社会福祉法人ひかり福祉会(滋賀県長浜市)

お弁当の配食事業で地域との共存をめざす「友愛ハウス」

ひかり福祉会の概要

ひかり福祉会は、ひかり園(就労継続支援B型事業・生活介護事業)、輝湖里(生活介護事業)、ひので作業所(生活介護事業)、友愛ハウス(就労継続支援B型事業)、ワークセンター絆(就労継続支援B型事業)、セルプひこね(生活介護事業)、たんぽぽ作業所(生活介護事業)、工房ふれっしゅ(就労継続支援B型事業)、彦華堂(就労継続支援B型事業)、HEART WORK結(就労継続支援B型事業)等の障がい者就労支援事業を運営する社会福祉法人である。

この他にもヘルプもあ(居宅介護支援事業等)、障害者支援センターそら(相談支援事業:長浜市)、働き暮らしコトー支援センター(障害者就業・生活支援センター等)、相談支援センターあおい(相談支援事業:彦根市)等の各種事業を展開する。

活動の始まりは、1975年のひかり園共同作業所(無認可作業所:湖北圏域)からだった。翌年には社会福祉法人ひかり福祉会が立ち上がって、認可施設となり、その後活動は湖東圏域にまで広がっていく。当時は湖北圏域に障がい者の就労支援施設が皆無だったこともあり、ひので共同作業所(現・ひので作業所)、ひかり園作業所(現・ひかり園)、第二ひかり園作業所(現・輝湖里)と、次々に新しい施設が開所していったのである。

「友愛ハウス」もその流れの中で1994年に始まった精神障がい者の無認可作業所だった(前身は、長浜障害者労働自立センター)。2001年には精神障害者通所授産施設となり、2007年の新体系移行の際に、就労継続支援B型事業として新たなスタートを切った。ワークセンター絆も同じ建物内に同居しており、事実上は一体化された運営が行われている(作業科目は、お弁当の製造販売と企業からの各種下請け作業、青果市場での施設外就労、等)。

  • ひかり福祉会 事業所外観
  • 野菜の袋入れ作業

地域の人たちに宅配するお弁当

友愛ハウスの主力事業は、お弁当の製造・販売である。栄養バランスに配慮した日替わり弁当を毎日200食以上製造し、地域の人たちに宅配しているのだ。その特色について、藤野信敏センター長は次のように説明する。

「私たちのお弁当は、地元で収穫された野菜や吟味された食材を使った手づくりの味が特徴です。できあいの冷凍惣菜などはできるだけ使わず、ひとつひとつ手づくりにこだわっているので、毎日食べても食べ飽きないと好評です」

注文は、2週間分のメニュー表を見たお客さんからFAX等で事前に送られてくる。たとえばある日のメニューは、「ハンバーグ、天ぷら(竹輪・れんこん)、刻み野菜としめじの煎り煮、丁字麩の辛子和え」であったり、「鰆の煮付け、ホイコーロー、カリフラワーとコーンのサラダ、ミートボールの甘酢あん」という具合である。こうしたメニューを確認しながら、お客さんは注文したい日付けに「○」を付けていく。

お弁当の値段は、おかずが450円でライスが50円(別売)。ライスとおかずがセットになったミニ弁当450円もある。この他にも、会議やお祭りなどの会合用に、季節に応じた食材を使った特注弁当も請け負っている。リーズナブルな価格でありながら、手間暇かけたお弁当なので、毎日注文してくれるお客さんも数多いのだ。

「安心・安全なお弁当をお届けしたいという思いで、みんなで毎日心を込めて作っています。たとえば葉物野菜なら、1枚ずつていねいに洗い、泥や虫が付いていないか確認するほどの徹底ぶりです」

こうした地味な作業の積み重ねによって、友愛ハウスのお弁当は着実に地域住民たちから支持され、根強いファンを獲得してきたのだろう。

  • お弁当の製造・販売
  • 野菜の下準備作業

配食を通じて、地域住民との交流が広がっていく

配達先は、近隣企業、学校、介護施設、市役所等に加えて、ひとり暮らしの高齢者個人宅も30軒ほどあるという。1日に4便に分けて配送車が市内各所を回っていく。朝10時には出発し、12時までにはすべての配送が終了するスケジュールである。

「配送車の1台には、交代で利用者さんも1名同乗してもらっています。お客さんに直接お弁当を届けるのは、利用者さんたちにとってもやり甲斐のある仕事。順番が回ってくるのを、みなさん楽しみにしているようです」と、藤野センター長は笑う。

配送先には、利用者たちが卒業した特別支援学校もある。お世話になった先生たちに頑張って働く姿を見てもらえる絶好の機会であり、会話も大いに盛り上がる。利用者たちのうれしそうな姿をみて微笑ましい反面、同じところにあまり長く留まることは許されない。次の配達先に急いで向かわなければならないからだ。同行する職員たちは、いつもハラハラしながら適当なところで話を切り上げてもらっているのだという。

ひとり暮らしの高齢者の場合、デイサービス等に通う日以外は毎日注文してくれる人がほとんどだ。そのため、もし雪などの天候不順で配達できなかったりすると非常に迷惑をかけてしまう。昨年(2021年)末には10数年に一度といわれた大雪で、やむを得ずお弁当の配送を2日間止めてしまったことがあった。さすがにこの時ばかりはどうしようもなかったのだが、普段はライフラインの1つとしての意識を高く持ち、可能な限り配達をストップさせない努力を続けているのだと、藤野センター長は言う。

「配食サービスを通じて、たくさんの地域の人たちと直接交流をもてることに私たちは誇りをもっています。リーズナブルな価格で、安心・安全・美味しいお弁当をこれからも提供していきたいですね」

  • お弁当の盛り合わせ作業1
  • お弁当の盛り合わせ作業2

仕事にゆとりをもたせて、利用者の作業能力がアップ

2020年10月から、友愛ハウスではお弁当の配達地域を縮小するという思い切った改革を断行している。以前は1時間以上かけて彦根市にまで配達していたのだが、長浜市内に限定したのだ。これによって約100食分の売上減となったが、総合的にはむしろプラス面が多かったそうだ。配達地区が遠いと、施設に戻ってくる時間もその分遅くなる。回収した弁当箱を洗う作業もせかされ、スタッフたちのストレスもたまる一方だった。しかし配達範囲を狭めることで、調理室のムードが一変した。

「職員に余裕が生まれたことで、利用者さんと丁寧に向き合えるようになりました。野菜の切り方をマンツーマンで教えたりできますから、利用者さんの作業能力は以前よりも向上しています。余分な経費の見直しを行った結果、利用者工賃への影響もありませんでした。むしろ今後に向けて、新しい可能性を見いだせた気がします」と、藤野センター長。思い切ったこの決断は、各事業所ごとの方針を決めていく法人全体の会議の中で行われたのだという。

ひかり福祉会では、2025年に向けて「ひかり福祉会2025」というプロジェクトも進行中である。彦根市では資源サイクルを担うエコステーション建設構想や、新しい彦根の名物スイーツ「ひこしゅ~」を生み出すプロジェクトが始まっているし、長浜市ではテイクアウト食堂「motteini」の設立が検討されている。現在、友愛ハウスの3Fにある障害者支援センターそらを新たな拠点に、みんなが気軽に集まれるサロンのようなテイクアウト食堂を併設しよう...という計画だ。

友愛ハウスの調理現場にゆとりをもたせたからこそ、こうした将来構想が活きてくる。地元で暮らしにくい人たちの食生活を、障がいのある人たちが中心になって作るお弁当で支えていく──そんな新しい活動にも取り組むことができるわけだ。このように「やりがい活動と、工賃再追求」という究極のテーマをめざし、ひかり福祉会の各事業所では新たな可能性をめざした活動が次々に進んでいる。

  • お弁当の製造・販売
  • 調理後の後片付け

(写真提供:社会福祉法人ひかり福祉会、文:戸原一男/Kプランニング

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。