社会福祉法人コスモス福祉会(愛知県一宮市)

徹底した合理化・機械化でリサイクル事業を成功に導いてきた「コスモス」

コスモス福祉会の概要

コスモス福祉会は、コスモス(就労継続支援B型事業、生活介護事業)、かすみ草(生活介護事業)、パレット(生活介護事業)、あおぞら(就労継続支援B型事業、生活介護事業)、だいち(生活介護事業)、つぐみ(就労継続支援B型事業、生活介護事業)、一宮市立はぎわら生活介護センター(生活介護事業:一宮市指定管理)等の障がい福祉サービス事業所を運営する社会福祉法人である。

この他にも、あすか(施設入所支援事業、生活介護事業、短期入所事業)、こだち、ひだまり、ほづみの家、あかみの家、第2あかみの家、第3あかみの家(共同生活援助事業/グループホーム)、サンライズ(福祉ホーム)、ぷらす(居宅介護支援事業)、あすか(一宮市障害者相談支援センター)、一宮市萩原老人福祉センター(一宮市指定管理)等、さまざまな事業によって障がいのある人たちの就労とくらしをサポートしている。

活動の原点は、バザー・廃品回収・募金活動等で得た資金によって1984年に立ち上がった「一宮明日香共同作業所」である。法人設立は、5年後の1989年であり、翌1990年に初めての就労施設としてコスモス(身体障害者授産施設:当時)が開所された。

当初からリサイクルを基本とした事業展開を進めており、現在も電線(銅)のリサイクル、空き缶・空き瓶リサイクル、リサイクル軍手製造、ペットボトルリサイクル、発泡スチロールリサイクル、資源回収拠点の運営(一宮市からの管理委託)等の各種リサイクル事業を行っている。

  • コスモスの施設外観▲コスモスの施設外観
  • あおぞら施設の自動車リサイクル事業(あおぞら自転車)▲あおぞらでも自動車リサイクル事業を大規模に展開する。敷地内に廃棄自転車を積み上げた姿は壮観であり、地域名物にもなっている。

電線班、リサイクル班、軍手班の活動

それでは、順番に具体的な内容について見ていこう。まず1つ目が、電線班(銅のリサイクル)だ。主に電気工事店から回収してきた廃電線を選別し、まわりのビニールを剥がしていく。取り出された銅線は電線等の材料として再利用できるため、専門業者に時価で引き取ってもらう。太い電線は利用者が1本ずつ手で割いていくが、細い電線は機械で粉砕して自動的にビニールと銅線を選別できるようになっている。

この他、電線班には給湯器の解体という作業もある。ガス工事店に集められた修理不能な給湯器を素材レベルまで細かく解体し、それぞれをステンレス・鉄・銅...といった金属の種類ごとに分けて出荷していく。

リサイクル班の仕事は、コスモスの原点とも言える「空き缶・空き瓶・ペットボトルの回収と選別」だ。飲料メーカーの営業所に集積された大量の空き缶等を大型トラックで集荷してきた後、施設内で選別、プレス機で圧縮し、資源業者に納入する。施設開所以来、リサイクルに関する環境行政はめまぐるしく変化してきたが、産業廃棄物の収集運搬業・中間処理業の許可も正式に取得し、適切な処理を心がけてきた。

もう一つの仕事が、軍手班である。といっても一般的な軍手ではなく、地元の繊維工場で廃棄される残糸から生まれたリサイクル商品だ。さまざまな色の糸が混在しているのだが、それゆえに価格も1ダース200円程度とリーズナブルに提供できる。市場に出回っている格安軍手(1ダース240〜280円程度)にも価格面で十分対抗できるため、1ヶ月で800〜1,000ダースもの引き合いがあるという。

  • コスモス電線班解体作業
  • コスモス軍手班軍手製造

「昔は軍手を作っている障害者施設が全国にも多かったのですが、外国産が出回ってからは、撤退したところが多いようです。この仕事が残っているのは、原材料費(糸代)がかからないのが最大の理由です。いらないものを無料で分けてもらって、それをお金に換えることを突き詰める。軍手という自主製品にも、創設時からこだわってきた私たちの事業理念が表れていると思います」と、渡辺光彦施設長は語る。

PETボトルや発泡スチロールのリサイクル

さらに大きなリサイクル事業として、千秋センター班とPSセンター班がある。2つの作業所はコスモスの施設本体とは離れた場所に独立しており、千秋センター班がPETボトル、PSセンター班が発泡スチロールのリサイクル中間処理を行っているのである。

PETボトルのリサイクル加工は、技術的にはとてもハードルが高いと言われている。これまではせっかく回収・圧縮粉砕した素材も、有効に再活用されてきたとは言い難かった。一部のアパレルメーカーが、リサイクル繊維として若干活用する程度である。しかも加工された衣服は使用後再活用できずに廃棄されてしまうわけだから、リサイクルと呼ぶには無理があった。しかし、近年開発された新技術「ボトルtoボトル」によって、ペットボトルリサイクルは大いに注目されるようになったのだ。

「大手飲料メーカーが本格的にこの技術を採用するようになった2021年から、ペットボトルリサイクルは大きく変わりました。コスモスでも取引企業と契約を交わし、安定して素材を出荷できるようになったのです。価格もビックリするくらいに変わりましたね。引き取り価格は約10倍になり、一気に利益率が上がりました。もう一つ大きいのは、利用者さんのモチベーションアップでしょう。自分たちが回収したペットボトルが生まれ変わり、新しいボトルとして販売されている姿を町で見ることができるので、リサイクルという仕事の流れが体感できるのです」と、渡辺施設長は嬉しそうだ。

PSセンター班で加工する発泡スチロールは、主にスーパー等が流通時に使う発泡容器だったり、店頭回収される食品トレー等である。市内12店舗と契約してトラックで定期回収し、色の選別をした後、粉砕後に加熱してブロック状やペレット状にして専門業者に引き渡す。石油製品のため、発泡スチロールの価格もまた上下の幅が著しい。幸いなことに、現在(2022年7月)は高額での取引が続いている。

  • PSセンターハッポー溶解作業
  • 千秋センター班ペットボトル選別作業

時代の波に呑まれずに事業を継続させる方法

コスモスでは創設時から、リサイクル活動にこだわって事業を進めてきた。この理由について、渡辺施設長は次のように説明する。

「昔(無認可作業所時代)は、私たちもいろいろな商売にチャレンジしたことがあります。材料を仕入れて商品を売ろうとすると、その過程で無駄が出ることが多かったのです。リサイクルというのはその点、利益率は低いかもしれないけど、安定した収益が見込めます。合理的に大量に処理することに特化すれば、事業として十分成り立つわけです」

今でこそSDGsという理念が一般的にも広まってきて、リサイクル事業は注目産業になりつつある。しかしコスモス福祉会では40年も前からこの地道な作業に取り組み、ずっと高い月額平均工賃を維持してきたのだ。

昨今はコロナ禍、円高、ウクライナ情勢という3つの特異な状況もあり、空き缶・銅線・給湯器等の金属部品、発泡スチロールのペレット等の引き取り価格は上昇の一途を辿っている。前述したとおり、ペットボトル素材もリサイクル技術の進化によって引く手あまたの状況だ。しかし渡辺施設長は、この状況がいつまでも続くとは思えないと警戒心を忘れない。

「私たちは過去に何度も引き取り価格の低下には、悩まされてきました。だいたい10年おきの周期で価格は上がるのですが、数年すると必ず暴落するのです。むしろ厳しいときの方が長いのが、この業界のスタンダードかもしれません」

だからこそ景気がいいときに最新設備を積極的に導入し、価格が落ちても採算が取れるように準備することが大切なのだという。さらに2014年から法人内の10カ所の建物の屋根に、総額約7,000万円の費用をかけてソーラーパネルを設置し、売電事業を始めている。電気価格も情勢によって大きく変動するのだが、電気不足の今は非常に高く売れる時期である。年間で約900万円を超える実利益が生まれるため、法人の大きな収入源となっている。

苦しいときにはしっかりと地に根を張り、好調なときには将来に備えた思い切った投資を行っていく──これが、40名もの利用者たち全員(B型・生活介護の合計)に50,000円を超える月額平均工賃(2021年実績)を実現するコスモスの事業経営の基本となる考えである。この哲学を守り続けている限り、決して時代の波に呑まれることなく、これからも着実に成長を続けていくことだろう。

コスモス集合写真

(写真提供:コスモス福祉会、文:戸原一男/Kプランニング

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。