社会福祉法人信貴福祉会(大阪府八尾市)

給食サービスで50,000円を超える高工賃を実現する「つくしんぼ作業所」

信貴福祉会の概要

信貴福祉会は、ひばり作業所(就労継続支援B型事業・生活介護事業)、わくわくセンターひばり(生活介護事業)、りんごの木(就労継続支援B型事業)、つくしんぼ作業所(就労継続支援B型事業)等の障がい者就労支援事業を運営する社会福祉法人である。

この他、めろでぃ(短期入所事業)、すきっぷ(放課後等デイサービス)、グループホーム支援センター、ヘルパーステーションメロディ等の居宅系事業や、あっぷる(生活支援センター)、八尾・柏原障害者就業・生活支援センター等の相談事業も運営している。

法人の中でもっとも歴史ある事業所は、1979年に開設したひばり作業所(当時は、ひばり授産所)である。この施設は、支援学校卒業後の施設利用者が仕事を通じて社会とつながっていくことが主たる活動目的だった。後に法人がグループホームなどを整備していくと、彼らの経済的自立が次なる課題となっていく。そこで2005年に、高い工賃をめざすことをモットーとして新たに立ち上げたのが、つくしんぼ作業所(当時は、知的障害者通所授産施設)だった。

社会福祉法人信貴福祉会(本部)のファッサード

法人内施設の給食づくりが、メインの作業

作業として選定されたのは、法人内各施設の給食づくりの受託だった。その理由について、川畑浩正所長(55歳)は次のように説明する。

「どんな仕事をしたら、利用者が1人で生活できるだけのお金を稼ぐことができるのか? 設立時には、いろんな意見がありました。ひばり作業所の工賃は1万円に満たない数字でしたから、これまでとは発想をまったく変えなければいけません。みんなで話し合った結果、商品をつくって売るよりも、内部の給食サービスを受託するのがもっとも安定的な仕事だということになったのです。ちょうど社会福祉制度の変わり目でもあり、施設の給食は外部委託が可能になったのも幸いでした」

つくしんぼ作業所では現在、ひばり作業所(90食)、ワクワクセンターひばり(50食)、つくしんぼ作業所(80食)、児童発達支援センター八尾しょうとく園(100食)の4か所で、約320食の給食を作っている。

法人内給食受託をメインにしながらも、一般企業や団体を対象とした仕出し弁当の製造販売にも意欲的だ。家庭と同じ食材や地元野菜をふんだんに使った手づくりの味はとても好評であり、交流会や会議などの昼食弁当として高い人気を誇っている。クリスマスや忘年会シーズン時にはパーティー用オードブルの注文にも応じる。行楽シーズンには土日に注文が殺到するが、利用者も含めた全スタッフが休日返上で対応するのだという。

厨房作業以外にも、つくしんぼ作業所では清掃作業や農作業を行っている。とくに清掃作業は、法人内の3施設から受託するという給食サービスとまったく同じ事業スタイルだ。7名の利用者たちが分担して各施設に出向き、朝9時から15時まで念入りに建物内部を隅から隅まで綺麗に磨き上げる。そのためどの事業所も、清潔さがつねに保たれている。

清掃スタッフはみな、つくしんぼのイラストと「CLEAN STAFF」をプリントしたユニフォームに身を包み、誇りをもって清掃活動に取り組んでいるのである。

  • 清掃作業は、法人内の3施設から受託する事業スタイル
  • 清掃作業をする利用者さん

事業改革により、厨房班の利益率が大幅に改善

現在のつくしんぼ作業所の月額平均工賃は、約50,000円だという(2018年実績)。施設開設時の20,000円から着実に上昇してきたのだが、川畑さんが2017年から所長として赴任後に取り組んだ事業改革により、さらに数字が伸びている。具体的には、どんな内容なのだろうか?

「外部にモノを売るのが中心の事業体系ではないので、私が取り組んだのはあくまで意識改革の部分でしかありません。資材や材料のコストダウンを徹底したり、無駄な動きを省力化したり......。職員には原価意識を徹底してもらい、年間計画を練ってもらうように指導していきました。私はずっと就業・生活支援センターの担当をしていたので、企業から学んだことが大きいと思います。たとえ施設といえども、仕事への意識をもっと高めてほしいと思ったのです」

給食で使う食材も、できる限り自分たちで栽培してみようと川畑さんが提案した。1,500㎡ほどの広大な畑を地主さんから無償で借りていたにもかかわらず、これまではほとんど活用していなかった。しかしせっかくこれだけの畑があるのなら、本格的に取り組めば相当の収穫が見込めるはず。そう考えた川畑さんは自ら先頭に立って開墾し、ジャガイモ、サツマイモ、人参、玉葱、大根、キュウリ、インゲン、プチトマト等を植えていった。結果として、年間で約15万円(市場価格)の食材費を削減することに成功している。

  • つくしんぼ作業所では関連施設の給食(約320食)を請け負っています。
  • 調理支度をする利用者さん

「材料費の削減ももちろん大きいのですが、調理スタッフの食材への意識が変わったことも大きい成果かもしれません。仲間たちが一生懸命育てた野菜ですから、1つひとつが大切に思えます。昔だったら捨ててしまっていたような小さないびつな野菜でも、みんなは丁寧に取り扱っていくのです」と、副主任の早川麻衣さん(29歳)は笑う。

大量に人手が必要ないも掘りなどは、施設スタッフが総出で行っているという。この時ばかりは、厨房班も清掃班も、利用者も職員も一緒に汗をかいて畑仕事である。こうして自分たちの手で野菜を育てるという川畑さんの小さな改革は、施設参加者全員の「仕事への一体感」というコストダウン以上のメリットを生み出したのだった。

モノではなく、システムを売る事業をめざす

最後につくしんぼ作業所の今後の事業のあり方について、川畑さんは次のように語ってくれた。

「私たちがこだわっているのは、モノを作って売るのではなく、給食づくりというサービスを提供すること。これまで複数施設の厨房にスタッフを派遣し、現地で給食をつくってきました。このノウハウをシステムとして法人外にも売り込めないか、というのが今後の目標ですね」

その成果は、すでに現れている。2019年4月から、近隣にある児童発達支援センター・八尾しょうとく園の給食づくりを新たに委託されたのだ。子どもたちの給食づくりという非常にデリケートな業務だが、アレルギー対応食への対応など、社会福祉法人ならではのきめ細やかなサービスがとても好評を得ているという。

「他からもいくつか打診はあったのですが、現場が近いというのがしょうとく園さんの仕事をお引き受けした最大の理由です。ウチの給食システムは、現段階ではその場でほぼ加工調理する手法。クックチル・クックフリーズシステムを導入しながら一歩ずつ事業を拡大できればいいと考えています」

  • 左は、早川麻衣主任、右は川畑浩正所長
  • 毎日の給食の他、一般の方への仕出し弁当やオードブルなども請け負っています

そう謙遜する川畑さんだが、この給食事業の新規受託によって平均月額工賃の大幅な増加も期待されている。2018年度で50,000円という実績が、さらに20%程度アップとなる見込み。B型事業所としては全国でもトップクラスの数値といっていいだろう。もちろんそこには生活支援も含め、利用者を支える職員の役割が大きい。決して無理をせず、着実に歩みを進めてきたつくしんぼ作業所の給食受託事業。高工賃を実現するための1つの手法として、その考え方は注目に値するはずだ。

(写真・文/戸原一男)

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。