社会福祉法人京都梅花園(京都府城陽市)

新体系移行を機に、まったく新しい施設に生まれ変わった「あんびしゃ」

京都梅花園の概要

京都梅花園は、多機能型障害者支援施設あんびしゃ(就労移行支援事業・就労継続支援B型事業・就労継続支援A型事業・自立訓練事業・施設入所支援事業・共同生活援助事業・短期生活援助事業・特定相談支援事業)を運営する社会福祉法人である。

法人の設立は1967年と、古い歴史を誇る。オフセット印刷・製袋・リネン・パン製造(現在は廃止)等のさまざまな事業に取り組むことによって「高い工賃」をめざす重度障害者授産施設(入所、通所合わせて定員130名)として知られていた。

しかし措置から支援費、支援費(授産制度)から自立支援へと社会福祉制度が目まぐるしく変わる中で、中心となっていた入所施設としての京都梅花園の運営形態も大きな変貌を余儀なくされる。そのため創設時から掲げていた「住まいと仕事の提供」という理念も、「社会人養成の場」へと方針転換していったのである。

現在では、就職や地域移行に向けた「訓練の場」であるとともに、長期でも短期でも利用できる「住まいの提供」を行うという、利用者の個別ニーズに合った対応をめざした新しい入所施設の在り方を模索している。

京都梅花園 ファッサード(写真提供:社会福祉法人京都梅花園)

新しい施設運営で、利用者・職員ともに大幅に入れ替わる

あんびしゃが現在のような施設スタイルに転換したのは、2006年からのことであると理事長の平田達弥さん(49歳)は説明する。

「当時は障がい者の地域移行が大きく叫ばれ、入所施設そのものの存在も危うくなるような風潮でした。このままでは法人そのものの事業運営が成り立たなくなるという危機感をもち、施設スタイルを根本から変える必要があると考えました」

これまでは「高い工賃」を謳う入所授産が中心だったが、新体系に移行するに当たって、運営方針を一新したのである。作業内容そのものにも、大胆なメスを入れていった。採算がとりにくい箱折りなどの簡易作業、職員が中心となって利用者の働く場が確保しにくかったパン事業(ピーク時には、6,000万円以上の売上があった)をすべて廃止。これまで通り高工賃を求める利用者には就労移行支援に力を注ぎ、他施設や一般企業へと転籍してもらった。

こうして利用者数は大幅に減り、職員たちも全体の8割が入れ替わっていく。2013年に施設全体を建て替えて新たなスタートを切った新生あんびしゃは、以前とはまったく異なった施設に生まれ変わっている。入所施設の定員も、80名から40名へとスリム化した。

  • 製袋(ポリ袋製造)作業
  • リネン(洗濯物のたたみ等)作業

印刷・ポリ袋・リネンが現在の作業主体

あんびしゃの現在の作業主体は、オフセット印刷・製袋(ポリ袋製造)・リネン(洗濯物のたたみ等)である。印刷で4,600万円、製袋で1,800万円、リネンで1,100万円、合計7,600万円を売り上げ、月額平均工賃も30,000円を超えるまでに回復している。

「事業スタイルをまったく変えた当時は、平均工賃が10,000円以下に下がってしまったこともありました。10年以上かかりましたが、みんなの頑張りによって、やっと以前の数値にまで戻ってきた感じです」と、平田理事長。

もちろん、すべての作業部門において悩みが尽きることはない。印刷事業は請負コストが年々下がり続けて利益が出にくくなっているし、リネンは顧客との契約上、日曜日以外(盆・正月・GWも含め)はすべて出勤しなくてはならない。頼りの綱のポリ袋製造も、納期に間に合わせるためには休日出勤・深夜残業もいとわない担当者の情熱によって、かろうじて支えられているのが実情だ。どれも決して楽な事業展開ではないが、新生あんびしゃの施設づくりに尽力してきた成果が着実に現れているのだと、平田理事長は言う。

「印刷事業では、新しい設備を導入することによって製本作業が自動化され、ベテラン職員でなくても作業できるため、人件費や外注費が大幅に削減されています。ポリ袋製造でも、機械が順調に動いていれば、利用者たちだけで作業は進みます。現在もっとも多く利用者が働いているリネン部門での職員たちの役割は、作業進行管理と最終チェックだけ。作業能力のある人は各部門にA型利用者として配属され、最賃以上の工賃を稼いでいます」

このように新生あんびしゃが求めているのは、障がいのある方が中心となって働く職場づくりである。さらに自立した社会人をめざすため、作業支援と併せて生活支援、就労支援もトータルで行っていく。利用者一人ずつ異なっている希望や将来像をイメージし、ニーズに合わせた計画をオーダーメイドで作成する。以前とは違う細やかな運営方針が、いたるところに現れている。

  • 機械化により、ポリ袋製造をより効率的に行う
  • 新設備を導入し製本を自動化した、印刷事業

入所施設の特性を活かし、新しい利用者ニーズを模索

最後にあんびしゃの今後の展望について、平田理事長に伺ってみた。

「法定雇用率達成のために一般企業も障害者雇用に力を入れ始めています。特別支援学校から施設入所をめざす方というのは、今後ますます減っていくことでしょう。そういう点から考えると、新しい利用者ニーズを掘り起こしていく必要があると痛切に感じています」

具体的には、一般就労したもののさまざまな事情によってやめざるを得なくなったUターン組等の障がい者である。社会経験があり、仕事の厳しさを知った彼らは、あんびしゃで働いている利用者たちへの大きな刺激にもなる貴重な人材だ。職場のリーダー役としても大きな可能性があり、積極的に受け入れていきたいのだという。

もう一つ検討しているのが、知的障害を伴った被虐待者の入所施設への受け入れである。児童養護施設から18歳で退所を余儀なくされた若者たちの住まいと働く場の確保は、大きな福祉課題ともなっている。

「既存の枠にこだわらず、その時代の福祉ニーズに沿った利用者受け入れを考えていくことは、入所施設のこれからの役割なのかもしれません。私たちは他分野の福祉関係団体とも連携して、あらゆる可能性を探っていきたいと考えています」と、平田理事長は抱負を語る。

社会福祉制度の変革に合わせ、まったく新しい施設へとダイナミックな体制変換を遂げた京都梅花園あんびしゃ。40名定員の入所施設という現在の資産を活かし、今後どんな福祉サービスが展開できるのか。その行方を大いに期待したいと思う。

(文・写真/戸原一男)

  • 時代の福祉ニーズに沿った利用者受け入れを考える
  • 平田理事長、職員さんたち

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。