社会福祉法人さつき福祉会(大阪府吹田市)

ディーセント・ワークの実現をめざす「就労支援センターみち」

さつき福祉会の概要

さつき福祉会は、さつき障害者事業所(就労継続支援B型事業・生活介護事業)、第二さつき障害者事業所(就労継続支援B型事業・生活介護事業)、ワークセンターくすの木(就労継続支援B型事業・生活介護事業)、就労支援センターみち(就労移行支援事業、就労継続支援B型事業・就労定着支援事業)、集いの場ふりーばーど(生活介護事業)等の障がい者支援事業を展開する社会福祉法人である。

その他、障害児・者地域生活支援センターめい、地域生活支援センターあおぞら、放課後等デイサービスあおぞらクラブ、ヘルパーステーションマヨ、くらしの支援センターみんなのき、17カ所のグループホーム、吹田市障害者支援交流センターあいほうぷ吹田(吹田市からの事業委託)なども運営する。

数多くの事業を展開するさつき福祉会の中でも、もっとも「働くこと」に特化した事業所が、就労支援センターみちである。その目的はディーセント・ワーク(価値ある労働・誇りある労働)の実現にあり、経済的にも自立可能な所得保障、「働くこと」を通じた生活の質QOLの向上をめざす。

事業所は、就労支援センターみち(就労チーム:就労移行支援)、グーチョキパン屋さん(B型事業所)、宅配給食センターことぶき(従たるB型事業所)の3つで構成された多機能型事業所となっている。ここでは、B型事業所である2つの事業所について紹介してみたい。

就労支援センターみち スタッフ一同写真

毎日、約230食を作り続ける宅配給食センターことぶき

宅配給食センターことぶきでは、吹田市から高齢者(障害者)宅配給食サービス事業を委託されており、市内の高齢者世帯への日々のお弁当配達と安否確認が活動の基本となっている。近藤正樹施設長(53歳)は、事業内容を次のように説明する。

「高齢者宅に毎日配達するお弁当が、約50食。この他にも法人内グループホームへの夕食が約80食。法人内別事業所の昼食が約100食。およそこんな内訳で、毎日約230人分の食事を作っています。基本的に休みはなく(年361日開所)、土日祝日も職員・利用者含めてシフト制で出勤しています。昼と夜の献立も違いますから、厨房はいつもフル回転ですね」

これらに加えて、イベント等の臨時注文も積極的に受注する。市民運動会や敬老会のお弁当など、150食ほどの依頼が来ることもあるそうだ。注文が重なると、厨房は早いときは朝3時から仕込みがスタートする。近藤施設長も現場に借り出され、利用者たちと一緒に必死に弁当作りを行っている。

利用者たちの仕事は、得意な分野で力を発揮してもらうのが基本的な考えだ。調理補助(食材の切り込み、洗浄)、洗い場(食洗機を使った作業)、洗米・炊飯、配達、朝食食材の買い出し、盛り付け、清掃、パソコン実務(メニュー表・請求書・配食一覧等の作成)など、さまざまな業務分担がある。取材当日は、ちょうど足りなくなった食材を近くのスーパーまで一人で買い出しに出かけた利用者が戻って来たところだった。

  • 高齢者(障害者)宅配給食サービス事業
  • 厨房は早いときは朝3時から仕込みがスタート

「夢添加」 がウリのグーチョキパン屋さん

グーチョキパン屋さんは、吹田駅近くの新旭町通り商店街の中に軒を構えている。安心・安全なパンをお届けするのが開店以来のモットーであり、天然酵母と国産小麦を使い、前日仕込んだパン種を一晩発酵させて焼く「夢添加」がウリの本格的な手作りパンだ。

「シャッターが閉まった店舗が多くなってしまったとはいえ、駅前裏通りにあるメイン商店街の一角ですから、市民にはお馴染みの好立地です。知る人ぞ知る店として、パン好きの人からは一目置かれています」と、近藤施設長。

パン製造技術の高さは、第4回ユニバーサルベーキングカップ(現・チャレンジドカップ)銀賞、平成21年度大阪府授産製品コンペティション審査委員特別賞(さつま芋ブレッド)などの実績が証明している。

「グーチョキパン屋さん」という店名は、アニメ「魔女の宅急便」で主人公のキキが修行していた店名から採ったのだそうだ。もちろん出版社を通じて、原作者からの許諾を得ている。障がいのある人たちが、パンづくりを通じて地域の人たちと触れ合っていきたい。そんな夢をみごとに表現したネーミングといえる。

グーチョキパン屋さんの売り上げは、年間約1,600万円。店舗販売の他にも、地域企業や学校などへの移動販売、自然食品を扱っているスーパーなどへの受注販売等を行っている。ここでも利用者たちの仕事分担の基本は、それぞれが得意なことを分担し合うこと。手先が器用な人はパンづくりに関わり、人と話すのが好きな人は販売係を担当する。計算が得意な人は計算係だし、大きな声を出すだけの呼び込み専門係もいる。できることは利用者にまかせ、それによって芽生える責任感を大切にしているのである。

  • グーチョキパン屋さんで調理に勤しむ利用者さん
  • 手作り、こだわりの夢添加パン

利用者の個性を活かした職場づくりをめざす

就労支援センターみちの2つのB型事業所の最大の特色は、その給与(工賃)体系にあるかもしれない。宅配給食センターことぶきは、50,000円+α(初年度は30,000円)。グーチョキパン屋さんは、30,000円+αとなっているのだ。

「私たちの事業所では、基本給が決められています。それが、50,000円、30,000円という数字。これにそれぞれ通勤手当、各種手当(残業、休日出勤手当)などが加算されていきます」と、近藤施設長は給与体系を解説する。

驚くべきは、利用者にも有給休暇が年間20日付与されていることだろう。「働くこと」に特化し、ディーセント・ワークをめざすからこそ社会の一般的な労働条件を用意する。そんな考えを貫いているのだ。こうした環境整備も、利用者たちの働くモチベーションを高めることになっている。

そしてもう一つ、事業所がめざしているのは地域との一体化である。就労支援センターみちでは宅配給食サービスの事業を通じて高齢者世帯とつながるし、グーチョキパン屋さんでは商店街組合にも加盟してイベントには必ず出店する。

「数年前からは、地域の小学校の特別授業で出張パン教室を開催するようになりました。利用者たちも、講師として毎回参加します。教室を開催するようになってからは、登下校中の子どもと利用者たちのトラブルが減りました。それどころか、授業を受けた子どもが親と一緒にパンを買いに来てくれることも増えています」と、近藤施設長は嬉しそうだ。

こうした地道な取り組みこそが、近隣住民に対する就労支援センターみちの事業への理解を深め、利用者たちが生活しやすい環境づくりを生み出していくのだろう。「働く」ことを通じて、さらに生活の質の向上をめざし、さつき福祉会の活動は続いていく。

  • 「夢添加」がウリのグーチョキパン屋さん
  • 天然酵母と国産小麦、その他の材料も、オーガニック食材などを使い、安全・安心を心掛けながらのパン作り

(文・写真/戸原一男)

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。