を請け負う新事業の展開も視野に入れているという。

「共同受注窓口を担当し、さまざまな企業との接点をもっている私たちだからこそ、今はどこも人手不足に悩まされている現実を知っています。求められている人材を育成さえできれば、障がい者にも外に出て働くチャンスが開けているのです」

永田さんがめざしているのは、町の中で普通に障がいのある人たちが働く社会づくりだ。そのためには地域の企業にとって、彼らがいかに「労働力として可能性に満ちているか」を示していく必要がある。そのためにも福井県セルプでは、「共同受注」「施設販売会」「セルプ商談会」「各種研修」「障害者就労支援施設の運営」...等々、さまざまな事業を展開しながら、可能性を模索していく。

  • スタッフ画像
  • 会議・研修風景

(写真・文/戸原一男)

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。