社会福祉法人幸福会(大分県大分市)

清掃のプロフェッショナルとして確固たる地位を築いてきた「ソレイユ」

幸福会の概要

幸福会は、やまびこ広場(就労継続支援B型事業、生活介護事業)、ソレイユ(就労継続支援A型事業、就労継続支援B型事業)等の障がい者就労支援事業を経営する社会福祉法人である。この他にも、やまびこフレンド(生活介護事業)、ラ・ソーレ(グループホーム・短期入所)、指定相談支援事業やまびこを運営する。

事業の始まりは、1989年に設立された知的障害者通所授産施設やまびこ広場だった。主に企業から受託する箱折りなどの下請け作業を請け負っていたのだが、1993年に市内の管理会社から3棟の賃貸アパートの清掃作業をやってみないかという打診があった。そこでやまびこ広場の授産作業として受託してみると、利用者たちの丁寧な仕事ぶりが高い評価を受け、担当物件も20棟まで増えていった。

さらに2年後にはその会社が管理している50物件の清掃を任せたいとの申し出があり、もはや授産事業のままでは対応が不可能と判断。1996年に知的障害者福祉工場ソレイユを設立することになったのだ。福祉工場の主たる作業として(就労の場が施設外になる)清掃を選ぶのは当時としては画期的であり、「『工場』なき工場」として注目された。2006年には新体系に移行して就労継続支援A型事業(以下、A型)となり、2020年からは就労継続支援B型事業(以下、B型)も始まっている。

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340棟ものアパート・マンションの日常清掃を担当!

ソレイユの主な作業は、メンテナンス(清掃)である。現在請け負っている内容は、下記の通り。

  • ○ ビルメンテナンス(アパートやマンション共有部分の一般清掃)
  • ○ 定期清掃(ワックス等)
  • ○ 特別清掃(ガラス清掃、外壁清掃)
  • ○ 公園掃除(落ち葉清掃、レンガ石張清掃)
  • ○ 外構掃除(掃き掃除、除草、植栽部分の手入れ、芝生管理、レンガ石張水洗い)
  • ○ 野球場、野外トイレ、展望台、駐車場等公共施設の掃除
  • ○ 寺・墓地・住宅等の除草作業
  • ○ 缶・ビン・ペットボトルの選別作業(落リサイクルプラザ内にて)

契約先(顧客)としては、大分県や大分市の公的施設の他にも、多くの民間企業等があり、民間管理会社からは市内340棟の集合住宅(約8,500戸)の定期清掃を委託されている。

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ソレイユの清掃事業の特色について、花宮良治理事長は次のように語っている。

「清掃事業の特色は、マンパワーを活かせるという点です。同業者と比較すると、清掃に携わる人の数が圧倒的に多いので、仕上がりが明らかに違います。仕事内容がソレイユで働く障がいのある人たちにマッチしていたことも大きいと思います。施設内で黙々と内職仕事をするよりも効率的だし、収益も高いことは明らかです。彼らが現場で清掃作業に専念できるように、独自の作業スタイルも取り入れました。持参する雑巾やモップの数を通常の倍以上に増やし、その洗濯は戻ってから施設内で行っています。ちょっとした手順の変更ですが、現場での時間ロスを防げます。こうした工夫を重ねることにより、今では一般のメンテナンス会社と変わらないサービスを提供できるようになりました」

拠点となる事務所は大分駅から車で10分程度の好立地にあるため、顧客としても仕事を依頼しやすいようだ。さらに大分県や大分市は公園や公共施設を多く抱えていることもあり、※障害者優先調達推進法が追い風となり、清掃業務が行政から次々と発注を受けた。工場の設立から26年が経過した現在では、売上高約9,000万円(A型・B型の総計)を超える大きな事業所へと成長し、月額平均工賃は、107,000円(A型)、31,300円(B型)となっている(令和2年度実績)

※障害者優先調達推進法
国や地方公共団体等が率先して障害者就労施設等からの物品等の調達を推進するよう、必要な措置を講じることを定めた法律。平成24年6月27日に公布され、平成25年4月1日から施行された。正式名称は、「国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律(障害者優先調達推進法)」。
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障がいのある人たちも、清掃機器・刈払機等を操作する

清掃は、1チーム5〜6人(職員1人、障がいのある人5〜6人)で実施されている。A型から6チーム、B型から2チームに分かれ、みんなでワゴン車に乗り込み、さまざまな契約先に出向いていくのだ。チーム編成は日によって変わるため、1つの物件をいつも同じ担当者が清掃するとは限らない。そこでソレイユでは早くから業務マニュアルを導入し、作業の標準化を図ってきた。

「業務マニュアルは清掃企業のものを参考にして、私たちなりのアレンジを加えています。すべての行程において清掃の順番や使う道具、洗剤などが細かく書き込まれているので、誰が担当しても同じ仕上がりになるように研修を徹底してきました」と、花宮理事長。

受託案件が増えるに従って、清掃現場への機械導入も積極的に進めてきた。とくに床洗浄・ワックス掛けに威力を発揮するポリッシャー、汚水を吸い取るバキューム、操作に熟練の技術が不要となる自動床洗浄機等である。このような専門的な機械を取り扱うのは職員だけでなく、障がいのある人も多数いるというのだから驚きだ。公園管理などで必要となる刈払機を操作するために、安全衛生講習を受講した人が5人もいる。

「受託案件の中には、公共施設の高層階のガラス清掃などもあります。非常に危険なので、高所作業車を使用する作業は資格を持つ職員だけが対応しますが、室内のガラス拭きは障がいのある人の仕事です。ベテランの方になると、安全帯とヘルメットを付けて高層階(3階~4階)の部屋の窓拭き(内窓、外窓)も行っています」

一般事業者と対等に競い合いながら、ソレイユの清掃事業が順調に事業を拡大してきた理由は、こうした「仕事への取り組み方」にありそうだ。福祉事業所であることに決して甘えず、顧客からの依頼にはできる限り対応できるように努力する。だからこそ、危険を伴う高度なメンテナンス作業も避けずに受注してきた。安全管理においても、徹底した対策が採られている。ヒヤリハット報告や月1回の対策会議、研修会の実施、損害賠償保険への加入等──万が一の時に備えて、事業所としての準備も怠りない。

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今後も事業を安定継続していくための課題

2020年10月からソレイユでは、これまでのA型に加えてB型事業が始まった。この理由について、花宮理事長は次のように説明する。

「おかげさまで清掃事業は、これまで右肩上がりで順調に成長してきました。コロナ禍にあっても仕事は減ることはなく、むしろ除菌・消毒という新しい仕事もいただけるようになったくらいです。しかし課題はやはり、障がいのある人たちの高齢化でしょう。いくら外で働くのが好きだといっても、年を取ってくるとだんだん身体が辛くなってきます。ある程度の年齢に達したら、その人に合った働き方を選択してもいいと思うのです。そこでソレイユでもB型を用意し、好きなときにA型から移行できるように体制を整えました」

収益率の改善も、事業としての大きな課題だという。26年の事業実績が培ってきた顧客からの信頼と清掃の技術力には、絶対の自信を持っている。今では他社とたとえ競合になったとしても、価格競争に巻き込まれないような営業スタイルへと進化してきた。しかし事業開始当初からの委託契約(自動更新)が続いている顧客の場合、なかなか値上げ提案できないのも現実なのだ。そこで同じ清掃作業を、いかに短時間でこなせるかといった対策が必要になってくる。ソレイユでは最新機器の導入や、時代に合わせたマニュアルの改訂作業を順次進めているところである。

「A型である限り、最低賃金の上昇に合わせて毎年3〜5%の収益率アップを目指して活動していく必要があります。福祉業界としては日本一の事業規模を誇る清掃事業所を目指していきたいですね」と、花宮理事長は意欲を語る。つねに前を向いて攻めていくこんなチャレンジ精神があるかぎり、ソレイユの事業はこれからも発展し続けていくに違いない。

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(写真提供:社会福祉法人幸福会、文:戸原一男/Kプランニング

*この記事にある事業所名、役職・氏名等の内容は、公開当時()のものです。予めご了承ください。