社会福祉法人大和会(奈良県山辺郡山添村)

新たな発想で、今後に向けた事業展開を模索する「大和高原太陽の家」

大和会の概要

大和会は、大和高原太陽の家(生活介護事業・施設入所支援事業・短期入所事業)、セルプたいよう(就労移行支援事業・就労継続支援B型事業)、Café SUN WOOD(セルプたいよう就労継続支援B型事業分場)、グループホーム風の森、相談支援事業所たいよう、なら東和障害者就業・生活支援センターたいよう等の障害者支援事業を展開する社会福祉法人である。

この他にも高齢者総合福祉施設・都礽すずらん苑(特別養護老人ホーム・短期入所生活介護事業・老人デイサービスセンター・居宅介護支援事業・ケアハウス・配食サービス)等も運営している。

法人の設立は1982年にまで遡る。奈良県唯一の重度身体障害者入所施設(当時)として、大自然が広がる大和高原の山腹に建設されたのだ。その後2004年に知的障害者通所授産施設セルプたいようを立ち上げ、さまざまな障がいのある人たちのニーズに応えられる体制が整った。新体系移行後は、大和高原太陽の家、セルプたいようという事業所の枠にとらわれることなく、一体となった事業展開を進めている(以下、「大和高原太陽の家」と統一表記)

  • 社会福祉法人大和会 ファッサード
  • 橋脚の振動吸収板等の製造風景

上水配管用バルブゴム・橋脚の振動吸収板等の製造

大和高原太陽の家の中心となる事業は、上水配管用バルブゴム・橋脚の振動吸収板・ケーブルガイドの製造といった重工業作業である。工業用プレス機を使い、各種ゴム製品を加工しているのだ。大久保浩施設長は、作業内容について次のように説明する。

「施設の開所当時はなかなか良い仕事に巡り会えず、苦戦していました。そんな時、隣のゴルフ場を利用している企業の社長から、耳寄りな話を頂いたのです。それがこの、上水配管用バルブゴム・橋脚の振動吸収板・ケーブルガイド等の製造作業。神戸の永田町にある靴工場に設置されていた中古のゴムプレス機を譲り受けることができ、設備投資は非常に少なくてすみました。小さな橋に設置する耐震用振動吸収板や、さまざまな仕様に合わせて製造する必要がある上水配管用バルブゴムに対応する企業はとても少ないので、ニッチな仕事として私たちの施設に向いていました」

さらに1995年に阪神淡路大震災が発生すると、ライフラインを復旧するための上水配管用バルブゴム等の仕事が大量に舞い込んできた。どちらかというと地味な仕事としてスタートしたこの重工業作業が、大和高原太陽の家を代表するメイン事業に成長していったのだ。1年間の作業収入はピーク時で3,000万円以上に達し、社会福祉法人としては奈良県内で2番目の消費税課税事業者として名を連ねるほどになった。

「復興が進むと、多くの仕事が中国へと移管されていきましたから、残念ながら当時の勢いは少しずつなくなってしまいました。しかし今でも、重工業作業は事業所総売上の多くを占めていることには変わりありません。非常に特殊な仕事で、なかなか他の施設では取り組んでいない分野だと思います」と、大久保施設長。

  • 上水配管用バルブゴム・橋脚の振動吸収板・ケーブルガイド等の製造作業
  • 上水配管用バルブ

地域貢献としての「Café SUN WOOD」運営

この他の作業として、軽作業(工業用ホッチキスの箱詰め、棚受け部品の箱詰め、プラスチック製品の組立)や、製品販売(お茶、パン・ケーキ、ジャム、かきもち)などがある。さらに2015年からは、近隣の通り沿いに「Café SUN WOOD」をオープンした。事業所内で焼いている手づくりパンを、地域の人たちにもっと気軽に食べてもらうことをねらった飲食店である。位置づけとしてはB型事業所(セルプたいよう)の分場であり、収益よりも地域貢献としての意味合いが強いのだと大久保施設長は説明する。

「見てお分かりの通り、この辺りは山だらけで通りにコンビニもありません。地域の人たちが気軽に通って来られるスペースを作ることは、社会貢献活動として非常に重要だと私たちは考えました。美味しいと評判の焼きたてパンを、もっと多くの人たちに食べてもらいたかったという思いもあります。おかげさまでオープン以来、大好評です。やっと地域に憩いの場所ができたと、高齢者だけでなく、若い主婦たちもぞくぞく集まって来ています。土日も営業していますから(月曜日定休)、ランチタイムは満席になるほどですよ」

飲食店紹介サイトに紹介されたこともあって、今では地域住民以外に大阪や名古屋からもドライブがてら立ち寄る若いお客さんが増えたのだという。非常に有難い話ではあるのだが、新型コロナウイルス感染が拡大するにつれて3密を避けるために営業自粛を余儀なくされた時期もあった(2020年5月)。取材時はすでに再開していたものの、感染拡大には最大限に気を使いながらの営業が続いている。ランチタイムに提供される名物のサンドイッチは、ボリュームたっぷりである。すべての具材が手の込んだ手づくりであり、これを求めて毎日のように訪れる常連客が多数いるというのもうなずける。

  • Café SUN WOOD 外観
  • ランチタイム、ボリュームたっぷりの名物サンドイッチ

将来に向けて、新たな発想の転換を

大和高原太陽の家がもう一つ力を入れているのが、創作活動である。生産作業になかなか従事しにくい利用者を対象として、習字・絵画・音楽活動などを、一人ひとりの希望や能力に応じて進めてきた。山浦庸平指導員が中心となった音楽活動グループ「わのわ」では、クワイヤーチャイム(ハンドベル)という楽器を使った心安まる演奏(ヒーリング・ミュージック)で「がんばろう日本!」として震災復興を応援。施設内で録音した音源をCDに焼き、300枚以上の売上を残している。

また、井上真介さんや古谷秀男さんという利用者アーチストを有する絵画部門も、独自の展開を進めている。井上さんの貼り絵原画は市内のビジネスホテルとレンタル契約を結び、古谷さんの作品はエイブルアートを通じて東京の大手企業の広報誌などに有料で使われているのだ。大久保施設長は、このように新しい発想で新たな事業展開を作り出すことの必要性を強く訴えている。

「私たちの施設は、山の中にあります。重度身体障害者入所施設としてスタートした昔と違い、今では立地条件が最悪と言えるでしょう。こんな辺鄙な場所まで利用者に通ってもらうためには、町中よりも高い工賃を支給できることが重要になると思うのです。現在は二つの施設をトータルすると月額平均が15,000円程度ですが、これがたとえば30,000円以上になってきたら、とても魅力ある施設になるはずです。そのためにもこれからは、発想の転換が求められていると思います」

現在構想中なのは、クリーニング事業だという。近々、法人では特別養護老人ホームを増設する計画が進んでいる。そうすると、大和高原太陽の家の入所事業と二つの高齢者施設を運営することになり、法人内だけでも相当のクリーニング需要が生まれてくる。これをB型事業所の作業科目とすることで、高工賃の実現と一般就労へのチャレンジ機能をもたせることが可能になるはずなのだ。

コロナ禍の中、なかなか製品販売や生産活動などの事業が進まない中でも、少しでも利用者工賃の向上をめざしたい。大和高原太陽の家では、そのための秘策を着々と進めているところである。

  • 左から、大久保浩施設長、山浦庸平指導員
  • 習字・絵画・音楽活動なども利用者の能力に応じて支援

(文・写真:戸原一男/Kプランニング

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。