社会福祉法人福成会(兵庫県尼崎市)

一般就労に向けたサポートに力を入れて活動する「チャレンジ・コヤリバ」

福成会の概要

福成会は、清流園(生活介護事業)、塚口福成園(就労継続支援B型事業、生活介護事業)、杭瀬福成園(生活介護事業)、あいあい(生活介護事業)、チャレンジ・コヤリバ(就労移行支援事業、就労継続支援B型事業、自立訓練事業、就労定着支援事業)、サポートセンターまつば(生活介護事業)等の障がい者支援事業所を運営する社会福祉法人である。

この他にも、尼崎市障害者就労・生活支援センターみのり等の受託事業や、セントラル(12カ所のグループホーム)、ショートステイぷちるぽ等も運営する。

福成会の中にあってチャレンジ・コヤリバは、もっとも就労に特化した事業所だ。しかもその方針は、「一般就労」できる利用者を一人でも多く育てること。利用者の障がいや、その人に合った働き方を考慮しながらも、就労移行支援事業、就労継続支援B型事業、自立訓練事業、就労定着支援事業の4つの機能を組み合わせ、一般企業に就職・定着できるようなサポートを精力的におこなっている。

社会福祉法人福成会のファッサード

就労に向けて実施される独自のサポートプログラム

チャレンジ・コヤリバの就労移行支援事業の特色は、明確に設定された作業プログラムにある。原則2年間という制限の中で、就職までのステップを5段階(① 慣らし期間、② 事業所内訓練、③ 企業体験実習、④ 就職活動、⑤ 入社待ち)に分けている。

初めの慣らし期間では、「事業所へ決められた日時に通う」「生活リズムを身に付ける」「働く体力を身に付ける」といった、働くための基礎を学ぶ。そして次に、事業所の軽作業体験(菓子箱の組立、工業用品の個包装等)へと進み、働きながらコミュニケーション能力を身に付けていく。

2つがクリアできると、事業所から外に出た体験実習が待っている。実習は近隣にある県営住宅等の清掃作業から始まり、自信を持った上で企業体験へとステップを踏む段取りになっている。

「事業所内では作業訓練の合間に、利用者を集めて徹底的にSST(ソーシャルスキル・トレーニング)を実施しています。働く上で大切なのは、自分の得意分野、不得意分野に目を向けること。ロールプレイングを通じて、実際に職場に出たときに発生するトラブルを体験してもらい、その解決法をみんなで考えるといったトレーニングを繰り返し行っています」と、筒井清文主任(サービス管理責任者)

ここで重要視しているのは、仲間の話を否定しないことだ。利用者の失敗談にみんなの意見を募る時も、「悪かったこと」を指摘するのではなくて、「こうしたら良かったね」という前向きなアドバイスを送るように職員たちは議論を導いていく。訓練の成果はてきめんである。慣れない事務室に入ると緊張で挨拶も出来なくなってしまう人たちの行動が、着実に進化を遂げていく。もちろん人によって成長のスピードはまちまちだが、半年から1年で事業所内訓練を終えて、企業体験へと進むことになる。

  • SSTプログラム定期的に開催されるSSTプログラム
  • アンガーコントロールについてアンガーコントロール研修で感情制御法を学ぶ

(写真提供:社会福祉法人福成会)

本人の気持ちを重視するから、定着率は高い

企業体験先は、「兵庫県しごと体験事業」に登録してある数十社の協力企業の中から選んでいく。本人の適性を確かめる目的もあり、できるかぎり多様な職種を体験することが大切なのだ。これまでチャレンジ・コヤリバでは、清掃、調理補助、事務補助、介護補助、品出し・商品管理、菓子製造補助、緑化清掃等々、さまざまな職種への企業就労をサポートしてきた。そのため体験実習に協力してくれる企業も多いのだという。柏原敏昭所長は、次のように語っている。

「就職先を決めていく時に、一番大切なのは本人の希望です。得意なことと希望する職種が合えばベストなのですが、希望と自分の特性が合わないケースも多いのです。でもここでまわりが無理に方向性を決めてしまうと、仕事は長く続きません。本人がきちんと納得し、『ここで働きたい!』という思いになるまで 何回も体験と面談を重ねるようにしています」

こうした結果、チャレンジ・コヤリバの利用者の就労定着率(過去3年間)は、半年以上1年未満が100%。2年以上も83.3%という高い数値を誇っている。チャレンジ・コヤリバから就職してきた人たちは、「人の目を見て、しっかり挨拶できる貴重な存在。他の社員の見本にもなっている」と高く評価してくれる企業もあるのだという。

「職場に溶け込むまで少し時間はかかりましたが、今では大きな戦力となって洋菓子製造補助の仕事をこなしている男性もいます。彼は仕事が休みの日には自分がつくった洋菓子を手土産にして、事業所の箱折り作業をボランティアで手伝いに来てくれます。事業所に入った頃からは見違えるほどの成長を目の当たりにすると、本当に嬉しくなってしまいますね」と、柏原所長は笑う。

  • 左:筒井清文主任、右: 柏原敏昭所長
  • 兵庫県しごと体験事業に勤しむ利用者さん

ゆっくりとした働き方を求める人のためのB型事業

チャレンジ・コヤリバでは、就労継続支援B型事業にも取り組んでいる。作業内容としては、菓子箱の組立や工業用品の個包装等の軽作業、訪問看護事業所での清掃作業などだ。特色は、「就労をめざすB型事業」である点だろう。15名の定員のうち、およそ1/3が一般就労希望者という位置づけだ。その中には2年間の就労移行支援事業では就労に至らず、引き続き訓練を続けている人もいるが、一般企業へと巣立っていく同僚たちの姿に憧れ、就労希望になった人もいる。柏原所長は、チャレンジ・コヤリバにおけるB型事業所のあり方を次のように説明する。

「毎日働くのが難しい人が、スロースタートとしてB型事業所を利用してもらい、体力ができたら就労移行に切り替えてもらう。もちろんB型のまま、自分に合った就職先を探していってもいい。そんなケースを私たちは想定し、この事業に取り組んでいます。最近はこういった福祉就労を希望する方が増えてきているので、ニーズに応えるためにもB型事業の拡充が今後の課題だと思います」

B型事業の現在の月額平均工賃は、27,317円だ。しかしこれを例えば50,000円以上に引き上げるという発想が、柏原所長にはない。それだけの事業を展開する労力を職員に課すくらいなら、「同額以上の給料で働ける一般企業を見つける方がたやすい」という信念があるためだ。少なくとも尼崎市内においては、それだけ作業能力のある障がい者なら、いくらでも就職先を見つける自信があると柏原所長は断言する。「社会にとってもそれが自然なことだし、利用者の利益にもなると私は思うのです」

チャレンジ・コヤリバでは2〜3ヶ月ごとに、企業への就職を決めた利用者を送り出す卒業式が行われる。ここでは使っているサービスの種類を問わず、事業所利用者全員の前で柏原所長から「表彰状」が授与されるのだ。そんな先輩たちの姿を見て、「次は自分」だと影響されないはずがない。だからこそ、利用者たちは次々と定期的に事業所から旅立っていく。これからも彼らの夢が1つずつ叶うためのサポートを、チャレンジ・コヤリバでは着実におこなっていくことだろう。

(文・写真:戸原一男/Kプランニング

  • 県営住宅自転車置き場の清掃風景県営住宅自転車置き場の清掃風景
  • 県営住宅玄関前の清掃風景県営住宅玄関前の清掃風景

(写真提供:社会福祉法人福成会)

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。